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村での日々
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ちびどらが産まれてからも私はいつもと変わらない生活を送っていた。
朝から畑に行き、それが終わるとゆったりとした日々を過ごす。すると、ちびどらが急に吠え出してくる。
「だぁぁぁ。もう、なんで錬金が出来るようになったのにこんな生活をしてるんだ? もっと色んなところに旅に出たりとかあるだろう?」
「えっ? なんでそんなことするの?」
私は首を傾げる。こう平穏に過ごせること。それが一番の幸せなのに……。
「君にもしたいことがあるだろう? おいらの力はその助けになるはずだよ!」
「やりたいこと……」
うーん、特に思いつかないし無理に出る必要はないかな。
「特にないかな?」
「だぁぁぁぁぁ……」
ちびどらは自分の頭を掻きむしっていた。それを横目に私はのんびりと日向ぼっこをしていた。
◇
「それで、ミーシャはこの錬金本のページを増やす気は、ないの?」
私の頭の上で半分とろけた状態で聞いてくる。ちびどらもだいぶこの雰囲気に慣れてきたようで、ゆったりと寛いでくれている。
「ページ? どうやったら増えるの?」
「それは、素材が揃ったら……だろうね」
ちびどらも詳しいことは知らないのか、首を傾げながら言ってくる。
「それじゃあ、色々と調べてみる?」
私はその辺に生えている草を千切って、ちびどらの目の前に持ってくる。緑色の草。ただの雑草だから特に使い道はないし、何かに使えるのならいいかもしれない。
「さすがに雑草は……、素材じゃないものはさすがに登録されないぞ」
あきれ顔で見るちびどら。でも、錬金本の方は新しい描写が増えていた。
【ポーション(レベル1)】
必要素材:水とハレバレ草
この草は傷を治すポーションが出来るらしい。たまに来る行商の方から買おうとしたら鉄銭数十枚はかかってしまうものだ。これを買おうとしたら沢山の野菜を売らないといけない。
そんなものがこんなに簡単に出来てしまうのだろうか?
私は疑いながらも以前はちゃんと出来たのでもう1度前と同じように試してみる。
ちびどらに水とさっき抜いた雑草――ハレバレ草というみたいだけど、それを渡す。
そして、錬金本のポーションのページを開きながらちびどらに頼む。
「お願い」
すると、以前見た幻想的な……素材同士が渦を巻き合わさる光景が目の前で行われ、結果1本の小瓶が出てきた。
瓶の中には薄い水色の液体。
前に見たポーションと同じ色だけど、本物なのかな?
私には調べる方法がなかった。
◇
私は行商のおじさんがやってきた時に出来たポーションを見てもらった。
「これ、お嬢ちゃんが作ったのかい?」
「はい、そうですよ」
「本当はおいらが……モゴモゴ」
ちびどらが喋りだしそうだったので口を塞いでおく。
さすがに見た目トカゲさんのちびどらが喋りだしたらビックリするもんね。ドラゴンなんて信じてもらえないだろうし。
おじさんは色々な角度から薬を眺めていた。そして、コクリと頷く。
「間違いない。これはポーションだね。レベル1で回復力は1番弱いものだけど。これなら鉄銭10枚で買い取らせてもらうよ。ただ、私もそんなに量はいらないから大量には買い取れないけどね」
おじさんは苦笑いを浮かべていた。
でも、これだけで鉄銭10枚……。
多分、今の私の生活だと、これを5本も売れば一月ほどは生活出来る気がする。
私はその金額を聞いて少し心が揺らいでしまった。
これ、もっとたくさん売れるところに行けば今よりいい生活ができるんじゃないかな?
◇
薬を売ってから数日後、私はいきなり村長さんに呼び出された。
「ミーシャ、どうして呼ばれたのかわかるかね?」
白い髪の老人が私の顔をジッと見つめてくる。
この光景は昔、悪いことをして怒られた時に似てるかも……。
でも、私何も悪いことをしてないし、どうして?
