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7階層の谷底で行われている、召喚冒険者同士の戦闘。
「甘い!」
背後からの藤代の水魔法を振り返る事なく斬撃で霧散させ、継続して椎名に襲い掛かる吉川。
「舐めているよね?」
対して椎名は自分の持つ能力が癒しと防御と知られている事を逆手に取り、収納袋から5階層で入手していた魔法のスクロールを連続して大量に消費する。
まさかの攻撃魔法行使に体勢が崩れた所、背後からの椎名の攻撃によって重傷を負う藤代。
こうなると残された笹岡は二対一になってしまい、レベルが若干上であったとしても成す術なく敗北する。
「は~、ほんとあんた達なんなのさ。あのダンジョンの時から急におかしくなったよね?」
「彩ぴょんの言う通り!ってさ、私達も場数を踏んだからどうしてかわかるんだよね。あの時の<淫魔族>に虜にされたんでしょ?だらしがない男らしいよね?でも、相手が私達で良かったね?あの三原だったら確実に死んでいたよ?よっし~、ささっち、わかってる?」
死にはしないが重傷の二人は、その痛みからか椎名に言われた通り虜にされてしまった現実を認識して目覚めてる。
「す、すまない。藤代殿、椎名殿。自分、確かに指摘の通り<淫魔族>に手玉に取られていたらしい」
「くそっ、俺もだ」
二人の様子を見て今の状態ならば確実な鑑定ができると判断した椎名と藤代は、その結果異常状態はなくなっていると判断して回復薬を二人に渡す。
その後は四人で互いに知り得ている情報を開示して情報共有をしつつ、女性陣はその後再び休息をし、男性陣は迷惑をかけたお詫びからか、積極的に見張りを行っていた。
自らの右肘下を切断した四人に恨みを張らすべくダンジョンを進んでいる三原信子は、少し前に視認していた吉川と笹岡を見失った直後に慌てて彼らがいた場所に向かうが、同じように一瞬で景色が変わって誰もいない谷底に飛ばされた。
「はぁ~、まさか私が転移魔方陣を踏むなんて……あいつ等とは別の場所に飛ばされたみたいだ。あいつ等、私が復讐する前に死ぬなんて許さない」
復讐対象を一刻も早く探す必要があるので、レベル49の力を使って壁をスイスイ上って行く三原信子。
谷底にはあの二人の気配がない事は瞬時に理解できており、また、脅威となり得る魔物の存在も察知できない事から、一気に脱出する行動をとっている。
「壁をカサカサはい回るなんて、不快な生き物ですね」
その様子を見ているミズイチと、四人の召喚者に注視する必要はないと判断して同じように三原が映り込んでいる映像に視線を向けているハライチ。
「ではミズイチ、あの状態では魔法攻撃などは碌に発動できないでしょうから、バッドを派遣しましょう」
パッドとは、蝙蝠の魔物で超音波による音波攻撃を得意とするレベル7の召喚魔物だ。
両手両足を使って壁を上っている三原信子に対しては、大きなレベル差があれども有効な攻撃手段になるため、一気に谷底周辺にパッドを送還するハライチ。
一瞬で現れた大量のパッドの気配を感じて上昇速度を一気に上げる三原信子だが、四方八方から強烈な超音波攻撃を受けて視界も確保できずに、そのまま勢いをつけた状態で地面まで落下する。
……ドン……
「くっ、はぁ、なによ!あの量のパッドは!」
流石はレベル49の猛者であり、相当高い位置から一気に下まで落ちたのだが少々体が痛む程度で大きなダメージは受けていない。
しかし、相当数のパッドによって一気に発せられた超音波攻撃による頭痛は治っていない。
再び同じ攻撃をされてはたまらないと、一気に燃やし尽くそうと上空を見るのだが……そこにはあれほど大量にいたはずのパッドの姿はかき消えている。
これこそ湯原と水野が初期の段階で取得していた召喚魔物転移可能能力であり、4階層以下の状態で内包魔力が800必要になる能力だ。
ダンジョン内部であれば好きに魔物を召喚、送還する事ができる能力であり、このおかげでヒットアンドアウェイを完全に実施する事が出来、自陣のダメージが非常に少なくなる優れた能力だ。
「これほど早く逃げられるとは……このままでは、この壁は乗り越えられない。何とかしないと」
一人でこの谷底に留まる事になりかねないと思った三原信子は、どうすれば無事に脱出する事ができるのかを考える。
この崖を徐々に切り出して階段状にする事や、攻撃用に片手を開けた状態で上る事、色々と考えるのだが、階段状にした場合には敵に無防備な状態で攻撃される事は無いのだが、物量で押しつぶされる可能性もある上に、谷底側からも魔物が襲い掛かり、且つ上空からも襲われては全く逃げ道が無くなってしまう。
残る片手で崖を登りきる方法だが、相当高い崖の為に片手で上りきるのはレベル49の三原信子でも非常に厳しく、ましてや、いつの間にか現れて消えてしまった魔物がパッドだったから良いものの、仮に他の魔物であった場合には致命傷になりかねないので、この案も採用できなかった。
「甘い!」
背後からの藤代の水魔法を振り返る事なく斬撃で霧散させ、継続して椎名に襲い掛かる吉川。
