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好き嫌い
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彼を中に招き入れ、荷物を受け取って礼を言うと、ロディネは手早く仕舞い始めた。傍らでその様子を黙って見ていたアルベルトが、ふいにぽつりと呟いた。
「⋯⋯昼食はどうする?」
ルーカスが先に食べてしまった上、荷物もあったので、一度喫茶店を出ていた。ロディネが時計を見てみれば、ちょうど昼食の時間だったので、笑顔で答えた。
「折角ですから、一緒に食べにいきませんか?」
猫を返しに行くと言っていた彼とこうしてまた会えたことが嬉しくて、ロディネは誘ったが、アルベルトの目が少し泳いだ。
「あぁ⋯⋯それもいいんだが」
「どうしましたか?」
アルベルトはいつになく歯切れが悪い。不思議に思って見つめていると、彼は少し迷ったような顔をした後、遠慮がちに言った。
「できたら⋯⋯俺も、お前の手料理が食べたい」
ロディネは目を瞬き、彼がちらりと視線を向けた先を見て、合点がいく。台所は、先程急いで兄の軽食を用意した時のままだったからだ。
「あれは、手料理というほどのものではありませんが⋯⋯」
パンを切って、バターを塗って、具材を詰め込んだだけの代物である。味付けも何もないのだが、アルベルトは羨ましかったようだった。
「それでもいい。俺は⋯⋯わがままを言ったか?」
ロディネはものすごく驚いた。
――――それのどこがわがままなの⁉
アルベルトが我を押し通すことなど滅多にない。紳士で、落ち着いているから、ロディネは途方もない安心感を覚えている。
今日、女性達に囲まれていたように、彼は異性から人気も高い男性だ。それでも事あるごとに気にかけてくれる優しさや、かけてくれる言葉の端々から、彼が一途に想ってくれていることを感じていた。だから、彼は怖くない。
心から信頼できる男性で、たとえ何を言われても、何をされても、受け入れられる気がした。
会うたびに、言葉を交わすたびに、ロディネは彼に惹かれていた。少しでも彼の想いに応えたいし、自分にも何でも言ってほしいと思った。
「いいえ! わがままだなんて。簡単なものしか作れませんが、それでも良いですか?」
「あぁ」
ほっと安堵した顔をしたアルベルトに、本当に彼は慎ましいと思いながら、ロディネは尋ねた。
「何にしましょうか。お好きなものはありますか?」
「ない」
「え?」
即答した彼は、やはり嬉しそうに微笑んでいる。
「お前が作ってくれるものなら、なんでも」
――――⋯⋯優しすぎるわ⁉
もし究極に不味い代物を作っても、食べてくれそうな気配を察したロディネだが、少し戸惑いも覚えた。
彼の自宅には殆ど食材が置かれていなかったし、一緒に外食をした時も、大してメニューも見ずにさっさと決めていた。あまり食にこだわりがない、と言えばそれまでだが、ならば手料理が食べたいと希望したりしないだろう。
「ええと⋯⋯嫌いな物は?」
「それもない。食えるものなら、なんでもいいんだ」
ロディネは唸った。
――――これは⋯⋯むしろ難題だわ!
