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第4章 新しい過去、違う道の未来
第41話 さらばだな、新しい過去。あばよ、違う道の未来
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「ここで一緒にやっていかねえか? ここは、お前の家でもあるはずだ」
ゾールの提案は魅力的だ。だが……。
「ありがたいが、断るよ。俺の家は、もうここじゃない」
「でもよ……」
「これを食べてみろ」
なおも食い下がるゾールに、俺は独り占めするつもりだった焼き菓子を半分分けてやる。
「いやまあ、めちゃくちゃ美味いけどよ……」
「そうだろう? アリアの特製だ。フラウじゃこうはいかない。俺は……この味が好きなんだ」
パーティを楽しむアリアたちを見つめる。
ゾールは小さく諦めの息をつくと、微笑んだ。
「……そうか。そのほうがいいのかもな。お前は、もう俺じゃねえんだもんな。なにせ俺は、そんなシスコンじゃねえし」
「誰がシスコンだ。勘違いするなよ。あいつは、本来の歴史では魔王ゾールの宿敵になるんだ。俺にとっては復讐相手だ。相応しい強さを身につけるまで、面倒を見てやってるだけなんだよ」
ゾールはにやにやと笑う。
「へー、やっぱり、もう俺じゃねえよ。俺はツンデレでもねえからな」
「人のことを言う前に、お前こそ、そろそろフラウに想いを伝えるべきだ。フラウはお前を弟扱いしてるからな、強引に行かないと異性として見てもらえないぞ」
「なっ、お前! 知ったふうなこと言いやがって」
「知ってるんだよ。俺が自分の気持ちに素直になったときには、もう彼女はいなかった」
「……そうか、そうだったな……」
「後悔しない未来を見せてみろよ。ま、普通に振られる未来もあり得るがな」
「おい」
「それもいい。永遠に失うよりはマシさ」
「……そうだな。ありがとよ、守ってくれて」
「運命の変わったこの先のことは、俺には未知数だ。またなにかあっても、助けてやることはできないかもしれない。大丈夫か?」
「ああ……今回のことで身に沁みたからな。強くなるぜ、お前ほどには無理でも。それでこの地に国を作って、みんなを守ってやるさ」
「ああ、俺にもできたんだ。家族のいるお前なら、俺以上の……最強ではなくても、みんなに愛される最高の魔王になれるさ」
「他のみんなは違っても、俺だけは、お前も家族の一員だと思ってるからな。なにかあったら言えよ。今度は俺が助けてやる」
返事をしようとすると、背後から大声が聞こえた。
「あー! カイン、なんでそんな離れたところにいるの? こっちおいでよー! グレンくんが焼いたお肉、美味しいよー!」
振り向くとアリアが楽しそうに手を振っている。
そして今度は、別の方向からフラウが声を上げる。
「ゾール、こっちに来て! ちょっと相談があるのー!」
俺たちは顔を見合わせる。
「呼ばれてるな」
「ああ、もう行くか」
互いに笑みを浮かべる。きっと似ている顔。
「さらばだな、新しい過去。いずれ最高の魔王になるゾールよ」
「あばよ、違う道の未来。優しい少年勇者のカイン・アーネスト」
俺たちはそれぞれ別の、あるべき場所へ戻っていった。
◇
翌日、俺たちは第6騎士団と共に開拓村を出立した。
馬に乗って歩いていく途中、俺は思い立ってアリアたちに声をかけた。
「まだちゃんと言っていなかったな。みんな、助けに来てくれて……ありがとう」
アリアは朗らかに笑う。
「当たり前だよ」
「ですよね、カインくんだもん」
「むしろ、こんな殊勝に礼を言われるとは思わなかったな」
俺はまずグレンに馬を寄せる。
「悪かったな、グレン。お前は自分の家を嫌っていただろうに、その家を頼らせ、封印してた剣術まで使わせてしまった」
「うお、今度は謝られた? マジでどうしたカイン。らしくねえぞ?」
「俺だってするべきときは礼も謝罪もする。素直に受け取れよ」
「つってもな……正直、お互い様なんだよなぁ。お前、オレがどんだけお前に感謝してるか、知らないだろ」
