神から与えられたスキルは“ドールマスター”

みょん

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夢の中で、そして影の間へ

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「マスター、あなたの力になるなら私だけで十分です」
「いや、確かにリーシャが居てくれるだけでそりゃそうだけどさ。せっかくドールマスターなんていうスキルなんだし色々試したいだろ?」
「……その気持ちも分かりますが」

 これから二人目の人形を創造する……それに対してリーシャが少し気乗りしない様子だった。その理由が分からないほど鈍感ではないので、頬を膨らませて拗ねるリーシャの頭を優しく撫でた。

「新しい子が生まれたからってリーシャを手放すことはないし、接する時間を減らすこともないさ。遠慮なく頼るし、リーシャが甘えたくなったらいつだって甘えてくれて構わない」
「……本当ですか? ギュッてしてくれますか?」
「もちろんだ。むしろ、それくらいならいつだってドンと来い」

 二年っていうのは短いようで長い、しかも俺の時間はほとんどリーシャと共有したといっても過言ではない。だからこそ、ある種特別な想いをリーシャに抱くのも不思議ではない。

 頭を撫でられたことで満足したのか、リーシャはようやく俺から離れて見守ることにしたようだ。

「……さてと、どんな子を創ろうかな」

 見た目と性格に関してはリーシャとは違うタイプでこれ以上ない好みが出来上がっているのだが、問題はその子の能力というかスキルはどうしようか。まあスキルを考えたところでそれがそのまま形になるわけではない。

 俺はリーシャの能力面に関してはとにかく強い力という単純なものを想像した。その果てに生み出されたリーシャは確かに強い、だがスキルに関しては“力”というよりもっと複雑なモノになってしまったが……まあそういうことがあるわけだ。

「……回復スキルとか良さそうだな」

 強い武力に並ぶ回復の力、それこそ体の欠損すら瞬時に治せるような……果てには死んだ肉体すらも蘇らせるそんな力……は流石に無理か。死人を復活させるなんてのは神の領域だろう。そんなものを生み出したとあっては万が一の場合、めんどくさいことになりかねない。
 ……でも、ちょっと想像するだけならいいかもな。

「……決めた。どうか俺の呼び声に応えてくれ」

 リーシャを創造した時と同じように、体中の魔力を捻り出すようにして形を作っていく。そして俺が出来る限りの想像をその形に込めるように……丁寧に、丁寧に形作っていく。

 リーシャが見守る中、強い光を放って俺のスキルは発動した。
 長い金髪が風に揺られ、その存在は俺の前で膝を突いて首を垂れていた。

「初めまして、マスター。あなたに呼ばれたことを光栄に思うわ。さあマスター、私に名前をちょうだい?」

 真紅の瞳に見つめられ、俺は既に頭の中で考えていた名前を彼女に告げた。

「サリア、それが君の名前だ」

 そう告げると、サリアはその端正な顔を喜びで染めるように頬を緩めた。何度も何度も自分の名前を繰り返し呟くことで、己がサリアという俺に望まれた存在なのだと刻み付けるかのようだった。
 ……でも悪いなサリア、それにリーシャも。やっぱり今回も来たようだ。

「……っ」
「マスター!」
「? っ!!」

 ふらっと倒れそうになったが、目の前に居たサリアに抱き留められた。服を着ていないのでその豊満な胸元に直接顔が埋まってしまうという幸せな状況だが、意識が飛びそうなほどに眠たい。

「……二人ともごめん。ちょっと寝るわ」
「ま、マスター!? ど、どうすればいいの!?」
「とりあえず休ませましょう。たぶん二週間くらいで元気になりますから」
「……慣れてるのね。えっと?」
「リーシャです。よろしくお願いしますねサリアさん」
「分かったわ。よろしくリーシャ」
「はい。ということでマスターをこちらへ、その下品なモノに顔を乗せていると息が苦しいと思いますので」
「いきなり失礼ねあなた……ていうかあなたの方が大きいでしょ!」

 ……うるさいなぁ……でも、家族が一人増えたな。






「……?」

 ふと目が覚めた。
 辺りを見回してみると、俺は相変わらずサリアに膝枕をされたままで、そんな俺のお腹を枕にするようにシアが眠っていた。

「あら、起きた?」
「……あぁ、悪いなサリア。足とか痺れてないか?」
「全然大丈夫よ。むしろマスターに触れているのだから逆に回復してしまうわ」
「……へぇ」

 それはどういうことなんだって聞かない方が良さそうだ。
 眠り続けているシアの頭を撫でながら、懐かしい夢を見たような気がすると物思いに耽る。結局どんな夢を見たかは思い出せないが、悪い夢でなかったのは確かだと思っている。

「リーシャとミネットは?」
「あそこよ」

 サリアが指を向けた先にはボードゲームをしている二人が居た。基本的にああいったゲームはミネットの独壇場になってしまうことが多々あるが、稀にリーシャたちが勝つこともあるので中々奥が深いゲームである。

「……あ、マスター?」
「おっと、起こしたか。悪いな」
「ううん」

 目を擦りながらシアも上体を起こした。
 起き上がった俺たちに気づいたリーシャたちも手を止め、こちらに近づく。

「熟睡でしたね」
「それだけ長く馬車に揺られてましたから疲れが出たのでしょう」

 だろうな。馬車の中で少しくらい寝ようとは思ったけど、ここに来るまでの景色を楽しんでいたから結局寝ることはなかった。せっかく現地に着いてこれからって時に眠ってしまうのはちょっと勿体なかったな。

「でもあれからそんなに経ってないのか」
「えぇ、40分くらいかしら」
「そっか……よし、それじゃあ外に行くか」

 というわけで、早速外に出ることになった。簡単に店を周りながら足湯にでも行って、それからシアが興味を示した影の間に向かうことに。
 ホーローは観光地ということもあって旅行客はやはりそれなりに居た。俺はともかくとして、人間離れした美しさを持つ女の子を四人連れているとそれはそれは目を向けられる。

「お嬢さん、よかったら一緒に――」
「何か?」
「……何でもありません!」

 リーシャがどんな顔をしたのか、少し興味はあるけどドスの利いた声からある程度は察せてしまう。まあシャズのような子供には優しい反面、俺以外の男となると途端に態度が変わるからなぁ……特に下心を明確に感じ取ると今みたいになってしまう。

 それから俺たちは足湯の出来る場所に着き、五人仲良く並んで堪能していた。

「不思議ですね。ただこうしているだけなのに落ち着きます」

 足湯はもちろん初めてだけど、なんで足を湯に浸けているだけなのにこんなに気持ちいいんだろうか。普通にずっとこうして居られるんだが、とはいえ俺たち五人が一斉に使っていると後ろの人に順番が回らないのですぐに出ることになった。

「また個人的に来るのも良さそうですね」
「そうね。また明日来ようかしら」

 どうやら気に入ったようで、その笑顔を見れただけでもこの旅行を言い出した甲斐があるというものだ。
 足湯を堪能し、みんなで軽く店を周りながら俺たちは影の間へと向かう。
 その人物と全く同じ影が生まれるということだが、果たしてどんな風になるのかシアほどではないが俺も楽しみにしていた。
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