好き嫌いがないというから、一見すると料理のハードルは高くないように思える。しかし、そんな彼をもってしても『食べられないような代物』を作ってしまった場合、自分の料理の腕はとてつもなく悲惨なものだということだ。昔から自分の作った物を食べている兄の舌は、信用ならない。
「わ、分かりました!」
ロディネが少しばかり緊張すると、すぐにアルベルトは勘付いた。
「⋯⋯いや、やっぱりいい。無理を言ってすまない」
「食べる前から、戦意喪失ですか⁉」
無様な姿をさんざん見られているだけに、怯まれても仕方がないと思いながらも、ロディネは半泣きである。アルベルトはそんな彼女を驚いたように見返して、やはりまた遠慮がちに尋ねた。
「そうじゃない。作るのが大変かと思ってな」
「そんな事はありません。何でもいいと言われたので、逆に食べられない物を作ってしまったら、どうしようと思っただけです。でも、お口に合う物が作れるよう、頑張りますね」
「⋯⋯あぁ」
腕まくりをして気合を入れた彼女に、アルベルトは表情を和らげた。そして、台所に立ち、いそいそと支度を始めた彼女を見つめる。
ロディネは可愛い、とずっと思っていた。
でも、今はそれだけじゃない。逢う度に、愛おしさが募る。いつも素直で、自分の想いを試すような真似もしてこない。家に招いても、逆に彼女の家にいても、心が落ち着く。
信頼に足る女性だと、アルベルトは思った。
だから――――怖くない。
「⋯⋯今朝、母親に猫を返しに行ったんだが、突き返された」
「え?」
驚いて手を止め、振り返ったロディネに、アルベルトは静かな声で続ける。
「新しい恋人は、猫が嫌いなんだとよ。別れない限り、俺が飼う事になりそうだ」
「大丈夫ですか?」
「まぁ⋯⋯連れ帰る時は嫌がっていたが、俺の家はもう覚えたらしくてな。初めて来た時よりは、ずっと落ち着いていた。世話だけしてやれば大丈夫だろう」
ロディネは笑顔で頷いた。
「トラちゃんは、とっても素直な子ですからね!」
「あぁ」
――――俺には相変わらず懐かないが。
「アルベルトさんは、大丈夫ですか?」
「俺か?」
虚を突かれたアルベルトに、ロディネは気遣うような目を向けた。
「はい。お仕事も多いでしょうし、世話をするために早く帰ってばかりもいられないでしょう? もし大変な時があれば、私が預かりますよ」
「⋯⋯あぁ。そうしてくれると、助かる」
「はい! あの子、本当に可愛いので、私としては嬉しいです」
ロディネはにっこりと笑って作業に戻ろうとしたが、アルベルトは小さくため息をついた。
「⋯⋯勝手だろ」
「え?」
「俺の母親だ。⋯⋯昔から自分勝手で、男癖が悪くてな。俺は父親の顔も知らない。付き合った男が多すぎて、誰の子かさえ分からなかったそうだ」
初めて聞く話であっただけに、ロディネは驚きながらも、黙って聞き入る。
「仕事をして金は稼いできたし、家に連れこんできた男達は、別に俺に害を与えるような奴はいなかった。そこら辺は、わきまえていたらしい。だが、家事はほとんどしないし、料理も食べたことがない。大半は俺がやった」
男を追い回し、夢中になって、別れては泣いていた母親の姿を思い出して、アルベルトは胸が苦しくなる。
あんな風になりたくない、という強烈な拒否感と。
泣かせたくない、という焦燥感は。
アルベルト自身も気づかないほど、相手に対して高い壁を作った。
複雑な家庭環境を、誰にも言ったことはない。同情されたくないという事もあったが、過去に向き合うには苦痛も伴うからだ。ただ、話を聞き終えたロディネは、彼の過去をさらに突いて尋ねる事も、憐憫の眼差しを向ける事もしなかった。
優しく微笑んで、小さく頷いた。
「アルベルトさんも、頑張ってこられたのですね。人一倍努力されたのだと思います」
まだ二十代にも関わらず、騎士団長の座にまで登り詰めたのは、相応の努力をしたからだと、ロディネは思う。そんな彼の恋人になれたのだから、周囲から認めてもらえるように、仕事にまい進せねばと心に誓った。
「⋯⋯あぁ⋯⋯そうだな」
ふっとアルベルトが目を和らげたのをみて、
「私も早く一人前になりますね! まずはアルベルトさんが好きな物が一つ作れるようになりたいです」
と、ロディネは意気込むと、作業に戻った。
彼女の小さな背中を見つめ、アルベルトは無性に愛おしさが募った。厄介な母親の話をされても、彼女はきちんと聞いてくれた。努力を認めてくれた。それが途方もなく嬉しい。
家庭の味などというものを知らずに育ったせいか、好き嫌いはないが、興味も湧かなかった。ロディネはその原因にも気づいたようだ。ならば、これから作っていけばいい、と彼女は言う。
――――俺ばかり、好きになる。
