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8話
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「さあ、これが今日の報酬だよ~」
おじさんはテーブルの上にたくさんの銀貨を乗せてくれた。
「ひょえ!? おじさん! お、多過ぎませんか?」
僕の日給って銀貨十枚という破格な待遇なはずなのに、それよりも多い銀貨は数えなくても十枚は超えているのがわかる。大体三十枚くらいかな?
「ハウくんのお仕事は風で植物達を揺らすこと~今日は綿毛を集める別の仕事もしてくれたからね~ボーナスだよ~」
「あ、あの! 僕、そんな難しいことをしたわけじゃないんです! こんなにたくさんいただけません!」
「ほっほっほっ~ハウくん~以前食べたスパゲッティを覚えているかい~?」
「はい! すごく美味しかったので!」
「あのときも言ったけど~一皿で銀貨五枚なのは~タンポポの綿毛をここから回収できないからなんだよ~」
「回収……できない?」
「本来なら綿毛は風に乗って新しい土地で育つんだけど~ここの綿毛は空を飛べないからね~それに綿毛は小さすぎて回収が難しく~タンポポを踏みつける可能性もあるのだよ~」
「そうだったんですね……」
「この前~綿毛がたくさん入ったカバンは~私が遠方から買って来たモノなんだ~だから安く提供できないんだ~でもハウくんがこうして綿毛を集めてくれたら~タンポポの綿毛を買うお金が浮くのだよ~銀貨二十枚なんて安いくらいだよ~それにまた花畑に散布してもらうから育てやすくなったんだよ~こちらこそありがとう」
「それにしたって報酬が高すぎます! もっと安くて大丈夫ですよ?」
すると、ジェネシスさんが話し始めた。
「ハウくん。君がやってることは、君にしかできないことなんだ。どれだけ強い魔法使いでもハウくんのように風魔法をこれほど精密に操作することはできない。強い弱いではない。君だからこそできることなんだ。自分の価値を再認識した方がいい。君にはそれだけ価値があるんだ。だから報酬はしっかり受け取った方がいい。自分を安く売るのはよくない」
「ジェネシスさん……」
「うむうむ~ジェネシスくんの言う通りだよ~ハウくんは本当にすごいんだよ~」
「皆さん……ありがとう……ございますっ!」
誰かに僕の力が必要だと言われたことがなかったから、今はそれがとにかく嬉しくて、これからも頑張ろうと思う。
テーブルの上に置かれた無数の銀貨を手に取って、大事に袋に詰め込んだ。
ずっしりとした袋が、銅貨ではなく銀貨なのがどうにもソワソワしてしまう。
「すぐに冒険者ギルドに向かって入金しておかないと、少し不安になっちゃいます」
「あはは~それがいいね~」
冒険者になると発行してもらえるプレートがあって、これは魔法で作られたプレートに僕の血を刻んだもので、僕だけのプレートだ。
お金を入れておくことで、お店でプレートで支払うところもあるので、多額のお金を持ち歩かなくても便利だ。
対応していない店もあるので、そういう店には貨幣を持って行かなくちゃ行けないから、ある程度持って歩くことも考えておいた方が良かったりする。
「では今日は俺が冒険者ギルドまで同行しよう」
「ありがとうございます!」
ジェネシスさんってとても強いので、一緒にいるだけでとても心強い。
イマイルおじさんに挨拶をして、僕とリーゼはジェネシスさんと一緒に冒険者ギルドに向かい、銀貨を大半入金して、宿屋の支払い分だけを持ってリーゼと宿屋に戻った。
◆
「「ごめんなさいっ!」」
僕とリーゼは一緒におじさんとおばさんに頭を下げた。
「……リーゼちゃん。貴方がやったことは褒められたことではないよ?」
「はい」
「でも私利私欲じゃなくて、ハウくんのために使ったからこれ以上は怒りません。でも、今後もしっかり治癒魔法が使えることは隠すように」
「「はい」」
「はあ……それもそうだし、まさかハウくんにそんなことが起きるなんて……」
ちゃんとあったこと全てをおばさんにも報告して、こうしてリーゼと一緒に謝ったところだ。
「ハウくん」
「はい?」
「……イマイル様とはどう?」
「イマイルおじさんですか? とても優しくて、僕の力を必要としてくださって、とても嬉しいです! 給金もたくさんくださるんですけど、それよりも植物達をとても愛しているのがよくわかって、とても優しい方だと思います」
「そう……」
不思議なことに大きな溜息を吐いたおばさんは、「それはそうと……」とまた話題を変えた。
「これからは出掛けることなく毎日過ごすってことでいいのね?」
「は、はい! またお世話になります」
「……ハウくん」
「はい?」
「私は、ううん、私達夫婦は、ハウくんを可哀想だから同情のために後見人になろうと考えたわけではないわ。今まで見てきたハウくんとご両親のこともあったから後見人になった。だからね?」
おばさんは僕の近付いて、目に大きな涙を浮かべて、僕を抱きしめてくれた。
「ここはハウくんのお家だと思って欲しいの。私とあの人を両親と思って欲しい……のは私のわがままだけれど……ハウくんがやりたいことがあると思って、ずっと荷物持ちの仕事を応援してたけど、できればもう少し大人になるまで、安全なところで過ごして欲しかった……でも私がハウくんを強制させてしまっては、ハウくんが辛いだけだと思ったから……ね? これからはあまり無茶なことはしないでね?」
「オリアナさん……はい……」
僕を抱きしめてくれたオリアナさんの温もりと、リアタさんの温かな眼差しが伝わってきた。
おじさんはテーブルの上にたくさんの銀貨を乗せてくれた。
「ひょえ!? おじさん! お、多過ぎませんか?」
僕の日給って銀貨十枚という破格な待遇なはずなのに、それよりも多い銀貨は数えなくても十枚は超えているのがわかる。大体三十枚くらいかな?
