最強のラスボスが逆行転生したら宿敵の美少女勇者の弟だった件

内田ヨシキ

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第4章 新しい過去、違う道の未来

第36話 お前は俺の過去だけど、もう俺にならなくていい

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「来たぞ」

 強力な魔力を感知して、俺はゾールたちに警告してから振り向いた。

 頭には一対のつの。青白い肌。鋭い牙と爪。魔力を帯びた鎧に、赤黒いマント。落ち着きのある身のこなし。

 ゼートリック系魔族でも、高位の者と見受けられる。おそらく第6騎士団が討伐する予定だった魔将だろう。

「よもや看破されるとは想像もしておりませんでした。大した実力です。お名前をお聞かせ願えませんか、少年?」

 俺は返事代わりに、圧縮魔力を速射した。

 眉間を貫通。倒れる間もなく塵となって消える。

「バカにするなよ。姿を見せろ、臆病者」

 俺が今討ったのは、魔力で作り出された分体だ。騎士団と同様に、魔力の糸で操られている。

「そうですかそうですか。その魔法、その性格。私の情報網に引っかかっておりますよ。アーネスト村に現れたという、少年勇者カインですね?」

 また同じ姿の分体が現れる。1体だけじゃない。まるで土から生えてくるように、次々と分体が立ち上がってくる。

 数十の分体をかき分けて、ひときわ強力な魔力を放つ個体が悠然と歩いてくる。本体はこいつか?

「俺がカインだったら、どうだと言うんだ?」

「我が魔王、ゼートリック4世の脅威となる者には死んでいただく。その血肉は、私がいただきますがね」

「やはりお前らは野蛮な獣だな。紳士のふりをしても、卑しい食欲が透けて見える」

「まだ幼い少年に言うのも酷ですが、遺言はそんな軽口でよろしいので?」

 一斉に分体が飛びかかってくる。

 俺はあえて前に踏み切った。襲いくる十数の爪や牙の間合いを見切り、その隙間に突っ込んだのだ。

 同時に魔力を溜めた右手を、魔将の本体に向ける。

魔炎刺槍ファイアランス!」

 青い炎が鋭利な刃となって魔将に激突する。

 魔将は魔力防壁を張って耐えたようだが、今の一撃で防壁は半壊している。

 周囲の分体が俺を取り囲もうとするが、意に介することはない。

魔衝風撃ブラストショック!」

 強烈な熱風を全周囲に展開。分体どもを吹き飛ばし、俺は魔将を再び補足する。

 魔将は分体を盾に、後退していく。俺は追う。

 分体を相手にするのは無駄だ。本体を潰せばすべて終わる。

 騎士どもを殺さず保護するのに、余分に魔力を消耗してしまったのだ。いちいち相手にしていては、こちらの魔力が尽きてしまう。

「おい、その数をひとりは無理だ! 俺たちも行くぞ!」

 魔将の出現と分体の数に動揺していたゾールたちだが、遅れて加勢してくれた。

 俺を狙う分体を遠くから撃ち抜いたり、注意を引き付けたりしてくれる。かなり動きやすくなる。だが……!

「来るな! 避難していろ! お前たちが傷ついたら俺は……」

「心配すんな! 誰も死なせねえよ! お前もな!」

 ゾールの実力は、分体を数体倒すのがやっとな程度だろう。他のみんなはそれ以下だ。まともに立ち向かっては勝ち目はない。

 その力と数の差を、連携で補う。ニルスが指示を出つつ援護射撃。ゾールや他の開拓民が前に出て、それらの能力をフラウが強化魔法で底上げする。傷ついたらすぐ治療もする。

「……そうだな。心配はいらない、か」

 長らく忘れていた。俺たちは、心を通じさせたときこそ一番強かった。

 俺は魔将本体を、単独で追いかける。

 背中は安心だ。けれど、寂しくもある。

 ゾールは言った。俺がゾールなら、独りのはずがない、と……。

 仲間が勝手についてくる、と……。

 正しいよ、過去の俺ゾールよ。今でもそう思う。

 でもな、それは仲間がいるならの話だ。

 俺の仲間は――今、お前の周りにいる家族は、俺にはもういないんだ。

 彼女らへの想いがあればこそ、もう失いたくなかったからこそ、強くなれた。

 けれどフラウたちのような、家族と呼べるほどの者は、もう手に入らなかったんだ。

 羨ましいよ。

 お前は俺の過去だけど、もうならなくていい。

 俺みたいな、最強でも孤独の魔王になんてならなくていい……!

「もう逃さん!」

 俺はいよいよ魔将を捕捉した。

閃爆魔砲ブラストキャノン!」

 超高熱の魔力の塊が、魔将を飲み込む。周囲の分体を巻き込みながら突き進み、はるか遠方で大爆発。

 生き残った分体は、すべてその場にバタバタと倒れていく。

「はあ、はあ……」

 渾身の一撃だ。手応えはあったが……。

「やった? カインがやったぞ! 本体を消し飛ばしたんだ!」

 ゾールが声を上げると、仲間たちも一緒になって歓声を上げる。

「いや待て! まだだ!」

 倒れた分体が一斉に立ち上がる。ゾールたちに向けて、全員が指を向ける。

 圧縮魔力の一斉掃射が来る!

 俺は限界突破オーバーリミットを発動させて、一瞬でゾールたちの前に出た。

 全力の魔力防壁で、すべての射撃を弾く。弾き続ける。掃射は、途切れない。

「おやおや、やはり彼らがあなたの弱点でしたか」

 再び強力な魔力を持つ個体が現れる。

 復活した、だと?

「そうか……。その不死身ぶり。お前があの、魔将『不死身のヴァウル』か!」

「ご明察」

 魔将ヴァウルは、不敵な笑みを浮かべていた。
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