「わ、わかりません。どうしてですか?」
ガチガチに緊張しながら村長さんの次の言葉を待つ。
「実は、ミーシャの作ったポーションのことじゃ。それをみた貴族様が是非お前さんに会いたいと言ってきているみたいなんじゃ? ただ、今まで1度もそんな事をした事ないミーシャが、何故急にポーションを作る事が出来たのか不思議に思ってな」
村長さんが睨むようにジッと私を見てくる。私は話していい事なのかとちびどらのほうに視線を送る。すると、ちびどらはコクリと頷いてくれる。
どうやら話しても大丈夫らしい。あまり人に言いふらすべきどう事ではないだろうけど、昔から私を見ていてくれた村長さんなら信用できる。
「実は……」
私は村長さんにちびどらを拾った後の事、不思議な錬金を使えるようになった事を説明した。
「なるほど……。それでこの話は?」
「村長さん以外にはしていないです」
「その方が良いじゃろう。それで、貴族様に呼ばれた事じゃが……」
一瞬だけ笑みを浮かべた後、村長さんは再び厳しい目つきに変わる。
「ミーシャの事を考えると行った方が良いじゃろうな」
「でも、私があの家が……」
「いや、この村にいてはお前さんがせっかく得たその錬金術を活用できないじゃろ。もっと大きな町に行った方がいい」
村長さんがそう言うとちびどらが「いいいぞ! もっと言ってやれ! とはやり立ててくる。
それを軽く小突いてから改めて考えてみる。
「うーん、やっぱりそうなのかな? でもいきなり行っても普段の生活が……」
「それは気にする必要がないじゃろう。仮にも貴族様が自分で呼び出したんじゃ。最低限の生活くらい保障してくれるはずじゃ」
少し悩んでいた私に決め手となる言葉をくれる村長さん。
うん、そうだよね。もしだめだとしてもまたこの村に戻ってくればいいわけだし――。
私が小さく頷くと村長は笑顔を浮かべて私の頭を撫でてくれた。
◇
私は家に戻ってきて早速出発の準備を始める。
必要な服や最低限の旅の支度。保存の利く食べ物に安眠用のまくらと手作りのぬいぐるみ……。
とにかくいりそうなものは全て鞄に詰め込むと、最後にちびどらを連れて雑草がたくさん生えているところにくる。
念のためにポーションを作る素材であるハレバレ草……と思われる草を大量に採取しておく。
これでお金に困ったときには足しにすることが出来るよね。
ついでにそのままだと騒がしいちびどらもカバンの中に放り込む。
「ちょ、ちょっと、ミーシャ……。むり、さすがにおいら、はいれな――むぎゅっ」
無理矢理押し込んだあと、私はそのカバンを背中に背負う。すると、ちびどらがそこからひょっこりと顔を出す。
「ふぅ……、苦しかった……」
顔だけ出せたちびどらは汗を拭っていた。
「もう、他の人に見つかったらだめだからね!」
ちびどらには注意だけ促しておく。
そして、私はあの錬金本を手に持つとこの家から飛び出した。
朝から畑に行き、それが終わるとゆったりとした日々を過ごす。すると、ちびどらが急に吠え出してくる。
「だぁぁぁ。もう、なんで錬金が出来るようになったのにこんな生活をしてるんだ? もっと色んなところに旅に出たりとかあるだろう?」
「えっ? なんでそんなことするの?」
私は首を傾げる。こう平穏に過ごせること。それが一番の幸せなのに……。
「君にもしたいことがあるだろう? おいらの力はその助けになるはずだよ!」
「やりたいこと……」
うーん、特に思いつかないし無理に出る必要はないかな。
「特にないかな?」
「だぁぁぁぁぁ……」
ちびどらは自分の頭を掻きむしっていた。それを横目に私はのんびりと日向ぼっこをしていた。
◇
「それで、ミーシャはこの錬金本のページを増やす気は、ないの?」
私の頭の上で半分とろけた状態で聞いてくる。ちびどらもだいぶこの雰囲気に慣れてきたようで、ゆったりと寛いでくれている。
「ページ? どうやったら増えるの?」
「それは、素材が揃ったら……だろうね」
ちびどらも詳しいことは知らないのか、首を傾げながら言ってくる。
「それじゃあ、色々と調べてみる?」
私はその辺に生えている草を千切って、ちびどらの目の前に持ってくる。緑色の草。ただの雑草だから特に使い道はないし、何かに使えるのならいいかもしれない。
「さすがに雑草は……、素材じゃないものはさすがに登録されないぞ」
あきれ顔で見るちびどら。でも、錬金本の方は新しい描写が増えていた。
【ポーション(レベル1)】
必要素材:水とハレバレ草
この草は傷を治すポーションが出来るらしい。たまに来る行商の方から買おうとしたら鉄銭数十枚はかかってしまうものだ。これを買おうとしたら沢山の野菜を売らないといけない。
そんなものがこんなに簡単に出来てしまうのだろうか?