かつて彼女にそんな愚痴めいた思いを抱いてしまったのは、一方的に惹かれる事への恐れもあったからだ。
相手への感情の重さや大きさは、比べられるものではないし、全く同じというのは無理だ。それでも今は、彼女よりも自分の恋心が強かったとしても――――それだけ彼女を想えていると嬉しく思えた。
「⋯⋯限界だ」
アルベルトは呟いて、ロディネに歩み寄ると、後ろから腕を回して抱きしめた。途端にロディネは真っ赤になって、焦った顔で彼を見返した。
「あの⋯⋯アルベルト、さん⋯⋯?」
「後でいい」
「と、おっしゃいますと⋯⋯」
では、先に何を。
アルベルトはロディネの首筋に顔を埋め、唇を付けた。びくりと彼女の身体が震えるのを感じながら、
「お前のベッドを使っていいか?」
と、甘い声で誘う。
「か、かまいませんが⋯⋯また眠い、んですか?」
「今、したい」
固まったロディネだが、更にもう一度ねだるように告げられて、小さく頷いてしまった。アルベルトは微笑んで、彼女を抱き寄せたが。
「では、き、着替えてきます!」
「これから脱ぐのにか?」
「違います。また初めての時みたいに、下着が不恰好なんです!」
今朝、家に一度帰って来て、外出の為に着替えをした時に戻りたい。彼と別れた後だから、と気を抜いた自分を怒りたい。
半泣きになったロディネに、アルベルトは軽く目を見張り、くすりと笑った。
「それであの時、勢いよく脱いだのか」
「は、はい⋯⋯」
「では、今日もそうすればいい」
アルベルトに抱き上げられ、ロディネの抵抗は無駄に終わる。
まだ昼日中とあって明るく、ベッドに運ばれた時、ロディネの羞恥心は最高潮に達したが、いつも以上のアルベルトの深い愛情に包まれて、いつしか緊張は抜けていった。
喜びと、途方もない安心感を覚えながら、ロディネは身体にも心にも彼を刻んだ。
アルベルトに優しいキスをされると、どうしようもなく嬉しくて、幸せで。
アルベルトが好きだと、ロディネは心から思った。
「⋯⋯昼食はどうする?」
ルーカスが先に食べてしまった上、荷物もあったので、一度喫茶店を出ていた。ロディネが時計を見てみれば、ちょうど昼食の時間だったので、笑顔で答えた。
「折角ですから、一緒に食べにいきませんか?」
猫を返しに行くと言っていた彼とこうしてまた会えたことが嬉しくて、ロディネは誘ったが、アルベルトの目が少し泳いだ。
「あぁ⋯⋯それもいいんだが」
「どうしましたか?」
アルベルトはいつになく歯切れが悪い。不思議に思って見つめていると、彼は少し迷ったような顔をした後、遠慮がちに言った。
「できたら⋯⋯俺も、お前の手料理が食べたい」
ロディネは目を瞬き、彼がちらりと視線を向けた先を見て、合点がいく。台所は、先程急いで兄の軽食を用意した時のままだったからだ。
「あれは、手料理というほどのものではありませんが⋯⋯」
パンを切って、バターを塗って、具材を詰め込んだだけの代物である。味付けも何もないのだが、アルベルトは羨ましかったようだった。
「それでもいい。俺は⋯⋯わがままを言ったか?」
ロディネはものすごく驚いた。
――――それのどこがわがままなの⁉
アルベルトが我を押し通すことなど滅多にない。紳士で、落ち着いているから、ロディネは途方もない安心感を覚えている。
今日、女性達に囲まれていたように、彼は異性から人気も高い男性だ。それでも事あるごとに気にかけてくれる優しさや、かけてくれる言葉の端々から、彼が一途に想ってくれていることを感じていた。だから、彼は怖くない。
心から信頼できる男性で、たとえ何を言われても、何をされても、受け入れられる気がした。
会うたびに、言葉を交わすたびに、ロディネは彼に惹かれていた。少しでも彼の想いに応えたいし、自分にも何でも言ってほしいと思った。
「いいえ! わがままだなんて。簡単なものしか作れませんが、それでも良いですか?」
「あぁ」
ほっと安堵した顔をしたアルベルトに、本当に彼は慎ましいと思いながら、ロディネは尋ねた。
「何にしましょうか。お好きなものはありますか?」
「ない」
「え?」
即答した彼は、やはり嬉しそうに微笑んでいる。
「お前が作ってくれるものなら、なんでも」
――――⋯⋯優しすぎるわ⁉
もし究極に不味い代物を作っても、食べてくれそうな気配を察したロディネだが、少し戸惑いも覚えた。
彼の自宅には殆ど食材が置かれていなかったし、一緒に外食をした時も、大してメニューも見ずにさっさと決めていた。あまり食にこだわりがない、と言えばそれまでだが、ならば手料理が食べたいと希望したりしないだろう。
「ええと⋯⋯嫌いな物は?」
「それもない。食えるものなら、なんでもいいんだ」
ロディネは唸った。
――――これは⋯⋯むしろ難題だわ!