「ハウくんのお仕事は風で植物達を揺らすこと~今日は綿毛を集める別の仕事もしてくれたからね~ボーナスだよ~」
「あ、あの! 僕、そんな難しいことをしたわけじゃないんです! こんなにたくさんいただけません!」
「ほっほっほっ~ハウくん~以前食べたスパゲッティを覚えているかい~?」
「はい! すごく美味しかったので!」
「あのときも言ったけど~一皿で銀貨五枚なのは~タンポポの綿毛をここから回収できないからなんだよ~」
「回収……できない?」
「本来なら綿毛は風に乗って新しい土地で育つんだけど~ここの綿毛は空を飛べないからね~それに綿毛は小さすぎて回収が難しく~タンポポを踏みつける可能性もあるのだよ~」
「そうだったんですね……」
「この前~綿毛がたくさん入ったカバンは~私が遠方から買って来たモノなんだ~だから安く提供できないんだ~でもハウくんがこうして綿毛を集めてくれたら~タンポポの綿毛を買うお金が浮くのだよ~銀貨二十枚なんて安いくらいだよ~それにまた花畑に散布してもらうから育てやすくなったんだよ~こちらこそありがとう」
「それにしたって報酬が高すぎます! もっと安くて大丈夫ですよ?」
すると、ジェネシスさんが話し始めた。
「ハウくん。君がやってることは、君にしかできないことなんだ。どれだけ強い魔法使いでもハウくんのように風魔法をこれほど精密に操作することはできない。強い弱いではない。君だからこそできることなんだ。自分の価値を再認識した方がいい。君にはそれだけ価値があるんだ。だから報酬はしっかり受け取った方がいい。自分を安く売るのはよくない」
「ジェネシスさん……」
「うむうむ~ジェネシスくんの言う通りだよ~ハウくんは本当にすごいんだよ~」
「皆さん……ありがとう……ございますっ!」
誰かに僕の力が必要だと言われたことがなかったから、今はそれがとにかく嬉しくて、これからも頑張ろうと思う。
テーブルの上に置かれた無数の銀貨を手に取って、大事に袋に詰め込んだ。
ずっしりとした袋が、銅貨ではなく銀貨なのがどうにもソワソワしてしまう。
「すぐに冒険者ギルドに向かって入金しておかないと、少し不安になっちゃいます」
「あはは~それがいいね~」
冒険者になると発行してもらえるプレートがあって、これは魔法で作られたプレートに僕の血を刻んだもので、僕だけのプレートだ。
お金を入れておくことで、お店でプレートで支払うところもあるので、多額のお金を持ち歩かなくても便利だ。
対応していない店もあるので、そういう店には貨幣を持って行かなくちゃ行けないから、ある程度持って歩くことも考えておいた方が良かったりする。
「では今日は俺が冒険者ギルドまで同行しよう」
「ありがとうございます!」
ジェネシスさんってとても強いので、一緒にいるだけでとても心強い。
イマイルおじさんに挨拶をして、僕とリーゼはジェネシスさんと一緒に冒険者ギルドに向かい、銀貨を大半入金して、宿屋の支払い分だけを持ってリーゼと宿屋に戻った。
◆
「「ごめんなさいっ!」」
僕とリーゼは一緒におじさんとおばさんに頭を下げた。
「……リーゼちゃん。貴方がやったことは褒められたことではないよ?」
「はい」
「でも私利私欲じゃなくて、ハウくんのために使ったからこれ以上は怒りません。でも、今後もしっかり治癒魔法が使えることは隠すように」
「「はい」」
「はあ……それもそうだし、まさかハウくんにそんなことが起きるなんて……」
ちゃんとあったこと全てをおばさんにも報告して、こうしてリーゼと一緒に謝ったところだ。
「ハウくん」
「はい?」
「……イマイル様とはどう?」
「イマイルおじさんですか? とても優しくて、僕の力を必要としてくださって、とても嬉しいです! 給金もたくさんくださるんですけど、それよりも植物達をとても愛しているのがよくわかって、とても優しい方だと思います」
「そう……」
不思議なことに大きな溜息を吐いたおばさんは、「それはそうと……」とまた話題を変えた。
「これからは出掛けることなく毎日過ごすってことでいいのね?」
「は、はい! またお世話になります」
「……ハウくん」
「はい?」
「私は、ううん、私達夫婦は、ハウくんを可哀想だから同情のために後見人になろうと考えたわけではないわ。今まで見てきたハウくんとご両親のこともあったから後見人になった。だからね?」
おばさんは僕の近付いて、目に大きな涙を浮かべて、僕を抱きしめてくれた。
「ここはハウくんのお家だと思って欲しいの。私とあの人を両親と思って欲しい……のは私のわがままだけれど……ハウくんがやりたいことがあると思って、ずっと荷物持ちの仕事を応援してたけど、できればもう少し大人になるまで、安全なところで過ごして欲しかった……でも私がハウくんを強制させてしまっては、ハウくんが辛いだけだと思ったから……ね? これからはあまり無茶なことはしないでね?」
「オリアナさん……はい……」
僕を抱きしめてくれたオリアナさんの温もりと、リアタさんの温かな眼差しが伝わってきた。
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