私は疑いながらも以前はちゃんと出来たのでもう1度前と同じように試してみる。
ちびどらに水とさっき抜いた雑草――ハレバレ草というみたいだけど、それを渡す。
そして、錬金本のポーションのページを開きながらちびどらに頼む。
「お願い」
すると、以前見た幻想的な……素材同士が渦を巻き合わさる光景が目の前で行われ、結果1本の小瓶が出てきた。
瓶の中には薄い水色の液体。
前に見たポーションと同じ色だけど、本物なのかな?
私には調べる方法がなかった。
◇
私は行商のおじさんがやってきた時に出来たポーションを見てもらった。
「これ、お嬢ちゃんが作ったのかい?」
「はい、そうですよ」
「本当はおいらが……モゴモゴ」
ちびどらが喋りだしそうだったので口を塞いでおく。
さすがに見た目トカゲさんのちびどらが喋りだしたらビックリするもんね。ドラゴンなんて信じてもらえないだろうし。
おじさんは色々な角度から薬を眺めていた。そして、コクリと頷く。
「間違いない。これはポーションだね。レベル1で回復力は1番弱いものだけど。これなら鉄銭10枚で買い取らせてもらうよ。ただ、私もそんなに量はいらないから大量には買い取れないけどね」
おじさんは苦笑いを浮かべていた。
でも、これだけで鉄銭10枚……。
多分、今の私の生活だと、これを5本も売れば一月ほどは生活出来る気がする。
私はその金額を聞いて少し心が揺らいでしまった。
これ、もっとたくさん売れるところに行けば今よりいい生活ができるんじゃないかな?
◇
薬を売ってから数日後、私はいきなり村長さんに呼び出された。
「ミーシャ、どうして呼ばれたのかわかるかね?」
白い髪の老人が私の顔をジッと見つめてくる。
この光景は昔、悪いことをして怒られた時に似てるかも……。
でも、私何も悪いことをしてないし、どうして?
「わ、わかりません。どうしてですか?」
ガチガチに緊張しながら村長さんの次の言葉を待つ。
「実は、ミーシャの作ったポーションのことじゃ。それをみた貴族様が是非お前さんに会いたいと言ってきているみたいなんじゃ? ただ、今まで1度もそんな事をした事ないミーシャが、何故急にポーションを作る事が出来たのか不思議に思ってな」
村長さんが睨むようにジッと私を見てくる。私は話していい事なのかとちびどらのほうに視線を送る。すると、ちびどらはコクリと頷いてくれる。
どうやら話しても大丈夫らしい。あまり人に言いふらすべきどう事ではないだろうけど、昔から私を見ていてくれた村長さんなら信用できる。
「実は……」
私は村長さんにちびどらを拾った後の事、不思議な錬金を使えるようになった事を説明した。
「なるほど……。それでこの話は?」
「村長さん以外にはしていないです」
「その方が良いじゃろう。それで、貴族様に呼ばれた事じゃが……」
一瞬だけ笑みを浮かべた後、村長さんは再び厳しい目つきに変わる。
「ミーシャの事を考えると行った方が良いじゃろうな」
「でも、私があの家が……」
「いや、この村にいてはお前さんがせっかく得たその錬金術を活用できないじゃろ。もっと大きな町に行った方がいい」
村長さんがそう言うとちびどらが「いいいぞ! もっと言ってやれ! とはやり立ててくる。
それを軽く小突いてから改めて考えてみる。
「うーん、やっぱりそうなのかな? でもいきなり行っても普段の生活が……」
「それは気にする必要がないじゃろう。仮にも貴族様が自分で呼び出したんじゃ。最低限の生活くらい保障してくれるはずじゃ」
少し悩んでいた私に決め手となる言葉をくれる村長さん。
うん、そうだよね。もしだめだとしてもまたこの村に戻ってくればいいわけだし――。
私が小さく頷くと村長は笑顔を浮かべて私の頭を撫でてくれた。
◇
私は家に戻ってきて早速出発の準備を始める。
必要な服や最低限の旅の支度。保存の利く食べ物に安眠用のまくらと手作りのぬいぐるみ……。
とにかくいりそうなものは全て鞄に詰め込むと、最後にちびどらを連れて雑草がたくさん生えているところにくる。
念のためにポーションを作る素材であるハレバレ草……と思われる草を大量に採取しておく。
これでお金に困ったときには足しにすることが出来るよね。
ついでにそのままだと騒がしいちびどらもカバンの中に放り込む。
「ちょ、ちょっと、ミーシャ……。むり、さすがにおいら、はいれな――むぎゅっ」
無理矢理押し込んだあと、私はそのカバンを背中に背負う。すると、ちびどらがそこからひょっこりと顔を出す。
「ふぅ……、苦しかった……」
顔だけ出せたちびどらは汗を拭っていた。
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