辺境の娘 英雄の娘

リコピン

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第一章 

7-2.

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7-2

セウロン伯爵家の三男、シヴェスタと私の婚約が調ととのったのは、お互いが5歳の時。

体の弱かった母が、文字どおり命懸けで産んだ二人目の子が女であることがわかると、父は私に次期当主となる婿をとることを決めた。仕事上の取引があった伯爵家からシヴェスタが選ばれたのは、両家の結びつきを確かなものとするため。

当然のことながら、そこに本人達の意志は存在しなかった。

それでも遊び仲間として順調に育んでいた私達の関係に、やがて転機が訪れる。12の時、父が事故で亡くなったのだ。突如始まった当主代理としての忙しい日々に、いつしか二人の関係は疎遠になっていく。

15になる年、貴族の当主代理、次期当主としての義務として、ともに士官学校へと進んだ。戦闘能力の無い私が情報戦略コースを選んだのに対し、魔術の素養も高かったシヴェスタは上級士官コースを専攻した。結果として、互いの勉学に時間をとられ、関係はますます希薄なものとなっていった。

それでも。シヴェスタとの将来に不満があるでなく、当主代理として、そして未来の侯爵婦人としてあるために努力を続ける日々を過ごしていた。

しかしそれも、結局は自分の一方的な思いでしかなく―気がつけば、憧れの人を取り巻く喧騒のうちに、彼女を声高に非難する婚約者の姿を見ることが増えていった。

『英雄の娘』と呼ばれる可憐な―実際には自分達よりも年上だが―少女の取り巻きと化した彼は、少女を至高の存在として崇めるようになる。その姿に、次第に私の心も彼から離れていってしまった。

そんな中でのヴィアンカ様との出会いは、ある意味では必然と言えた。人気の無い場所で、自身の婚約者が彼女を詰問している現場に遭遇し、完全に頭に血がのぼってしまった私は、初めて婚約者に怒りをぶつけた。

それまで、上手くいかないことはあれど、言い争いをしたこともなかった私達の初めての喧嘩だった。激怒した彼が去った後、泣き続ける私をヴィアンカ様は辛抱強く見守って下さった。何も言わずとも寄り添ってくださる温もりに、あの時の私がどれほど救われたか。

それ以降は、こちらから話しかければお話をしてくださることもあり、校内で見かける度にお傍に近づいて行った。彼女のかたわらに相応しい自分であれるよう、憧れの方へ一歩でも近づこうと頑張れることも増えた。

ただ、完全にこじれてしまったシヴェスタとの関係だけは改善の糸口さえも見つけることができず、いたずらに時だけが過ぎていった。

そしてあの日、辛うじて保たれていた私達の関係はついに崩壊を迎えた。私の人生さえも粉々に打ち砕いて―




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