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ロペス(2)
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過去のロイエス一行の行いによって万が一にも母親が死亡していれば、いくら耐性が高くなったミスクとしても即座に視界の先で薄汚い恰好のまま怯えているロペスに対しても、容赦なく更なる追撃を行っていたに違いない。
「でも、怯えて暮らしていくのが罰だと思いますので、今は私から何かを伝えるつもりはありませんけれど」
これ以上今は何もしないという事を態々伝えるつもりはないミスク。
ミラバル侯爵も今の所はロペスに対して追撃を行っていないので、彼女の環境が直近で大きく変わる事は無いだろう。
もちろん体内には、いつ暴れ出すかわからない特殊なデヒルが存在したまま。
当然残りのパーティーメンバーであるロイエスとバウサーが、ロペスを助けるような事をするはずもない。
且つてはロペスと共に行動し、同時に称号を得ているロイエスとバウサー。
彼らからしてみればロペスは勝手に落ちて行った人物なので、庇護の対象にはなっていない。
ロイエスとバウサーは未だ冒険者活動を再開してはいないのだが、ロペスが有り得ない凶行に及んでミラバル侯爵の不興を買い、称号を剥奪された状態でこき使われている様をギルドまで見に来ていた。
「あれが元<闇者>ロペスのなれの果てかよ。あんだけ惨めになるとはな。無様を晒しやがって!同じ時期に称号を得たのが恥ずかしいじゃねーかよ。あいつのせいで俺達までミラバル侯爵からの信頼が揺らいでいるんだ!」
「まったくですね、ロイエス。あそこまで無様を晒すなら、さっさと自害した方が潔いと思いますが。無駄に生に執着する……冒険者としても覚悟がないと言わざるを得ないと思いますね」
<賢者>バウサーがこう突き放すが、ロペスは体内にいるデヒルによって行動に制限がかけられており、自死できない存在になっていた。
あまりの境遇に絶望して、自らの手で……と試した事はあるのだが、動けないほどの激しい痛みに襲われて断念せざるを得なかったのだ。
何故か服毒と言う行為自体も制限され、最早打つ手がない。
ロペスがそのような状態であるとは知らない二人は、好き放題に落ちたロペスをなじって満足げな顔をするとギルドを後にする。
残されたロペスはとてつもない惨めさ、悔しさに涙を流すだけで何かをする事は出来ない。
今までの行為が全て自分に返ってきただけであると気がつけるのは、何時の日になるだろうか……
今の彼女は、何とか日々生活する事で手一杯だったのだ。
「なんで私が……こんな」
ギルドで見覚えのある元パーティーメンバー二人から、かなり厳しい侮蔑の言葉を投げられたロペス。
あまりにも惨めで涙を流すが、何かができる訳でもないし何かが変わるわけでもない。
バウサーが言っていた通りにこの屈辱の時間を終わらせるために、度々自死を試そうとしていたのだが、その全てが体内に潜んでいるデヒルが引き起こした痛みによって妨害された。
絶食による餓死すらできなかったのだ。
あの痛みが続くのならば、諦めてこの運命を受け入れるしかないと言う程の苦痛を複数回経験してしまったロペスは、二度と自死はしないと固く心に誓っていた。
そうなると、難易度の高い依頼は逆に条件としては良い事になる。
自らが望んでいない状態で敵の攻撃を受けて死亡する……そうすれば、この環境から解放されると喜んで依頼を受けたのだが、そうはならなかった。
ダンジョン内部の魔獣に関しては、どれ程レベルが高い魔獣であれ致命傷を負う事が無かったのだ。
もちろん重症を負う事は多々あるのだが、死亡するほどではないのでイジス達の調整が入っている事は明らかだ。
ミラバル侯爵管轄のダンジョンであればこのような事にはならないだろうが、人族にとっては誰が管理しているダンジョンであるかはわかり様がない。
実際にミラバル侯爵のダンジョンの依頼を受けた際には、いつの間にか現れたミスクによって依頼の品を手渡され、ダンジョンに向かう事すら出来てはいなかった。
最早打つ手もなく、日々無駄に高レベルの依頼を強制的に渡されるロペス。
その依頼を達成して持ち込んだ素材のレベルからは考えられない程低額な報酬を黙って受取り、冒険者になり立ての初心者が泊まるような集合宿に向かう。
初めての時には余りにも不釣り合いな報酬に激怒しそうになったのだが、その命令を出していたのはミラバル侯爵である事を思い出して、グッと堪えた。
侯爵の力は絶大で、最悪の心象を与えてしまっている所に更に文句を言おうものなら、報酬が無くなる事は容易に想像できたのだ。
宿に向かう途中、十分とは言えない食事を店で買って食事を済ます。
宿に着くと、これからの未来を楽しそうに話す若手しかいない中で、一人寂しく壁に寄り掛かる。
