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見えない意図
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戦いと呼ぶにはそれはあまりにも一方的だった。
「……グゥウウウウウッ!!」
「……………」
大きな巨体は膝を突き、その前に立っているシアに傷は一つもない。危険度Sランクのブラッディオーガとはいえ、シアの敵ではなかったということだ。
「……凄い。こんなに強いんだ」
「ふふ、シャズ君。シアさんを他の冒険者と一緒にしてはダメですよ? 比べてるのが烏滸がましいくらい、実力に隔たりがありますので」
身内贔屓をするわけではないが、それくらいにシアの力は既存の冒険者を大きく上回っている。それこそもしも冒険者ランクにAの上があるとすれば、それは間違いなくシアの為にあると言える物だろうか。
「シアさんのスキルは剣術とかそういうのですか?」
「いや、シアのスキルはそんなものじゃない。あれは単純なシアの才能と身体能力の為せるモノだ」
「……なるほど」
スキル至上主義の連中がこれを聞いたらふざけるなと口々に言いそうだ。だが俺の言ったことは何も間違ってはいない。シアのスキルは……まあ俺が良く口にする固有能力になるのだが、それは少なくとも剣術ではない。
「シャズ。剣術とか弓術とか、或いは魔法といったスキルは確かに戦いに役立つだろうさ。けど、そのどれもが普通の人間でも努力すれば到達できる領域だ。あくまで戦闘系スキルってのは近道であって、他の人とを隔絶するほど優れたものではない」
実際に、剣術スキルを持った人間に努力した人間が勝ったケースもあるくらいだしな。ま、それを認められない連中は何かズルをしたんだと駄々を捏ねるわけだが。
「だからシャズも頑張れば剣だって使えるかもしれないし、魔法だって覚えられるかもしれない。仮にそれが実現したら、鑑定も相まって凄く便利だろ?」
「確かに……うん、確かにそうですね!」
俺は戦えるぞ、私は戦えるぞ、そういう風に力でしか物事を考えられない脳筋共より遥かに有益な存在になる。ただ冒険者で活躍していたり、国の騎士団に所属している連中の大半がそう言った脳筋なので、それもあって鑑定とかそう言ったスキルが下に見られるのもあるんだろうな。
「グアアアアアアアアアアアアッッ!!」
地を揺るがすほどの咆哮に木々が揺れる。ただの叫び声かと思いきや、空気を斬るような振動に思わず体が倒れそうになる。シャズを抱えながら何とか体勢を整え、最後の仕上げに入ろうとするシアに目を向けた。
「それにしてもなんでここにブラッディオーガが居るんだろうな」
「そうですね。こんなところに居るはずはないんですけど」
あれほど強力な存在なんだ。森に留まらず外に出てきてもおかしくはない。それこそスターリジアに襲撃を掛けてきても変ではない。だからこそ、元から居たわけではなく、最近になって現れたと考えるのが妥当だろうか。
「マスター、終わったら少し読み取りましょうか?」
「あぁ、頼む」
「読み取る?」
首を傾げるシャズに苦笑しつつ、俺は戦いの決着を見届けた。
その巨大な腕に見合う棍棒を振り回すブラッディオーガだが、片腕を吹き飛ばされた影響もあってパニックに陥っているらしい。苦しそうにもがきながらも、目の前に立つシアを殺すためだけに奴は体を動かしていた。
「何があったかは知らないけど、まあ運がなかったと諦めてね」
シアは刀を鞘に納め、そして一気に抜いた。まるで居合のような構え、シアはその場から離れていないが、変化はすぐに起きた。
動きを止めたブラッディオーガは意図してそうしたわけではない、今この瞬間絶命したのだ。シアの切っ先の軌道が体に入り込むように、一閃した場所から上と下を分けるように体がズレた。
「おしまい」
再び刀を鞘に納め、チャキンと音がしたのと同時にオーガは倒れた。分断された場所から大量の血が流れ出す光景はシャズには少し刺激が強かったらしい。口を抑えて吐き気を我慢するように蹲った。
「大丈夫か?」
「は、はい……」
「……少し刺激が強かったかな」
「そうですねぇ。幼い子供にはきついでしょうあれは」
一生もののトラウマになっても変ではないと思うが、意外とすぐにシャズは持ち直した。さてと、改めて俺はブラッディオーガの死体に近づく。
「ミネット」
「はい、お任せを」
ブラッディオーガの死体に近づき、ミネットは頭の位置に手を向けた。すると淡い光がミネットを包み込み、その瞳が金色に輝く。
