最強のラスボスが逆行転生したら宿敵の美少女勇者の弟だった件

内田ヨシキ

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第4章 新しい過去、違う道の未来

第39話 お姉ちゃんには、敵わないな……

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「行くぞ!」

 合図とともに、俺たちは戦闘を再開した。

 体が軽い。自重を感じないほどに力がみなぎっている。魔力なしで、敵を殴り倒せるほどに。

 身体強化能力に目覚めたのか?

 うぅん、違うと思う。

「!?」

 声というより思考が流れ込んできて、俺はアリアに目を向けた。アリアも同じように目を丸くしている。

 その一瞬が隙となり、俺は敵の接近を許してしまった。死角からの一撃を受け、膝をついてしまう。

 危ない!

 また思考が流れ込んだかと思うと、俺にトドメを刺そうとした敵が魔力で撃ち抜かれていた。

 アリアの指先から発射された、圧縮魔力だ。

 アリアの驚きが伝わってくる。そして俺の納得も、アリアに流れているだろう。

 この能力は『血の共鳴レゾナンス・フィール』だ。

 学園の図書館で読んだ、過去の勇者たちの覚醒能力の記録。その中にあった、血の繋がった勇者同士でのみ発動する力。

 互いの能力を共有できる。

 俺はアリアの身体能力と技を。アリアは俺の魔力と魔法を。

 そしてなにを考え、なにを感じているのかもわかる。

 痛みも、苦しみも、勇気も、闘志も!

「レナ、グレン! 前は俺たちに任せろ!」

 もはや俺とアリアには、目配せさえ必要ない。一緒に飛び出していく。

 ふたりが、ひとつになったような感覚だ。

 ふたりの視界を共有して互いの死角を補い、戦場を掌握。豊富な戦闘経験からくる俺の判断が、俺の魔法とアリアの技を最適化して敵にぶつけていく。

 ヴァウルどもが分体を何体繰り出してこようとも、斬り、蹴り、撃ち、砕く。

 分体の復活速度より、こちらが倒すほうが早い。

「ぐぅう、強い……! しかし、どんなに凄まじい連携を見せたとしても、所詮はふたり! 数十人の私に勝てるわけがありません!」

 焦りからかヴァウルは、レナやグレン、ゾールたちに当てていた戦力を集結させた。俺とアリアを物量で押し潰すつもりだ。

 確かに、この数には太刀打ちできない。

 でもチャンスだね?

 そうだ!

「グレンくん、下がって!」

「レナ! ゾールたちと一緒に防壁を張れ!」

 俺たちの指示を受け、ふたりは後退する。

「俺たちはこの瞬間を――」

「――待ってたんだよ!」

 俺とアリアは身を寄せ合い、ふたり分の魔力を集中して練り上げる。

「まとめて消えてなくなれ!」

二重ダブル!」

閃爆ブラスト!」

「「――魔砲《キャノン》!!」」

 同時に放たれたふたつの魔力波動が、交差して渦を巻く。

 目の前の分体たちを刹那のうちに飲み込んで突き進み、集団の中心で巨大な爆発を巻き起こす。

 巨大に膨れ上がっていく高熱の閃光が、集結したヴァウルたちをすべて焼き尽くす。

 火傷するほどの爆風が吹き荒ぶ中、俺たちは見た。

 生き残りが、ふたり。魔力防壁を張り、かろうじて消滅を阻止した者がいる。

「はっ、ははは……っ。まさ、か。ここまで追い詰められようとは……しかし、あなたたちの魔力はもう無い! 私の勝ちだ!」

 再び分体が生み出されていく。だが、そんなものに俺たちは目もくれない。

 もう倒すべき本体は見えたのだ。

 俺たちの狙いは、今の一撃を耐えられるやつを見つけることだったのだ。

 そして俺たちの力は、魔力だけではない。

「グレン! 剣を貸してくれ!」

「おぉ! 使え!」

 呼びかけに応じ、躊躇いなく剣が投擲される。それを空中でキャッチ。そのまま本体の一方へ向けて、斬りかかる。

 アリアも同時に、もう一方の本体へ飛びかかっていた。

 それぞれの剣が、燃え上がるように聖気をまとう。

ツイン!」

聖光ブライト!」

「「破斬スラッシュ!!」」

 魔将ヴァウルの肩口から、鋭く斜めに斬りつけた。深く食い込んだ瞬間、剣の聖気が爆発。

 ヴァウルは内側から爆散した。

 バラバラに弾けた肉体が塵となって消えていく中、首だけがごろりと地面に転がる。

「バカ、な……数十人の私が、たった、ふたり、に――」

 信じられないといった表情のまま、その首も塵となって風に流される。分体も、次々に消滅していった。

「……バカめ。お前は、ずっと独りだった。そんなのが、ひとつになった俺たちに、勝てるものか」

 そうだろう?

 アリアに目を向けると、笑顔で大きく頷いてくれる。

 戦いの終わりを実感したからか、俺とアリアの金色の聖気は消える。ふたりの共有も切れる。

 けれど、そんな能力などなくとも、俺には今アリアが感じていることも、次にすることもわかる。

「やった……! やったよ、カイン! わたしたち勝てたよぉお!」

 ほら。こうやって大げさに喜んで、俺に抱きついてくるのだ。

「ふん、魔将ごときを討ち取ったくらいで喜びすぎだぞ。でも……まあ今日は、一緒に喜んでやってもいい……」

 そして、きっとアリアも、俺がどう感じているか知っている。

「はいはい。カインも嬉しいんだよね、お姉ちゃん、わかってるよ~!」

 ほらな。まったく……。

 お姉ちゃんアリアには、敵わないな……。
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