最強のラスボスが逆行転生したら宿敵の美少女勇者の弟だった件

内田ヨシキ

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第4章 新しい過去、違う道の未来

第37話 もう大丈夫。お姉ちゃんだよ

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「うっ、ぐっ!」

 周囲からの一斉掃射は途切れない。いよいよ魔力防壁に亀裂が入った。数発が俺の肩や足を貫通する。

 魔力が切れかかっている。防壁を維持できない……!

 打開策を探しながら、俺は目の前の敵を睨み続ける。

 魔将『不死身のヴァウル』。こいつの情報は、ほとんどない。

 前世では俺たちドミナ系魔族と交戦しなかった。勇者アリアと戦った記録もない。他の人間との戦いで不死身ぶりだけは知られていたが、その原理は誰にも明かされていない。

 勇者アリアが南の魔王ゼートリック4世を倒した後は、消息不明となっていた。最後まで謎の魔将だったのだ。

「わ、わたしも手伝うわ!」

 思い立ったか、俺の隣にフラウが立った。魔力防壁を重ねてくれる。

 だが、こんなに頼りない防壁では……。

 魔将ヴァウルは、不気味に笑う。分体全員が同じ笑顔を浮かべる。

「ではトドメを刺して差し上げましょう」

 一斉掃射が止み、代わりにヴァウルが魔力を練り上げる。

 強烈な一撃が来る……!

 ダメだ。こんな防壁では防げない。

 その瞬間、俺はみんなを見た。

 フラウ。ニルス。ゾール。

 全員を連れての回避も不可能だ。

 防げなければ、犠牲は俺たちだけじゃ済まない。避難しているチコが。他の開拓民が、また殺されてしまう。

「うぉおおお!」

 最後の力を振り絞る。フラウの防壁を飲み込み、より強力なものへ作り変える。

「――死ね!」

 魔力が放たれた瞬間、激しい閃光と衝撃が俺たちを飲み込んだ。

 魔力防壁はまだ維持できている。だが、ヴァウルの魔力放出時間が長い。

「うぅう……!」

 腕から、血が噴出する。足からも。

 魔力の反動だ。もはや防壁を支えるだけの身体能力を維持できない。

 そして、防壁自体も……。

「がふっ、ぐっ、ふぅう!」

 口からも血が溢れてくる。歯を食いしばる。

 だが、ダメだ。もう耐えきれない。

 やはり、変えられないのか……?

 これが俺の――俺の家族の運命なのか?

 アリアの運命は変えてしまえたのに?

 死ぬはずだったレナや、他の者たちだって救えたのに?

 なのに俺の運命は――俺が一番変えたいと願う運命は、変えられないというのか!?

「ちく、しょう……!」

 無念の涙が流れ落ちる、その時だった。

「――てぇえええい!」

 聞き慣れた声と共に、影が舞い降りた。

 聖気をまとった剣が魔力を両断。その剣圧がヴァウル本体までも切り裂く。

 桃色がかったセミロングの金髪が、風に流れる。

 くりっとした宝石のような紫色の瞳が、俺を見つめている。

「ア、リ、ア……?」

「うん。もう大丈夫。お姉ちゃんだよ」

 目の前の光景が信じられない。

 だって、仲間なんかじゃないはずなのに。

 いずれ宿敵になるからと、捨ててきたはずなのに……。

「なんで、ついてきたんだ……?」

「なんでって、当たり前でしょ? 弟が思い詰めてたのに、放っておけるお姉ちゃんなんかいないよ!」

 ああ……そうか。本当に、勝手についてきてしまうんだな……。

 過去の俺ゾールの言うように、勝手に。

 この俺の、今の家族も……!

「それにね、わたし怒ってるんだからね! 急にいなくなって心配させるし、それに、こういうことならわたしたちだって手伝うのに!」

「でも俺は」

「言い訳しないの! 悪いことしたら、なんて言うの?」

「ご……ごめんなさい」

「うん、許す!」

 するとアリアは太陽のような微笑みを見せると、俺を優しく抱き寄せた。

 癒やしの力を発動させてくれる。

「ひとりでよく頑張ったね。偉いよ、偉い……。でも、もう平気。ひとりじゃないよ」

 その声が、その温もりが、あらゆる痛みを取り払っていく。

 諦めも、絶望も、不安も、孤独感も。

 熱いものが目から溢れて止まらない。

 やがて俺が回復しきると、アリアは凛々しい表情でヴァウルたちを睨みつけた。

「わたしの大事なカインを泣かせるなんて、許さないんだから!」
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