好き嫌いがないというから、一見すると料理のハードルは高くないように思える。しかし、そんな彼をもってしても『食べられないような代物』を作ってしまった場合、自分の料理の腕はとてつもなく悲惨なものだということだ。昔から自分の作った物を食べている兄の舌は、信用ならない。
「わ、分かりました!」
ロディネが少しばかり緊張すると、すぐにアルベルトは勘付いた。
「⋯⋯いや、やっぱりいい。無理を言ってすまない」
「食べる前から、戦意喪失ですか⁉」
無様な姿をさんざん見られているだけに、怯まれても仕方がないと思いながらも、ロディネは半泣きである。アルベルトはそんな彼女を驚いたように見返して、やはりまた遠慮がちに尋ねた。
「そうじゃない。作るのが大変かと思ってな」
「そんな事はありません。何でもいいと言われたので、逆に食べられない物を作ってしまったら、どうしようと思っただけです。でも、お口に合う物が作れるよう、頑張りますね」
「⋯⋯あぁ」
腕まくりをして気合を入れた彼女に、アルベルトは表情を和らげた。そして、台所に立ち、いそいそと支度を始めた彼女を見つめる。
ロディネは可愛い、とずっと思っていた。
でも、今はそれだけじゃない。逢う度に、愛おしさが募る。いつも素直で、自分の想いを試すような真似もしてこない。家に招いても、逆に彼女の家にいても、心が落ち着く。
信頼に足る女性だと、アルベルトは思った。
だから――――怖くない。
「⋯⋯今朝、母親に猫を返しに行ったんだが、突き返された」
「え?」
驚いて手を止め、振り返ったロディネに、アルベルトは静かな声で続ける。
「新しい恋人は、猫が嫌いなんだとよ。別れない限り、俺が飼う事になりそうだ」
「大丈夫ですか?」
「まぁ⋯⋯連れ帰る時は嫌がっていたが、俺の家はもう覚えたらしくてな。初めて来た時よりは、ずっと落ち着いていた。世話だけしてやれば大丈夫だろう」
ロディネは笑顔で頷いた。
「トラちゃんは、とっても素直な子ですからね!」
「あぁ」
――――俺には相変わらず懐かないが。
「アルベルトさんは、大丈夫ですか?」
「俺か?」
虚を突かれたアルベルトに、ロディネは気遣うような目を向けた。
「はい。お仕事も多いでしょうし、世話をするために早く帰ってばかりもいられないでしょう? もし大変な時があれば、私が預かりますよ」
「⋯⋯あぁ。そうしてくれると、助かる」
「はい! あの子、本当に可愛いので、私としては嬉しいです」
ロディネはにっこりと笑って作業に戻ろうとしたが、アルベルトは小さくため息をついた。
「⋯⋯勝手だろ」
「え?」
「俺の母親だ。⋯⋯昔から自分勝手で、男癖が悪くてな。俺は父親の顔も知らない。付き合った男が多すぎて、誰の子かさえ分からなかったそうだ」
初めて聞く話であっただけに、ロディネは驚きながらも、黙って聞き入る。
「仕事をして金は稼いできたし、家に連れこんできた男達は、別に俺に害を与えるような奴はいなかった。そこら辺は、わきまえていたらしい。だが、家事はほとんどしないし、料理も食べたことがない。大半は俺がやった」
男を追い回し、夢中になって、別れては泣いていた母親の姿を思い出して、アルベルトは胸が苦しくなる。
あんな風になりたくない、という強烈な拒否感と。
泣かせたくない、という焦燥感は。
アルベルト自身も気づかないほど、相手に対して高い壁を作った。
