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森での採取
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私とマークくん、フリードさんとちびどらの四人で森までやってきた。
「ここだとたくさん素材がありそうだね」
私はうれしくなって小躍りしそうになる。
その一方、マークくんは険しい顔をしていた。
「ミーシャ、もう少し緊張感を持ってくれ。ここは普通に魔物が出る森なんだぞ!」
魔物が出るから心配してくれていたようだ。
でも大丈夫だよ。
今はへんた……じゃなかった、フリードさんが一緒なんだもん。
フリードさんも素材採取に一緒に来てくれないかとお願いしてみたら、服のお礼に……と一緒に来てくれることになった。
一部問題があることを除いたらすごい人みたいだから安心できるよね? できるよね?
フリードさんの格好を見た瞬間に急に不安が襲ってくる。
◇
森は奥に行くほど、光が届きにくくなって暗くなる。
天を覆い尽くすほど大きく育った大木が陽の光を遮るからだ。
「ま、マークくん……」
周りが暗くなってくるにつれて私は怖くなり、必死にマークくんにしがみついていた。
目には少し水がたまっていた。
こ、これは……そう、あくび。あくびをしたから……ひゃっ!?
必死に自分に言い訳していたときにいきなり何かが羽ばたいていく音が聞こえた。
それに驚いて私は更にぎゅっとマークくんの服の裾を握りしめる。
「ミーシャは臆病だな……」
「だ、だって……、真っ暗なんだよ。お、おば……」
私は必死にマークくんに伝えようとする。その途中でマークくんが話を遮る。
「それ名前を言うと本物が出るっていうな」
「おば……さん元気にしてるかなぁ」
うぅぅぅ、危なかった。本物が出たら怖いよね。
私は相変わらずマークくんの後ろに隠れながら進む。
先頭にはフリードさんとちびどらが周囲を警戒しながら進んでくれているので危険は少ないだろう。
それと念のためにマークくんには即席で作った石の剣を渡しておいた。
少し怖い森だが、その分素材も豊富にある。
ちょうどいい大きさの石があったのでそれを使ってマークくんの分の石の剣を作成するのも容易であった。
また、自分用に木の杖も作り、ぎゅっと握りしめていた。
まぁ使い道はないだろうけどね。
それより、ここ暗すぎるよぉ……。
森の中をゆっくり素材を集めながら進んでいった。
◇
「あっ、あの草使えそう……」
変わった色の草を見つけ私はボソリと呟く。
するとそれに応えるかのように側に生えている木の枝がユラユラと揺れる。
ハッとそちらに向くとそこから顔を出したのは、大きな魔物だった。
漆黒の毛を持った魔物。
手には鋭い爪、口には大きな牙。
そして、目は赤くギラついている。
4足歩行する姿は犬を彷彿とさせるが、それよりももっと凶暴そうだった。
「ま、魔物!?」
マークくんが力なく呟く。
睨まれた恐怖からか私はその場にペタンと腰をついて動けなくなる。
「あ、ああ……」
呂律も上手く回らない。
そんな私たちを遮るようにフリードさんが立ちふさがる。
腰の剣に手をかけて魔物をジッと凝視する。
魔物の方も迂闊に動けないのか、その場で様子を伺っている。
そんなとき、魔物の後ろから誰かが現れる。
グルゥゥゥァァァァ!!
魔物の断末魔が辺りに響き、その魔物は突然現れた人によって倒されてしまった。
全身を鎧で着込んだ人でどんな人かもわからない。
そんな格好をしていたからか、私はホッとしていたけど、マークくんやフリードさんは構えたままジッと凝視していた。
「ど、どうしたの? もう魔物、倒されたよね?」
「あいつ、強いぞ! もし敵だったら……」
マークくんが説明してくれる。
でも、敵になるような人がわざわざ私たちを助けるかな?
そんなことないよね。
そう感じた私はマークくんの忠告を聞かずに起き上がって、砂を払うとトタトタと私たちを助けてくれた人の方に行く。
「お、おい! ミーシャ! 行くな!」
「そうだよ! 危ないよ!」
マークくんとフリードさんは必死に止めようとする。
でも、あの人、あんまり怖そうには見えない。
何でだろう?
どこか見覚えがある気もするし……。
そう思っているとその人の後ろからもう一人誰かが走ってくる。体格のいい怖いおじさん――マルコさんだった。
「お、おーい。置いてくなよ。流石にこの鎧着て走るのはしんどいんだぞ!」
「すまない。次から気をつけよう」
マルコさんの姿を見つけたマークくんは私同様に警戒を解いて、その場に座り込んだ。
「なんだ! 変態じゃないか!?」
「俺は変態じゃない!」
「僕も変態じゃないよ」
マークくんの言葉に2人ほど反応する。フリードさんは確かに変態だけど、マルコさんは違うよね。
「それよりマルコさん。こんなところでどうしたの?」
私はマルコさんに聞いてみる。
「どうしたの? はこっちのセリフだ! こんな危ないところに来やがって、怪我でもしたらどうするんだ!」
マルコさんに大声で怒鳴られる。
それに驚いた私は目に涙が流れて、何度もマルコさんに謝った。
「い、いや、分かればいいんだ。俺も怒鳴ってすまなかった。だ、だから泣き止んでくれ」
私の姿を見たマルコさんはあわあわと慌てていた。
「お、おいらのこと忘れてないか?」
そういえば魔物がいたときにはいなかったけど、どこにいたのだろう?
