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3章 ~起きる異変~

第14話 思わぬ強敵

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「何も出なかったのは運が良かったね!」
森の中を歩いていると後ろからティモルが話しかけてきた。
リザは眠そうな顔をしながら、適当に相槌を打っていた。

それから三十分ほど歩き続けていると前方に10体ほどのゴブリンの群れがいた。
しかも中には、メイジやジェネラルもいた。

「ジェネラルがいるって事は、けっこう大規模かもしれないな・・・」
二人に話しかけると小さく頷いて返した。

メイジていどならどうにでもなるが、ジェネラルとなると厳しくなる。

その後、ゴブリンたちが去っていくのを待ち話し合った結果ここで街に戻ることにした。
ノーマルやアーチャー、メイジの群れならば、この3人でも討伐することは出来ただろう。
しかし、ジェネラルがいるという事は少なくとも数十~百レベルの数ということになる。

と、3人で帰ろうと後ろを向くと

「ヴォォォォォォォ!!!」
2体のオークが立ちはだかっていた。

まだ、この付近はオークたちが出る場所ではないはずだった。
オークが出るのは、こここら更に30分くらい奥に行ったところだ。
現在地付近でのオークの目撃はこれまで起こっていない。

「逃げるぞ!」
ユウの口から咄嗟に出たのはこの言葉だった。

しかし、後ろにはオーク前に進めばゴブリンたちがいる。
そこで横に逃げたのだが…


(まじか・・・)
ユウは、ティモルとリザと逆方向へ逃げてしまった。
しかも、オークに捕まらないようにと必死で逃げた結果、馬車道からも大きく外れ完全に森で迷ってしまった。

ティモルとリザが逃げ延びたかも心配だが、それ以上にここがどの辺なのかだ。
下手に動いても強い魔物に遭遇する可能性があるし、動かなければ死ぬだけだ。

昼も過ぎた頃であろうか、この日の探索は止めにすることにした。

「弁当は幾つか持ってきてるし、問題は寝る場所か・・・」
地面にテントを張って寝るのは危険すぎる。

いろいろと考えた結果、木に短剣を突き刺し足場にしながら登り枝の上で眠ることにした。
もちろん、鳥獣の類の魔物もいるが地上で寝るよりはましだろうという結論だった。

その夜は緊張のせいかあまり眠れなかった。



(ふぅ・・・やっと朝か)
寝覚めは悪かったが、そんな事は言ってられないとにかく街へ戻らなければ・・・

太陽の位置から見て、ひとまず北へと向かうことにした。

索敵をこなしながら歩くが運がいいことに魔物と出会わない。

それから10分ほど歩いていると洞窟を見つけた。
(もしかして巣か?)

草に身を隠し、周りに気を配りながら洞窟を見ていると数体のゴブリンが姿を現した。
見張りであろうか、洞窟の前で何やら話をしたりしている。

このまま見張りを殺し洞窟に魔法を放っていけば、あらかたは片付けることは出来るだろうが偵察組に後ろから攻撃を食らう可能性デカすぎる。

(こういう時に転移魔法が使えればなぁ・・・)

それから数分して見張りのゴブリンたちは、また巣に戻っていった。どうやら交代のようだ。

この時を見計らい、少し離れた位置へと移動することにした。
それからもゴブリンの巣を見ていると、昨日見たジェネラルたちが出てきた。

ユウは、昨日と同じ要領で木の上に登りゴブリンたちの観察をすることにした。

単独討伐をするのは危険性がデカイが放っておいても森をさまよっている時に出会う可能性もあるのだ。

(危険因子はできるだけ排除した方がいいか・・・)
結局ユウは、森の探索よりゴブリンの巣の観察を優先することにした。

その日から二日かけて分かったのはゴブリンの偵察は1日一度で1組だけ、そして偵察組にはジェネラルが絶対にいた。
偵察組は朝に出て昼ごろには戻って来る。

(連れて来られる女性もいないようだし、明日勝負をかけるか・・・)
そう考えた後、ある不安が頭をよぎった。巣の出入口が1箇所とは限らない、見張りが離れた後周りに魔物がいないことを確認して周辺を再度探索することにした。