「あれは何なんですか?」
「あれがミネットのスキルだ。詳細は教えられないけどな」
「なるほど……」
数秒の時間を経て、ミネットはこちらに振り返った。金色に輝いていた目も元の薄緑に戻っており、無事に情報の収集は終えたようだ。
「元々数日前まではただのオーガだったようです。しかし、何者かの手によって無理矢理に進化させられたみたいですね。その何者かの顔は見えませんでしたが、行使された魔法に記憶された魔力はウルドのモノです」
「帝国ですか!?」
「はい」
ウルド帝国、この国の隣国の一つだ。たびたび小競り合いが起きることはあるけど本格的な戦が起こったことはない。ただ、密かに軍拡しているなどといった物騒な話題も聞こえてくる場所だ。だからこそ、これも何か意味があったのかもしれない。
「マスター、一応森に侵入した時点で私たちには不可視の魔法を掛けています。なので姿は見えませんでしょうし、透視の魔法でも見えてないかと」
「そうか。何か裏があって姿が見られたとあっては色々とめんどくさいからな。ありがとうミネット」
「いえいえ、マスターの僕たるもの、いついかなる時ももしかしたらを考えるモノですよ」
となると、これを意図した存在が居るとしたら何が起きたか分からない間にブラッディオーガは片付けられたことになる……それはそれで、何か起きそうな気もするけど考えても仕方ないか。
「……なんか凄いですねみなさん」
「ふふ、シャズ君。出来たらシアさんはともかく私やマスターのことを不用意に話すのはやめてくれますか?」
「も、もちろんです!」
ミネットの黒い笑みにシャズはビビッて俺の背に隠れた。全く、気持ちは分かるし配慮は嬉しいが相手は子供だぞ? 自重しろ、そんな気持ちでミネットを見つめると気まずそうに目を逸らされた。
「……むぅ、私ってそんなに怖い笑顔をしてたんでしょうか」
「自覚がないのが一番質が悪いよね」
うん、シアの言う通りだ。
取り合えず、ブラッディオーガの出現というイレギュラーはあったが用事は済んだ。Sランクの化け物を一人で倒したとなるとそれはそれでめんどくさいことになるので、シアには森で何か変なモノを見たとだけ報告するように伝えておいた。それでこいつの死体を見つけたギルドが色々と調査してくれることだろう。
「……グゥウウウウウッ!!」
「……………」
大きな巨体は膝を突き、その前に立っているシアに傷は一つもない。危険度Sランクのブラッディオーガとはいえ、シアの敵ではなかったということだ。
「……凄い。こんなに強いんだ」
「ふふ、シャズ君。シアさんを他の冒険者と一緒にしてはダメですよ? 比べてるのが烏滸がましいくらい、実力に隔たりがありますので」
身内贔屓をするわけではないが、それくらいにシアの力は既存の冒険者を大きく上回っている。それこそもしも冒険者ランクにAの上があるとすれば、それは間違いなくシアの為にあると言える物だろうか。
「シアさんのスキルは剣術とかそういうのですか?」
「いや、シアのスキルはそんなものじゃない。あれは単純なシアの才能と身体能力の為せるモノだ」
「……なるほど」
スキル至上主義の連中がこれを聞いたらふざけるなと口々に言いそうだ。だが俺の言ったことは何も間違ってはいない。シアのスキルは……まあ俺が良く口にする固有能力になるのだが、それは少なくとも剣術ではない。
「シャズ。剣術とか弓術とか、或いは魔法といったスキルは確かに戦いに役立つだろうさ。けど、そのどれもが普通の人間でも努力すれば到達できる領域だ。あくまで戦闘系スキルってのは近道であって、他の人とを隔絶するほど優れたものではない」
実際に、剣術スキルを持った人間に努力した人間が勝ったケースもあるくらいだしな。ま、それを認められない連中は何かズルをしたんだと駄々を捏ねるわけだが。
「だからシャズも頑張れば剣だって使えるかもしれないし、魔法だって覚えられるかもしれない。仮にそれが実現したら、鑑定も相まって凄く便利だろ?」
「確かに……うん、確かにそうですね!」
俺は戦えるぞ、私は戦えるぞ、そういう風に力でしか物事を考えられない脳筋共より遥かに有益な存在になる。ただ冒険者で活躍していたり、国の騎士団に所属している連中の大半がそう言った脳筋なので、それもあって鑑定とかそう言ったスキルが下に見られるのもあるんだろうな。
「グアアアアアアアアアアアアッッ!!」
