辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

第7章：未来への学びと絆

第160話「研究の深化と試行錯誤の日々」

ハロルドたち上級生との出会いから数日が経ち、エルヴィンたちはさらに研究に没頭していた。学院の実験室では、各グループがそれぞれの課題に取り組み、時折熱心な議論が飛び交う。

エルヴィンたちのテーマは「魔力分岐システムの高効率化」。この研究を通じて、複数の装置に魔力を安定的に供給しながら、それぞれ独立した動作を可能にするシステムの構築を目指していた。

その日の午前、エルヴィンたちは魔法陣の動作テストを繰り返していた。実験用の装置を台座にセットし、魔力結晶を組み込む。エルヴィンが慎重にスイッチを入れると、回路に魔力が流れ始め、三つのランプがそれぞれ異なる色で点灯した。

「順調そうに見えるけど……なんか、動きが不安定だな。」
レオンがランプを眺めながら眉をひそめる。

「確かに。魔力の流れがどこかで滞っているようですわね。」
カトリーヌも魔力メーターを確認しながら頷いた。

エルヴィンは装置に近づき、魔力の流れを測定するための魔道具を取り出した。装置の接続部分を丹念にチェックしながら、原因を探っていく。

「ここだ……魔力の分岐点で、一部の流れが偏ってる。」
エルヴィンが小さなポイントを指差しながら言った。

「うーん、その部分の回路、昨日修正したばっかりだろ？何が問題なんだ？」
レオンが首をかしげる。

「多分、結晶の配置が少しだけズレてるのかもしれない。微妙な誤差が魔力の流れを乱しているんだ。」
エルヴィンが推測を述べると、リヴィアが静かに手を挙げた。

「私が……結晶をもう一度調整します。安定性を高めるために、魔力を均等に分散させる方法を試してみます。」
彼女は控えめながらも、自信のある表情で装置に近づいた。

「お願いするよ、リヴィア。」
エルヴィンが彼女に道を譲ると、リヴィアは慎重な手つきで魔力結晶を一つずつ調整していった。

リヴィアの調整が終わり、再びテストを行うことになった。エルヴィンが装置のスイッチを入れると、三つのランプが安定して点灯し、それぞれの動作が同期していることが確認できた。

「やった！これで問題は解決だな。」
レオンが嬉しそうに拳を掲げた。

「ええ、でもまだ改善の余地がありますわ。この動作をさらに効率的にするには、魔力回路の配置そのものを見直す必要があります。」
カトリーヌが冷静に指摘する。

「そうだね。でも、今日はここまで順調に進んで良かった。リヴィア、ありがとう。」
エルヴィンがリヴィアに笑顔で感謝を伝えると、彼女は少し照れたように微笑んだ。

「いえ、エルヴィン様の設計がしっかりしていたからです……。」

テストが一段落つき、エルヴィンたちは実験室を離れて学院のカフェテリアで昼食を取ることにした。昼のカフェテリアは学生たちで賑わい、活気ある声が飛び交っている。

エルヴィンはトレーを持って席に座ると、スープにスプーンを入れながら静かに考え込んでいた。

「おいエルヴィン、また考え事か？飯くらい落ち着いて食えよ。」
レオンがパンをかじりながら笑う。

「ごめん、ついさっきの改良案を頭の中で整理してたんだ。」
エルヴィンが少し照れくさそうに答える。

「もう、エルヴィン様ったら。でもその集中力が私たちを引っ張ってくださるのですもの、感謝しなくてはですわね。」
カトリーヌが微笑む。

「でも……たまには休んだ方がいいかもしれません。」
リヴィアがそっと付け加えると、エルヴィンは笑いながら頷いた。

「そうだね。せっかくの昼休みだし、少しのんびりしようか。」

昼食を終えた頃、カフェテリアの入り口に見覚えのある顔が現れた。ハロルドとその仲間たちだ。彼らも昼食を取るためにやって来たようで、エルヴィンたちを見つけると軽く手を振った。

「やあ、君たちもここで昼休みか。」
ハロルドがテーブルに近づいてくる。

「ハロルドさんたちも、研究の進み具合はどうですか？」
エルヴィンが尋ねると、ハロルドは笑みを浮かべながら答えた。

「順調だよ。まあ、手こずることも多いけどな。でも、お互い競い合う仲間がいるとやっぱり刺激になるな。」

「それは同感ですわ。ライバルがいると自然と頑張れますもの。」
カトリーヌが微笑みながら同意する。

「お互い頑張ろうぜ。じゃあ、またな。」
ハロルドが手を振り、カフェテリアを後にする。

その日の夕方、エルヴィンたちは再び実験室へ戻り、次なる改良案の準備を進めていた。ハロルドたちとのライバル関係が、彼らの背中をさらに押しているのは明らかだった。

「僕たちの研究は、まだまだこれからだ。」
エルヴィンがノートを広げながら呟く。

「その意気だ、エルヴィン！」
レオンが拳を掲げる。

「私たちも全力でサポートしますわ。」
カトリーヌが微笑み、リヴィアも静かに頷いた。

新たな発見と挑戦に満ちた日々は、まだまだ続いていく――。