結局、他の出入口は見つからなかった。
(いよいよ明日だ。)


その日もまた木の上で朝を迎えた。

ジェネラルが偵察から戻り、見張りが中に戻っていくのを見図って入口に走りよった。

まずは、出てこようとした新しい見張りのゴブリン3体をファイヤーアローズで一気に撃ち抜く。
すると奴らは音もなくその場に倒れた。

中に少し入ると幾つかの部屋があったので、まず手近な部屋に魔法を放ち外へと逃げることにした。

ファイヤーボールを放つと「グガアァァ!」「グルガルァァァ!」などのゴブリンたちの悲鳴が洞窟内を駆け回った。

外に出て待ち構えていると、ゴブリンたちが我先にと穴から出てくるのでファイヤーウェーブやウィングカッターなどの範囲魔法を放つと徐々にその数は減っているようだった。

しかし、「グルガァァァァ!!」
野太い声とともにジェネラルが姿を現した。
周りのゴブリンたちは魔法でほぼ壊滅状態にまでしたがジェネラルは意外にも元気そうだ。

「まじですか・・・」
体に傷はあるもののあまり魔法が効いていないジェネラルを見て苦笑いを浮かべる。

いらない邪魔が入らないようにファイヤーウォールを洞窟の入口に放つ。

(1体1でどうにかなるか・・・)
ジェネラルが危険視されるのはゴブリンを統率する力があるからだ。確かに通常のゴブリンよりは強いが化物という程ではない。
しかも今は配下のゴブリンたちもいない状況なのだ、上手く立ち回れば勝機はある。

そんなことを考えているとジェネラルが剣を抜き突っ込んできた。

ユウも剣を抜き、ジェネラルの剣を受ける。
(くそっ!流石ジェネラルだけあって重い・・・)

通常のゴブリンとはひと味違う剣の重みに少し戸惑っていた。
「グルァァァァ!」
「うおぉぉぉぉ!」
幾度と剣を交えるが一向にどちらも勝機を見いだせていなかった。

隙を見つけて魔法を放てればいいのだが、その隙を見つけるのも困難な状況だった。下手をすればこちらが首を切り落とされかねない。

(くそっ強すぎる!)
もう体力的には限界に近かった。ここ最近あまり眠れていなかったことに加え、これまで見たこともない強力な魔物に対しての緊張が原因であろう。

(なにか・・・隙を)

と考えると同時に洞窟の入口のファイヤーウォールが消えた。魔法が残る一定時間が過ぎたのだ。

「ガァァァ!」「グゲルア!」
ゴブリンがさまざまな叫び声を発しながら洞窟から出てこようとしているようだ。

すると、一瞬ジェネラルが洞窟の方に顔を向けた

(ここだ!)
残り少ない魔力を使いウィングカッターを、奴の剣を持つ右手に向けて放つ。

すると、ボトリッと音を立てて腕が地面に落ち次いで赤い血が腕のあった所から吹き出したのが見えた。

すかさず剣を持ち直し首を刎ねる。

「グェッ」と低い声を出したかと思うと、腕と同じく音を立てて下に落ちた。

洞窟から出てきたゴブリンたちは、ジェネラルの首が刎ねられるのを見て呆気にとられていた。
ユウはその隙を見てハイポーションを飲み、再度ゴブリンたちに対して魔法を放ち始めた。


約10分後
先ほどのジェネラルへの苦戦が嘘のように、こちらは簡単に終わった。

「はぁ・・・はぁ・・・」
ユウの目の前にはゴブリンたちの死体が散らばっていた。

(疲れたし他の魔石は明日にするか・・・)
ジェネラルの胸だけから藍色の魔石を取り出し、再度気に登ることにした。
今日は疲れすぎた、無理は禁物だ。

そして、また森での一夜が始まる。



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