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第2章 王立ロンデルネス修道学園

第25話 必殺剣の完成だ!

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「てぇえい!」

 聖気をまとった模擬剣が、組木に食い込む。

「そこだ! 爆発させろ!」

「はぁあ!」

 俺の合図に従って、アリアは剣の聖気を爆発させた。

 組木は内側から木っ端微塵に吹き飛んだ。

「よし! やったぞ、アリア!」

「できた……? 今のが聖光破斬ブライトスラッシュ?」

「そうだ。必殺剣の完成だ!」

 切れ味のない模擬剣でこの威力だ。真剣を使えば、凄まじい威力になる。少なくとも、生贄の洞窟にいた変態奇形魔族くらいは跡形もなく消し飛ばせるだろう。

 アリアが復調してから数週間。俺の研究とアリアの努力が実った瞬間だ。

「うぅう! やったぁあ! ありがとうカインー!」

「ああ、お前もよく頑張ったぞアリア!」

 飛びついてくるアリアを受け入れ、抱きしめ返してやる。

 勢い余って、その場でくるくると回る。

 その温もりと柔らかい感触が心地良い。

「ふたりとも、おめでとう」

 レナも小さく拍手しながら祝福してくれる。

 そこでハッとして、俺はアリアを引き剥がした。こほん、と咳払い。

 レナやグレンもいるのを忘れていた。ちょっと喜びすぎて、恥ずかしい。

「照れなくてもいいのに。カインくんがお姉さんのこと大好きなの、みんな知ってるんだし」

「照れてないし、言うほど好きじゃない」

「はいはい」

 にこにこと笑っているレナが、微妙に憎たらしい。こいつ、だんだん神経が図太くなってきてないか?

「つーか、この技、えぐい威力してねえか……? カインの魔法もそうだけどよ、お前らなにと戦うつもりなんだよ」

「なにと……? ふむ……先の話になるが、まあ、魔王だな?」

「かな?」

 俺とアリアが顔を見合わせて言うと、グレンは苦笑した。

「おいおい、マジかよ。あのゼートリック4世とか?」

「ああ、アリアなら必ず倒す。俺は知っているんだ」

「そうだね。カインと一緒なら、きっとなんでもできると思う」

 俺たちが冗談を言っていないと気づいて、グレンは改めてため息をついた。

「なるほどな。さすがは勇者ってわけだ。討伐に行くときは、オレにも声かけろよ?」

「もちろんだ。お前には、大事な役割がある」

 言ってやると、グレンは目を見開いて、嬉しそうに頬を緩ませた。

「お、おい聞いたかよ! あのカインが、オレを必要だって言ってくれたぜ!」

 本来の歴史通りに死んでもらうためなのだが……まあ、知らぬが仏だな。

 はしゃぐグレンをアリアは微笑ましく眺めていたが、レナはちょっと恨めしそうだ。

「カインくん、私は?」

「レナは来なくてもいい」

「グレンさんには来いって言って、私には来るなって言うの?」

「そうは言ってない。俺はただ、お前まで危険な目に遭うことはないって」

「カインくん、私にはすっごく優しくしてくれるけど、なんだか遠慮されてるみたいで、時々寂しいよ?」

「むぅ……しかしだな……」

「あっ、お前もしかして」

 なにかに気づいたのか、嬉しそうにグレンが声を上げる。

「重度のシスコンってのはカモフラージュで、本当はレナが好きなんだろ?」

 さすがに俺は失笑した。アリアはため息。レナはジト目でグレンを見上げる。

「グレンさんって、結構おバカさんなんですね」

「ち、違ったか……?」

 場の空気が読めていなかったことに気づき、グレンは慌てて話題を変える。

「そ、そういや学期試験の内容が発表されたよな?」

 無視したらあんまりにも哀れなので、話に乗ってやる。

「ああ、お決まりの筆記試験と、今回の実技試験はダンジョン攻略だったか」

「ダンジョン? お、オバケとかいないよね?」

「いたら倒せ」

「えー……」

 怖気づいているアリアである。

 まったく。俺の知っている勇者アリアは、死霊術師ネクロマンサーの操るゾンビもゴーストも無感情に薙ぎ払っていたのだがな……。

「学園が管理してる訓練用の人工ダンジョンだから、オバケはいないと思いますよ」

 と、レナはアリアを励ます。

「だが敵は配置されるはずだな?」

「ああ、侵入者のレベルに合わせた魔法生物が出てくるらしい。あくまで訓練用らしいが、5、6人のパーティ戦を想定してるらしいからな。かなり手強いらしいぜ」

「5、6人のパーティ? Sクラスは7人だ。数が合わないぞ」

「SとAは合同でやるんだと」

 俺とグレンの会話を聞いてレナは嬉しそうに目を輝かせる。

「じゃあ私、カインくんと一緒のパーティになるかもしれないんだ?」

「グレンと一緒になるかもしれないぞ?」

「あー……そっかぁ……」

「露骨に嫌な顔すんなよ、傷つくだろ。さっきは悪かったって」

 くすくすと笑ってから、アリアは少し寂しそうな目をする。

「わたしはDクラスだから、一緒にはなれないね」

「心配するな。今のお前の実力なら楽勝のはずだ。一気にクラスが上がって、次は俺たちと一緒にやれる」

「うんっ、そうなれるように頑張るね!」

 翌日から俺は、アリアたちにダンジョン攻略のイロハについて講義してやるのだった。
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