召喚巫女の憂鬱

リコピン

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第三章 堕とされた先で見つけたもの

14.

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14.

結局、アライラを襲い、シェーンを傷つけたカールがお咎めを受けることはなかった。それは、この世界の女性の扱いというものを改めて感じさせるものではあったけれど、『商品』をキズモノにされて激怒したピロウによって、カールは店への出入りを禁止された。

一つだけ、良かったことがあったとすれば、事件依頼、シェーンやソフィーとの距離が近くなったこと。

元から面倒見のいいシェーンはともかく、明らかにこちらを避けていたソフィーが、あちらから話しかけて来ることが増え、空いた時間には三人で談笑することさえある。

ただ、好奇心旺盛な二人に振られる話題には、答えに困るものもあって―

「そう言えば、アルマはあのヴォルフって男とどこで出会ったの?」

「えっと…」

シェーンの前で、『異なる世界から来た』ことにふれるわけにはいかない。

「…森で迷ってた時に、熊に襲われて、」

「「は!?」」

二人の声が重なった。

「それをヴォルフが助けてくれて」

「ちょっ、待って!は?森?熊?何でよ!?」

「?」

焦ったようなソフィーの姿に首をかしげる。

「何それ!え?誤魔化してるとかじゃなくて本当に!?聖都で、護衛、あんたを守る人間として出会ったとかじゃなくて!?」

その言葉に少し驚く。彼女は、一体、私達のことをどこまで知っているのだろう?

「…初めてあったのは森の中です。気がついたら放り出されてました」

「え?なぁに、それ?あんた、前にも男に捨てられたことでもあるの?」

「シェーンは黙ってて!!」

ソフィーの剣幕にシェーンが圧されている。

「あー!何よ?どういうこと?でも、そうか、確か召喚の時期が早かった気がする!アルマ、あんた神殿に召喚されたんじゃないのね?」

本当に焦っているせいか、『召喚』、『神殿』という言葉を口にするソフィーに、シェーンが訝しげな視線を送っている。ソフィーはそれに気づいた様子もなく、

「ネーエの街でもないの?聖都の隣にある街!そこで、誰かに会ったりしてない?」

「…いえ。神殿に見つかったのはネーエでしたけど、そこまで一緒に居てくれたのはヴォルフだけです」

「マジで??え?本当、なんで?」

真剣に考え込んでしまったソフィーに、シェーンと顔を見合わせる。シェーンが肩をすくめたところで、ノックもなく控え室の扉が開いた。

部屋に入ってきたピロウ、その後に続いた男の姿に息を飲む。

穏やかな、笑みさえ浮かべて佇む男を睨む。

トラオム―

そこには私を拐い、売り飛ばした男が立っていた。




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