「……特訓してやったことか?」
「いや、お前が――お前らが、オレをラングラン家の子息としてじゃなくて、ただのグレンとして扱ってくれたことさ。本当に嬉しかったんだぜ、オレ」
「そんなやつは、俺たち以外にもいただろう。べつに俺が最初じゃない」
「気づかせてくれたのはお前だろ。だから、ラングラン家の力を使うのだって惜しくなくなった。そんなことしてもお前らは、オレをちゃんとただのグレンとして見てくれる。そうだろ?」
グレンは拳をこちらに突き出してきた。
「だからさ、これからもよろしくな、親友」
「恥ずかしいこと言うな」
言いつつも、俺はその拳に、自分の拳を合わせてやった。
するとレナが、グレンとは反対側の方向から馬を寄せてきた。
「こうしてると、お屋敷で乗馬の練習してたの思い出すね」
「ああ、レナは馬に乗るのにも苦労してたが、すっかり上手になったな」
「うん。馬も、魔法も、頑張ってこれたのはカインくんのお陰。いつも優しく教えてくれてたから……でも」
レナは少しだけ上目遣いになる。
「やっぱり、私にばっかり優しいのは寂しいよ? たまには、アリアさんやグレンさんにしてるみたいにツンツンして欲しいな」
「あんなのがいいのか? 自分で言うのもなんだが、あまりいい態度じゃないと思うが」
「だってすっごく楽しそうなんだもん。本当に、仲が良いんだなぁって」
レナの紅い瞳がまっすぐに俺を射抜く。
「私も、カインくんともっともっと仲良くなりたいから……」
「そーだねー、それはいいと思うよー」
俺とレナの間に、アリアの馬が割り込んできた。
なぜか目が据わっている。
「わ、お姉さん……邪魔しに来たの?」
「邪魔なんかしないよー。仲良くなるのはいいことだもん」
にっこりと笑顔になる。でも気のせいか? 目が笑ってないように見える。
「まー、カインと一番仲良しなのは私だけどー」
レナは、ぷくー、と頬を膨らませた。
「今はそうでも、その先はわかりませんもん」
「おいおい。知らねえのか、男の友情に勝るものはねえんだぞ」
そこにグレンまで張り合ってきて、わいわいと騒がしくなる。
やれやれ……。
「まったく。お前たちといると退屈しないな」
俺は呆れつつも、心地の良い騒がしさに身を任せるのだった。
ゾールの提案は魅力的だ。だが……。
「ありがたいが、断るよ。俺の家は、もうここじゃない」
「でもよ……」
「これを食べてみろ」
なおも食い下がるゾールに、俺は独り占めするつもりだった焼き菓子を半分分けてやる。
「いやまあ、めちゃくちゃ美味いけどよ……」
「そうだろう? アリアの特製だ。フラウじゃこうはいかない。俺は……この味が好きなんだ」
パーティを楽しむアリアたちを見つめる。
ゾールは小さく諦めの息をつくと、微笑んだ。
「……そうか。そのほうがいいのかもな。お前は、もう俺じゃねえんだもんな。なにせ俺は、そんなシスコンじゃねえし」
「誰がシスコンだ。勘違いするなよ。あいつは、本来の歴史では魔王ゾールの宿敵になるんだ。俺にとっては復讐相手だ。相応しい強さを身につけるまで、面倒を見てやってるだけなんだよ」
ゾールはにやにやと笑う。
「へー、やっぱり、もう俺じゃねえよ。俺はツンデレでもねえからな」
「人のことを言う前に、お前こそ、そろそろフラウに想いを伝えるべきだ。フラウはお前を弟扱いしてるからな、強引に行かないと異性として見てもらえないぞ」
「なっ、お前! 知ったふうなこと言いやがって」
「知ってるんだよ。俺が自分の気持ちに素直になったときには、もう彼女はいなかった」
「……そうか、そうだったな……」
「後悔しない未来を見せてみろよ。ま、普通に振られる未来もあり得るがな」
「おい」
「それもいい。永遠に失うよりはマシさ」
「……そうだな。ありがとよ、守ってくれて」
「運命の変わったこの先のことは、俺には未知数だ。またなにかあっても、助けてやることはできないかもしれない。大丈夫か?」
「ああ……今回のことで身に沁みたからな。強くなるぜ、お前ほどには無理でも。それでこの地に国を作って、みんなを守ってやるさ」