複雑な家庭環境を、誰にも言ったことはない。同情されたくないという事もあったが、過去に向き合うには苦痛も伴うからだ。ただ、話を聞き終えたロディネは、彼の過去をさらに突いて尋ねる事も、憐憫の眼差しを向ける事もしなかった。
優しく微笑んで、小さく頷いた。
「アルベルトさんも、頑張ってこられたのですね。人一倍努力されたのだと思います」
まだ二十代にも関わらず、騎士団長の座にまで登り詰めたのは、相応の努力をしたからだと、ロディネは思う。そんな彼の恋人になれたのだから、周囲から認めてもらえるように、仕事にまい進せねばと心に誓った。
「⋯⋯あぁ⋯⋯そうだな」
ふっとアルベルトが目を和らげたのをみて、
「私も早く一人前になりますね! まずはアルベルトさんが好きな物が一つ作れるようになりたいです」
と、ロディネは意気込むと、作業に戻った。
彼女の小さな背中を見つめ、アルベルトは無性に愛おしさが募った。厄介な母親の話をされても、彼女はきちんと聞いてくれた。努力を認めてくれた。それが途方もなく嬉しい。
家庭の味などというものを知らずに育ったせいか、好き嫌いはないが、興味も湧かなかった。ロディネはその原因にも気づいたようだ。ならば、これから作っていけばいい、と彼女は言う。
――――俺ばかり、好きになる。
かつて彼女にそんな愚痴めいた思いを抱いてしまったのは、一方的に惹かれる事への恐れもあったからだ。
相手への感情の重さや大きさは、比べられるものではないし、全く同じというのは無理だ。それでも今は、彼女よりも自分の恋心が強かったとしても――――それだけ彼女を想えていると嬉しく思えた。
「⋯⋯限界だ」
アルベルトは呟いて、ロディネに歩み寄ると、後ろから腕を回して抱きしめた。途端にロディネは真っ赤になって、焦った顔で彼を見返した。
「あの⋯⋯アルベルト、さん⋯⋯?」
「後でいい」
「と、おっしゃいますと⋯⋯」
では、先に何を。
アルベルトはロディネの首筋に顔を埋め、唇を付けた。びくりと彼女の身体が震えるのを感じながら、
「お前のベッドを使っていいか?」
と、甘い声で誘う。
「か、かまいませんが⋯⋯また眠い、んですか?」
「今、したい」
固まったロディネだが、更にもう一度ねだるように告げられて、小さく頷いてしまった。アルベルトは微笑んで、彼女を抱き寄せたが。
「では、き、着替えてきます!」
「これから脱ぐのにか?」
「違います。また初めての時みたいに、下着が不恰好なんです!」
今朝、家に一度帰って来て、外出の為に着替えをした時に戻りたい。彼と別れた後だから、と気を抜いた自分を怒りたい。
半泣きになったロディネに、アルベルトは軽く目を見張り、くすりと笑った。
「それであの時、勢いよく脱いだのか」
「は、はい⋯⋯」
「では、今日もそうすればいい」
アルベルトに抱き上げられ、ロディネの抵抗は無駄に終わる。
まだ昼日中とあって明るく、ベッドに運ばれた時、ロディネの羞恥心は最高潮に達したが、いつも以上のアルベルトの深い愛情に包まれて、いつしか緊張は抜けていった。
喜びと、途方もない安心感を覚えながら、ロディネは身体にも心にも彼を刻んだ。
アルベルトに優しいキスをされると、どうしようもなく嬉しくて、幸せで。
アルベルトが好きだと、ロディネは心から思った。
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