最強のラスボスが逆行転生したら宿敵の美少女勇者の弟だった件

内田ヨシキ

文字の大きさ
43 / 51
第4章 新しい過去、違う道の未来

第36話 お前は俺の過去だけど、もう俺にならなくていい

しおりを挟む
「来たぞ」

 強力な魔力を感知して、俺はゾールたちに警告してから振り向いた。

 頭には一対のつの。青白い肌。鋭い牙と爪。魔力を帯びた鎧に、赤黒いマント。落ち着きのある身のこなし。

 ゼートリック系魔族でも、高位の者と見受けられる。おそらく第6騎士団が討伐する予定だった魔将だろう。

「よもや看破されるとは想像もしておりませんでした。大した実力です。お名前をお聞かせ願えませんか、少年?」

 俺は返事代わりに、圧縮魔力を速射した。

 眉間を貫通。倒れる間もなく塵となって消える。

「バカにするなよ。姿を見せろ、臆病者」

 俺が今討ったのは、魔力で作り出された分体だ。騎士団と同様に、魔力の糸で操られている。

「そうですかそうですか。その魔法、その性格。私の情報網に引っかかっておりますよ。アーネスト村に現れたという、少年勇者カインですね?」

 また同じ姿の分体が現れる。1体だけじゃない。まるで土から生えてくるように、次々と分体が立ち上がってくる。

 数十の分体をかき分けて、ひときわ強力な魔力を放つ個体が悠然と歩いてくる。本体はこいつか?

「俺がカインだったら、どうだと言うんだ?」

「我が魔王、ゼートリック4世の脅威となる者には死んでいただく。その血肉は、私がいただきますがね」

「やはりお前らは野蛮な獣だな。紳士のふりをしても、卑しい食欲が透けて見える」

「まだ幼い少年に言うのも酷ですが、遺言はそんな軽口でよろしいので?」

 一斉に分体が飛びかかってくる。

 俺はあえて前に踏み切った。襲いくる十数の爪や牙の間合いを見切り、その隙間に突っ込んだのだ。

 同時に魔力を溜めた右手を、魔将の本体に向ける。

魔炎刺槍ファイアランス!」

 青い炎が鋭利な刃となって魔将に激突する。

 魔将は魔力防壁を張って耐えたようだが、今の一撃で防壁は半壊している。

 周囲の分体が俺を取り囲もうとするが、意に介することはない。

魔衝風撃ブラストショック!」

 強烈な熱風を全周囲に展開。分体どもを吹き飛ばし、俺は魔将を再び補足する。

 魔将は分体を盾に、後退していく。俺は追う。

 分体を相手にするのは無駄だ。本体を潰せばすべて終わる。

 騎士どもを殺さず保護するのに、余分に魔力を消耗してしまったのだ。いちいち相手にしていては、こちらの魔力が尽きてしまう。

「おい、その数をひとりは無理だ! 俺たちも行くぞ!」

 魔将の出現と分体の数に動揺していたゾールたちだが、遅れて加勢してくれた。

 俺を狙う分体を遠くから撃ち抜いたり、注意を引き付けたりしてくれる。かなり動きやすくなる。だが……!

「来るな! 避難していろ! お前たちが傷ついたら俺は……」

「心配すんな! 誰も死なせねえよ! お前もな!」

 ゾールの実力は、分体を数体倒すのがやっとな程度だろう。他のみんなはそれ以下だ。まともに立ち向かっては勝ち目はない。

 その力と数の差を、連携で補う。ニルスが指示を出つつ援護射撃。ゾールや他の開拓民が前に出て、それらの能力をフラウが強化魔法で底上げする。傷ついたらすぐ治療もする。

「……そうだな。心配はいらない、か」

 長らく忘れていた。俺たちは、心を通じさせたときこそ一番強かった。

 俺は魔将本体を、単独で追いかける。

 背中は安心だ。けれど、寂しくもある。

 ゾールは言った。俺がゾールなら、独りのはずがない、と……。

 仲間が勝手についてくる、と……。

 正しいよ、過去の俺ゾールよ。今でもそう思う。

 でもな、それは仲間がいるならの話だ。

 俺の仲間は――今、お前の周りにいる家族は、俺にはもういないんだ。

 彼女らへの想いがあればこそ、もう失いたくなかったからこそ、強くなれた。

 けれどフラウたちのような、家族と呼べるほどの者は、もう手に入らなかったんだ。

 羨ましいよ。

 お前は俺の過去だけど、もうならなくていい。

 俺みたいな、最強でも孤独の魔王になんてならなくていい……!

「もう逃さん!」

 俺はいよいよ魔将を捕捉した。

閃爆魔砲ブラストキャノン!」

 超高熱の魔力の塊が、魔将を飲み込む。周囲の分体を巻き込みながら突き進み、はるか遠方で大爆発。

 生き残った分体は、すべてその場にバタバタと倒れていく。

「はあ、はあ……」

 渾身の一撃だ。手応えはあったが……。

「やった? カインがやったぞ! 本体を消し飛ばしたんだ!」

 ゾールが声を上げると、仲間たちも一緒になって歓声を上げる。

「いや待て! まだだ!」

 倒れた分体が一斉に立ち上がる。ゾールたちに向けて、全員が指を向ける。

 圧縮魔力の一斉掃射が来る!

 俺は限界突破オーバーリミットを発動させて、一瞬でゾールたちの前に出た。

 全力の魔力防壁で、すべての射撃を弾く。弾き続ける。掃射は、途切れない。

「おやおや、やはり彼らがあなたの弱点でしたか」

 再び強力な魔力を持つ個体が現れる。

 復活した、だと?

「そうか……。その不死身ぶり。お前があの、魔将『不死身のヴァウル』か!」

「ご明察」

 魔将ヴァウルは、不敵な笑みを浮かべていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

処理中です...