「舐めているよね?」
対して椎名は自分の持つ能力が癒しと防御と知られている事を逆手に取り、収納袋から5階層で入手していた魔法のスクロールを連続して大量に消費する。
まさかの攻撃魔法行使に体勢が崩れた所、背後からの椎名の攻撃によって重傷を負う藤代。
こうなると残された笹岡は二対一になってしまい、レベルが若干上であったとしても成す術なく敗北する。
「は~、ほんとあんた達なんなのさ。あのダンジョンの時から急におかしくなったよね?」
「彩ぴょんの言う通り!ってさ、私達も場数を踏んだからどうしてかわかるんだよね。あの時の<淫魔族>に虜にされたんでしょ?だらしがない男らしいよね?でも、相手が私達で良かったね?あの三原だったら確実に死んでいたよ?よっし~、ささっち、わかってる?」
死にはしないが重傷の二人は、その痛みからか椎名に言われた通り虜にされてしまった現実を認識して目覚めてる。
「す、すまない。藤代殿、椎名殿。自分、確かに指摘の通り<淫魔族>に手玉に取られていたらしい」
「くそっ、俺もだ」
二人の様子を見て今の状態ならば確実な鑑定ができると判断した椎名と藤代は、その結果異常状態はなくなっていると判断して回復薬を二人に渡す。
その後は四人で互いに知り得ている情報を開示して情報共有をしつつ、女性陣はその後再び休息をし、男性陣は迷惑をかけたお詫びからか、積極的に見張りを行っていた。
自らの右肘下を切断した四人に恨みを張らすべくダンジョンを進んでいる三原信子は、少し前に視認していた吉川と笹岡を見失った直後に慌てて彼らがいた場所に向かうが、同じように一瞬で景色が変わって誰もいない谷底に飛ばされた。
「はぁ~、まさか私が転移魔方陣を踏むなんて……あいつ等とは別の場所に飛ばされたみたいだ。あいつ等、私が復讐する前に死ぬなんて許さない」
復讐対象を一刻も早く探す必要があるので、レベル49の力を使って壁をスイスイ上って行く三原信子。
谷底にはあの二人の気配がない事は瞬時に理解できており、また、脅威となり得る魔物の存在も察知できない事から、一気に脱出する行動をとっている。
「壁をカサカサはい回るなんて、不快な生き物ですね」
その様子を見ているミズイチと、四人の召喚者に注視する必要はないと判断して同じように三原が映り込んでいる映像に視線を向けているハライチ。
「ではミズイチ、あの状態では魔法攻撃などは碌に発動できないでしょうから、バッドを派遣しましょう」
パッドとは、蝙蝠の魔物で超音波による音波攻撃を得意とするレベル7の召喚魔物だ。
両手両足を使って壁を上っている三原信子に対しては、大きなレベル差があれども有効な攻撃手段になるため、一気に谷底周辺にパッドを送還するハライチ。
一瞬で現れた大量のパッドの気配を感じて上昇速度を一気に上げる三原信子だが、四方八方から強烈な超音波攻撃を受けて視界も確保できずに、そのまま勢いをつけた状態で地面まで落下する。
……ドン……
「くっ、はぁ、なによ!あの量のパッドは!」
流石はレベル49の猛者であり、相当高い位置から一気に下まで落ちたのだが少々体が痛む程度で大きなダメージは受けていない。
しかし、相当数のパッドによって一気に発せられた超音波攻撃による頭痛は治っていない。
再び同じ攻撃をされてはたまらないと、一気に燃やし尽くそうと上空を見るのだが……そこにはあれほど大量にいたはずのパッドの姿はかき消えている。
これこそ湯原と水野が初期の段階で取得していた召喚魔物転移可能能力であり、4階層以下の状態で内包魔力が800必要になる能力だ。
ダンジョン内部であれば好きに魔物を召喚、送還する事ができる能力であり、このおかげでヒットアンドアウェイを完全に実施する事が出来、自陣のダメージが非常に少なくなる優れた能力だ。
「これほど早く逃げられるとは……このままでは、この壁は乗り越えられない。何とかしないと」
一人でこの谷底に留まる事になりかねないと思った三原信子は、どうすれば無事に脱出する事ができるのかを考える。
この崖を徐々に切り出して階段状にする事や、攻撃用に片手を開けた状態で上る事、色々と考えるのだが、階段状にした場合には敵に無防備な状態で攻撃される事は無いのだが、物量で押しつぶされる可能性もある上に、谷底側からも魔物が襲い掛かり、且つ上空からも襲われては全く逃げ道が無くなってしまう。
残る片手で崖を登りきる方法だが、相当高い崖の為に片手で上りきるのはレベル49の三原信子でも非常に厳しく、ましてや、いつの間にか現れて消えてしまった魔物がパッドだったから良いものの、仮に他の魔物であった場合には致命傷になりかねないので、この案も採用できなかった。
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楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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