最強のラスボスが逆行転生したら宿敵の美少女勇者の弟だった件

内田ヨシキ

文字の大きさ
7 / 51
第1章 カインとアリア

第5話 わたしがこの中で、一番お姉ちゃんだから

しおりを挟む
「や、やめてくれ! 殺さないでくれ!」

「もちろんだ。殺したら利用できないからな」

 村を出て数時間ほど。

 捜索魔法を駆使して見つけた奴隷商人を、さっそくボコボコにしてやった。

「アリアをどこにやった?」

「アリア?」

「今日までお前がいた村の子供だ。桃色がかった金髪で、瞳は紫色。料理上手で、人懐っこくて、笑顔のとびきり可愛い美少女だ!」

「そ、その子なら、もう売っちまったよ」

「どこに?」

「ローンケイブ村だよ、あそこには需要があるんだ!」

 その地名には覚えがある。やはり俺の知る歴史通りだ。

「なるほどな。では、俺も売ってもらおう」

「ガ、ガキのくせに奴隷が欲しいってのか?」

「勘違いするな。お前には、ローンケイブに売ってもらうんだ」


   ◇


「おい、この子も追加だ」

「助かった……。これで足りない分を村の子から選ばなくて済む……」

「こんなこと、いつまで続けなきゃいけないんだ……」

 俺を運んでいる連中の会話はそこで途切れた。

 長く重苦しい沈黙ののち、俺は乱暴に放り出される。

 目隠しを外すと、暗い洞窟の中だった。出入り口は、鉄格子で封鎖されている。格子扉に鍵がかけられ、その向こうで男たちが感情を殺して俺を見下ろしていた。

「悪く思うなよ……」

 その一言を最後に、男たちは去っていく。

 この洞窟には強力な化物が住んでいるという。

 毎月生贄を捧げる代わりに、ローンケイブ村の安全を保証してもらっている。しかし村の子供は犠牲にしたくないからと、孤児を騙して連れてきたり、奴隷商から買ってきたりしているそうだ。

 鉄格子は化物を封じ込めるためではなく、生贄の子供たちを逃さないためのものだろう。

 自分たちさえ良ければ、他人を平気で犠牲にできる。実に人間らしい残酷さだ。

 洞窟内に点々と存在する灯りは、化物の手によるものだろうか。

 やがて、奥のほうから複数の足音が近づいてくる。

「やっぱり、また連れてこられたんだ。ねえ君、大丈夫?」

 アリアだ。より小さな子供を3人ほど引き連れている。

 良かった。まだ無事だったか……!

 俺以外のやつに殺されるなど、あってはならないからな!

「うん、大丈夫。でも……ここは、どこ?」

 俺はいたいけな男児のふりをした。顔も魔法で偽装してある。

 アリアは一瞬、困惑を浮かべたが、すぐ笑顔になる。

「わたしたちの秘密基地になる洞窟だよ。これから楽しい楽しい探検をするんだ」

 無理に作った笑みだ。俺には分かる。

 アリアは一緒にいる子供たちを、そうやって勇気づけてきたのだろう。

「そうなんだっ。秘密基地って、すごいね」

「でしょー? 今はね、秘密の出口を探してるんだ。出入り口はたくさんあったほうが格好いいでしょ? ね、君も一緒に行こっ」

 差し伸べられたアリアの手を取る。

「うんっ、探検、楽しそう」

 俺はそのままついていく。

 さて、ここから俺は見守るだけだ。

 本来の歴史では、アリア以外の子供は全員、化物に喰い殺される。アリアは勇者の力で化物を倒すことはできても、子供たちを守り切れなかったのだ。

 今回はどうなるか。

 もしアリアが先に狙われ、生命の危機に陥ったなら俺が助けなければならない。

 逆に、他の子供が先なら、見殺しにしてアリア覚醒のきっかけになってもらおう。

「さー、出口はこっちかなー? 近づいてる気がするよー」

 アリアは努めて明るく先導する。

 なにかに巻き込まれたことは察しているだろう。だから脱出路を探している。

 だが、そう上手く行くはずがない。

「つかれたぁ! たんけんつまんない!」

 連れていた子供のひとりが座り込んでしまった。

「あぅ、ご、ごめんね。ちょっと歩くの早かったかな。少し休もうね」

「おなかすいたよぉ、おかしたべたいよぉ!」

 ひとりがグズりだすと、他の子も泣き声を上げる。

「あぁ、泣かないで。えっと……ごめんね、こんなのしかないけど……」

 アリアはポケットをまさぐって、いくつかの飴玉を取り出した。

 グズっていたふたりは、ひとつずつ飴玉を口にすると、ひとまず泣き止んだ。

 アリアは残った分を、俺ともうひとりの女児にも差し出してくる。

 飴玉はもうふたつしかない。

「……あの、お姉さんの分がないです」

 女児の指摘に、アリアは微笑みで返す。

「わたしはお姉ちゃんだから平気なんだよー」

 平気なわけがない。さらわれてからなにも食べてないはずだ。

 見ず知らずの子供に施してる場合でもあるまいに。

「……俺は平気。お姉ちゃんが食べ――」

「いひひひ~」

 突っ返すつもりだった言葉は、異様な笑い声にかき消された。

 アリアたちは、びくりと体を震わせて振り返る。

「いい子だねぇ~、ひひひっ。頑張ってるいい子はねえ~、たくさん可愛がってあげるねえ~」

 ひたひたと不気味な足音を立てながら、巨躯がどんどん近づいてくる。

 人型だが着衣はなにもない。局部をぶらぶらさせながら、気持ち悪い笑みを浮かべている。

 頭には一対のつの。肩は異様に盛り上がっており、かなりの猫背。それでいて腹はやたらと膨らんでいる。

 加えて、ひどく不快な異臭を放っている。

 ゼートリック系の、醜い奇形の魔族だ。

「君、気に入ったよぉ。他の子をいい子いい子してから、最後にお楽しみだねえ。きひひ」

 俺はほくそ笑む。アリアが最後なら、他の子供が喰われている最中に覚醒するかもしれない。

 だがしかし、アリアは怯える子供たちを守るように前に出た。

 手も足も震え、歯もカタカタ鳴らしているのに、奇形の魔族を睨みつける。

「ダメ……。わ、わたしが……この中で、一番、お姉ちゃんだから……。わたしが、みんなを守らないと……。だから、だから最初は、わたし……。わたしじゃなきゃ、ダメなの!」

 なにを血迷ったことを!

 俺が止める間もなく、アリアは隠し持っていた石を、奇形の魔族に投げつけていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。 一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します! 大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。

嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~

ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」 魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。 本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。 ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。 スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...