地を揺るがすほどの咆哮に木々が揺れる。ただの叫び声かと思いきや、空気を斬るような振動に思わず体が倒れそうになる。シャズを抱えながら何とか体勢を整え、最後の仕上げに入ろうとするシアに目を向けた。
「それにしてもなんでここにブラッディオーガが居るんだろうな」
「そうですね。こんなところに居るはずはないんですけど」
あれほど強力な存在なんだ。森に留まらず外に出てきてもおかしくはない。それこそスターリジアに襲撃を掛けてきても変ではない。だからこそ、元から居たわけではなく、最近になって現れたと考えるのが妥当だろうか。
「マスター、終わったら少し読み取りましょうか?」
「あぁ、頼む」
「読み取る?」
首を傾げるシャズに苦笑しつつ、俺は戦いの決着を見届けた。
その巨大な腕に見合う棍棒を振り回すブラッディオーガだが、片腕を吹き飛ばされた影響もあってパニックに陥っているらしい。苦しそうにもがきながらも、目の前に立つシアを殺すためだけに奴は体を動かしていた。
「何があったかは知らないけど、まあ運がなかったと諦めてね」
シアは刀を鞘に納め、そして一気に抜いた。まるで居合のような構え、シアはその場から離れていないが、変化はすぐに起きた。
動きを止めたブラッディオーガは意図してそうしたわけではない、今この瞬間絶命したのだ。シアの切っ先の軌道が体に入り込むように、一閃した場所から上と下を分けるように体がズレた。
「おしまい」
再び刀を鞘に納め、チャキンと音がしたのと同時にオーガは倒れた。分断された場所から大量の血が流れ出す光景はシャズには少し刺激が強かったらしい。口を抑えて吐き気を我慢するように蹲った。
「大丈夫か?」
「は、はい……」
「……少し刺激が強かったかな」
「そうですねぇ。幼い子供にはきついでしょうあれは」
一生もののトラウマになっても変ではないと思うが、意外とすぐにシャズは持ち直した。さてと、改めて俺はブラッディオーガの死体に近づく。
「ミネット」
「はい、お任せを」
ブラッディオーガの死体に近づき、ミネットは頭の位置に手を向けた。すると淡い光がミネットを包み込み、その瞳が金色に輝く。
「あれは何なんですか?」
「あれがミネットのスキルだ。詳細は教えられないけどな」
「なるほど……」
数秒の時間を経て、ミネットはこちらに振り返った。金色に輝いていた目も元の薄緑に戻っており、無事に情報の収集は終えたようだ。
「元々数日前まではただのオーガだったようです。しかし、何者かの手によって無理矢理に進化させられたみたいですね。その何者かの顔は見えませんでしたが、行使された魔法に記憶された魔力はウルドのモノです」
「帝国ですか!?」
「はい」
ウルド帝国、この国の隣国の一つだ。たびたび小競り合いが起きることはあるけど本格的な戦が起こったことはない。ただ、密かに軍拡しているなどといった物騒な話題も聞こえてくる場所だ。だからこそ、これも何か意味があったのかもしれない。
「マスター、一応森に侵入した時点で私たちには不可視の魔法を掛けています。なので姿は見えませんでしょうし、透視の魔法でも見えてないかと」
「そうか。何か裏があって姿が見られたとあっては色々とめんどくさいからな。ありがとうミネット」
「いえいえ、マスターの僕たるもの、いついかなる時ももしかしたらを考えるモノですよ」
となると、これを意図した存在が居るとしたら何が起きたか分からない間にブラッディオーガは片付けられたことになる……それはそれで、何か起きそうな気もするけど考えても仕方ないか。
「……なんか凄いですねみなさん」
「ふふ、シャズ君。出来たらシアさんはともかく私やマスターのことを不用意に話すのはやめてくれますか?」
「も、もちろんです!」
ミネットの黒い笑みにシャズはビビッて俺の背に隠れた。全く、気持ちは分かるし配慮は嬉しいが相手は子供だぞ? 自重しろ、そんな気持ちでミネットを見つめると気まずそうに目を逸らされた。
「……むぅ、私ってそんなに怖い笑顔をしてたんでしょうか」
「自覚がないのが一番質が悪いよね」
うん、シアの言う通りだ。
取り合えず、ブラッディオーガの出現というイレギュラーはあったが用事は済んだ。Sランクの化け物を一人で倒したとなるとそれはそれでめんどくさいことになるので、シアには森で何か変なモノを見たとだけ報告するように伝えておいた。それでこいつの死体を見つけたギルドが色々と調査してくれることだろう。
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