「ああ、俺にもできたんだ。家族のいるお前なら、俺以上の……最強ではなくても、みんなに愛される最高の魔王になれるさ」
「他のみんなは違っても、俺だけは、お前も家族の一員だと思ってるからな。なにかあったら言えよ。今度は俺が助けてやる」
返事をしようとすると、背後から大声が聞こえた。
「あー! カイン、なんでそんな離れたところにいるの? こっちおいでよー! グレンくんが焼いたお肉、美味しいよー!」
振り向くとアリアが楽しそうに手を振っている。
そして今度は、別の方向からフラウが声を上げる。
「ゾール、こっちに来て! ちょっと相談があるのー!」
俺たちは顔を見合わせる。
「呼ばれてるな」
「ああ、もう行くか」
互いに笑みを浮かべる。きっと似ている顔。
「さらばだな、新しい過去。いずれ最高の魔王になるゾールよ」
「あばよ、違う道の未来。優しい少年勇者のカイン・アーネスト」
俺たちはそれぞれ別の、あるべき場所へ戻っていった。
◇
翌日、俺たちは第6騎士団と共に開拓村を出立した。
馬に乗って歩いていく途中、俺は思い立ってアリアたちに声をかけた。
「まだちゃんと言っていなかったな。みんな、助けに来てくれて……ありがとう」
アリアは朗らかに笑う。
「当たり前だよ」
「ですよね、カインくんだもん」
「むしろ、こんな殊勝に礼を言われるとは思わなかったな」
俺はまずグレンに馬を寄せる。
「悪かったな、グレン。お前は自分の家を嫌っていただろうに、その家を頼らせ、封印してた剣術まで使わせてしまった」
「うお、今度は謝られた? マジでどうしたカイン。らしくねえぞ?」
「俺だってするべきときは礼も謝罪もする。素直に受け取れよ」
「つってもな……正直、お互い様なんだよなぁ。お前、オレがどんだけお前に感謝してるか、知らないだろ」
「……特訓してやったことか?」
「いや、お前が――お前らが、オレをラングラン家の子息としてじゃなくて、ただのグレンとして扱ってくれたことさ。本当に嬉しかったんだぜ、オレ」
「そんなやつは、俺たち以外にもいただろう。べつに俺が最初じゃない」
「気づかせてくれたのはお前だろ。だから、ラングラン家の力を使うのだって惜しくなくなった。そんなことしてもお前らは、オレをちゃんとただのグレンとして見てくれる。そうだろ?」
グレンは拳をこちらに突き出してきた。
「だからさ、これからもよろしくな、親友」
「恥ずかしいこと言うな」
言いつつも、俺はその拳に、自分の拳を合わせてやった。
するとレナが、グレンとは反対側の方向から馬を寄せてきた。
「こうしてると、お屋敷で乗馬の練習してたの思い出すね」
「ああ、レナは馬に乗るのにも苦労してたが、すっかり上手になったな」
「うん。馬も、魔法も、頑張ってこれたのはカインくんのお陰。いつも優しく教えてくれてたから……でも」
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「やっぱり、私にばっかり優しいのは寂しいよ? たまには、アリアさんやグレンさんにしてるみたいにツンツンして欲しいな」
「あんなのがいいのか? 自分で言うのもなんだが、あまりいい態度じゃないと思うが」
「だってすっごく楽しそうなんだもん。本当に、仲が良いんだなぁって」
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にっこりと笑顔になる。でも気のせいか? 目が笑ってないように見える。
「まー、カインと一番仲良しなのは私だけどー」
レナは、ぷくー、と頬を膨らませた。
「今はそうでも、その先はわかりませんもん」
「おいおい。知らねえのか、男の友情に勝るものはねえんだぞ」
そこにグレンまで張り合ってきて、わいわいと騒がしくなる。
やれやれ……。
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俺は呆れつつも、心地の良い騒がしさに身を任せるのだった。
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