実際の冒険者稼業はそう甘いものでは無く、欲を出した冒険者は比較的早くに死亡する事は良くある。
自分の力を過信するか、魔物や罠を過小評価してしまうのだ。
「でも、怯えて暮らしていくのが罰だと思いますので、今は私から何かを伝えるつもりはありませんけれど」
これ以上今は何もしないという事を態々伝えるつもりはないミスク。
ミラバル侯爵も今の所はロペスに対して追撃を行っていないので、彼女の環境が直近で大きく変わる事は無いだろう。
もちろん体内には、いつ暴れ出すかわからない特殊なデヒルが存在したまま。
当然残りのパーティーメンバーであるロイエスとバウサーが、ロペスを助けるような事をするはずもない。
且つてはロペスと共に行動し、同時に称号を得ているロイエスとバウサー。
彼らからしてみればロペスは勝手に落ちて行った人物なので、庇護の対象にはなっていない。
ロイエスとバウサーは未だ冒険者活動を再開してはいないのだが、ロペスが有り得ない凶行に及んでミラバル侯爵の不興を買い、称号を剥奪された状態でこき使われている様をギルドまで見に来ていた。
「あれが元<闇者>ロペスのなれの果てかよ。あんだけ惨めになるとはな。無様を晒しやがって!同じ時期に称号を得たのが恥ずかしいじゃねーかよ。あいつのせいで俺達までミラバル侯爵からの信頼が揺らいでいるんだ!」
「まったくですね、ロイエス。あそこまで無様を晒すなら、さっさと自害した方が潔いと思いますが。無駄に生に執着する……冒険者としても覚悟がないと言わざるを得ないと思いますね」
<賢者>バウサーがこう突き放すが、ロペスは体内にいるデヒルによって行動に制限がかけられており、自死できない存在になっていた。
あまりの境遇に絶望して、自らの手で……と試した事はあるのだが、動けないほどの激しい痛みに襲われて断念せざるを得なかったのだ。
何故か服毒と言う行為自体も制限され、最早打つ手がない。
ロペスがそのような状態であるとは知らない二人は、好き放題に落ちたロペスをなじって満足げな顔をするとギルドを後にする。
残されたロペスはとてつもない惨めさ、悔しさに涙を流すだけで何かをする事は出来ない。
今までの行為が全て自分に返ってきただけであると気がつけるのは、何時の日になるだろうか……
今の彼女は、何とか日々生活する事で手一杯だったのだ。
「なんで私が……こんな」
ギルドで見覚えのある元パーティーメンバー二人から、かなり厳しい侮蔑の言葉を投げられたロペス。
あまりにも惨めで涙を流すが、何かができる訳でもないし何かが変わるわけでもない。
バウサーが言っていた通りにこの屈辱の時間を終わらせるために、度々自死を試そうとしていたのだが、その全てが体内に潜んでいるデヒルが引き起こした痛みによって妨害された。
絶食による餓死すらできなかったのだ。
あの痛みが続くのならば、諦めてこの運命を受け入れるしかないと言う程の苦痛を複数回経験してしまったロペスは、二度と自死はしないと固く心に誓っていた。
そうなると、難易度の高い依頼は逆に条件としては良い事になる。
自らが望んでいない状態で敵の攻撃を受けて死亡する……そうすれば、この環境から解放されると喜んで依頼を受けたのだが、そうはならなかった。
ダンジョン内部の魔獣に関しては、どれ程レベルが高い魔獣であれ致命傷を負う事が無かったのだ。
もちろん重症を負う事は多々あるのだが、死亡するほどではないのでイジス達の調整が入っている事は明らかだ。
ミラバル侯爵管轄のダンジョンであればこのような事にはならないだろうが、人族にとっては誰が管理しているダンジョンであるかはわかり様がない。
実際にミラバル侯爵のダンジョンの依頼を受けた際には、いつの間にか現れたミスクによって依頼の品を手渡され、ダンジョンに向かう事すら出来てはいなかった。
最早打つ手もなく、日々無駄に高レベルの依頼を強制的に渡されるロペス。
その依頼を達成して持ち込んだ素材のレベルからは考えられない程低額な報酬を黙って受取り、冒険者になり立ての初心者が泊まるような集合宿に向かう。
初めての時には余りにも不釣り合いな報酬に激怒しそうになったのだが、その命令を出していたのはミラバル侯爵である事を思い出して、グッと堪えた。
侯爵の力は絶大で、最悪の心象を与えてしまっている所に更に文句を言おうものなら、報酬が無くなる事は容易に想像できたのだ。
宿に向かう途中、十分とは言えない食事を店で買って食事を済ます。
宿に着くと、これからの未来を楽しそうに話す若手しかいない中で、一人寂しく壁に寄り掛かる。
実際の冒険者稼業はそう甘いものでは無く、欲を出した冒険者は比較的早くに死亡する事は良くある。
自分の力を過信するか、魔物や罠を過小評価してしまうのだ。
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