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15話
しおりを挟む「———わたしが体調を崩してる間に随分と楽しいことになってるじゃないの。私も是非ともその現場を間近で見ていたかったものだわ」
セレス様と話した翌日、私はこれまでの経緯をルーチェに話すためにメルティス侯爵邸を訪れていた。
それから一通り話し終えると同時に不満と歓喜の入り交じった表情でそう告げるルーチェをみて、私は露骨に顔を顰めた。
「なんでそんなに嬉しそうな顔してるのよ」
「だってこんな機会滅多にないじゃない!修羅場よ修羅場!!素敵!しかも相手はあのフォルエスタ男爵令嬢なのよ!?数々の男をたらしこんでるあの娘なのよ!?これを楽しまずにして何を楽しむというの!」
人が嫌そうな顔をしているにも関わらず胸の前で手を組みながら恍惚とした表情でそう叫んだルーチェを見て、私はついつい溜息が零れ落ちてしまう。
ルクレティア・メルティス侯爵令嬢。
メルティス侯爵家の一人娘であり、宰相であるメルティス侯爵現当主が目に入れても痛くないほどに溺愛している愛娘。
しかし本人が極度の病弱体質であり中々社交界に姿を表さない深窓のご令嬢。彼女の髪の色も瞳の色もどんな性格をしているのかも、詳しく知っている人物は殆どいない。
そんな、あまりにも謎に包まれているメルティス侯爵令嬢について、社交界では数々の噂が飛び交っていた。
そんな中でも一番よく聞く彼女のイメージは、か弱く大人しく、そして心優しいご令嬢ではないかというものだった。
しかし、彼女を知っている者からすれば見当違いも甚だしいことだと思うことであろう。
現に、今こうして目の前で人の不幸話を笑っている時点で、少なくとも心優しい令嬢などでは無いことは明らかだ。
「……まったく、なんでこんな子が大人しい令嬢だと思われてるの。真逆のイメージを抱いている方達に本当のルーチェを見せてあげたいものだわ」
「レティったら酷いっ。私は大人しくて心優しいのよ?病弱体質と相俟ってか弱くて清楚そうな女の子なのよ!?」
「自分で言わないの。というか後半部分自分で付け足してるじゃない!」
大袈裟に嘆くルーチェを、私は胡乱げな視線で見つめる。
なにが大人しい令嬢だ。大人しさとは真逆に値する位置にいる癖に。
しかも話が大幅に脱線しまくっている気がする。いや、気がするではなく既に脱線しまくっている。
私は未だに嘆くふりをするルーチェを軽く睨みながら喉を潤すために再びカップに口付けた。
「……で、いつになったらその嘘くさい演技が終わるの?いい加減話を戻したいのだけど」
こくりと一口分の紅茶を飲み干してから口を開けば、ようやくルーチェは顔を覆っていた手を膝へと下ろして私の方へと向き直る。
その口元に薄らと笑みが浮かべられていた。
「そうね、とても重要で大事な話をしていたのだもの。そろそろ話を戻しましょうか」
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