「寂しかったぞ。まっすぐ進んでいたと思って後ろを振り向くと誰もいないこの感じ……」
あっ、私たちが止まったことに気づかないでそのまま進んで行ったんだ
「ここだとたくさん素材がありそうだね」
私はうれしくなって小躍りしそうになる。
その一方、マークくんは険しい顔をしていた。
「ミーシャ、もう少し緊張感を持ってくれ。ここは普通に魔物が出る森なんだぞ!」
魔物が出るから心配してくれていたようだ。
でも大丈夫だよ。
今はへんた……じゃなかった、フリードさんが一緒なんだもん。
フリードさんも素材採取に一緒に来てくれないかとお願いしてみたら、服のお礼に……と一緒に来てくれることになった。
一部問題があることを除いたらすごい人みたいだから安心できるよね? できるよね?
フリードさんの格好を見た瞬間に急に不安が襲ってくる。
◇
森は奥に行くほど、光が届きにくくなって暗くなる。
天を覆い尽くすほど大きく育った大木が陽の光を遮るからだ。
「ま、マークくん……」
周りが暗くなってくるにつれて私は怖くなり、必死にマークくんにしがみついていた。
目には少し水がたまっていた。
こ、これは……そう、あくび。あくびをしたから……ひゃっ!?
必死に自分に言い訳していたときにいきなり何かが羽ばたいていく音が聞こえた。
それに驚いて私は更にぎゅっとマークくんの服の裾を握りしめる。
「ミーシャは臆病だな……」
「だ、だって……、真っ暗なんだよ。お、おば……」
私は必死にマークくんに伝えようとする。その途中でマークくんが話を遮る。
「それ名前を言うと本物が出るっていうな」
「おば……さん元気にしてるかなぁ」
うぅぅぅ、危なかった。本物が出たら怖いよね。
私は相変わらずマークくんの後ろに隠れながら進む。
先頭にはフリードさんとちびどらが周囲を警戒しながら進んでくれているので危険は少ないだろう。
それと念のためにマークくんには即席で作った石の剣を渡しておいた。
少し怖い森だが、その分素材も豊富にある。
ちょうどいい大きさの石があったのでそれを使ってマークくんの分の石の剣を作成するのも容易であった。
また、自分用に木の杖も作り、ぎゅっと握りしめていた。
まぁ使い道はないだろうけどね。
それより、ここ暗すぎるよぉ……。
森の中をゆっくり素材を集めながら進んでいった。
◇
「あっ、あの草使えそう……」
変わった色の草を見つけ私はボソリと呟く。
するとそれに応えるかのように側に生えている木の枝がユラユラと揺れる。
ハッとそちらに向くとそこから顔を出したのは、大きな魔物だった。
漆黒の毛を持った魔物。
手には鋭い爪、口には大きな牙。
そして、目は赤くギラついている。
4足歩行する姿は犬を彷彿とさせるが、それよりももっと凶暴そうだった。
「ま、魔物!?」
マークくんが力なく呟く。
睨まれた恐怖からか私はその場にペタンと腰をついて動けなくなる。
「あ、ああ……」
呂律も上手く回らない。
そんな私たちを遮るようにフリードさんが立ちふさがる。
腰の剣に手をかけて魔物をジッと凝視する。
魔物の方も迂闊に動けないのか、その場で様子を伺っている。
そんなとき、魔物の後ろから誰かが現れる。
グルゥゥゥァァァァ!!
魔物の断末魔が辺りに響き、その魔物は突然現れた人によって倒されてしまった。
全身を鎧で着込んだ人でどんな人かもわからない。
そんな格好をしていたからか、私はホッとしていたけど、マークくんやフリードさんは構えたままジッと凝視していた。
「ど、どうしたの? もう魔物、倒されたよね?」
「あいつ、強いぞ! もし敵だったら……」
マークくんが説明してくれる。
でも、敵になるような人がわざわざ私たちを助けるかな?
そんなことないよね。
そう感じた私はマークくんの忠告を聞かずに起き上がって、砂を払うとトタトタと私たちを助けてくれた人の方に行く。
「お、おい! ミーシャ! 行くな!」
「そうだよ! 危ないよ!」
マークくんとフリードさんは必死に止めようとする。
でも、あの人、あんまり怖そうには見えない。
何でだろう?
どこか見覚えがある気もするし……。
そう思っているとその人の後ろからもう一人誰かが走ってくる。体格のいい怖いおじさん――マルコさんだった。
「お、おーい。置いてくなよ。流石にこの鎧着て走るのはしんどいんだぞ!」
「すまない。次から気をつけよう」
マルコさんの姿を見つけたマークくんは私同様に警戒を解いて、その場に座り込んだ。
「なんだ! 変態じゃないか!?」
「俺は変態じゃない!」
「僕も変態じゃないよ」
マークくんの言葉に2人ほど反応する。フリードさんは確かに変態だけど、マルコさんは違うよね。
「それよりマルコさん。こんなところでどうしたの?」
私はマルコさんに聞いてみる。
「どうしたの? はこっちのセリフだ! こんな危ないところに来やがって、怪我でもしたらどうするんだ!」
マルコさんに大声で怒鳴られる。
それに驚いた私は目に涙が流れて、何度もマルコさんに謝った。
「い、いや、分かればいいんだ。俺も怒鳴ってすまなかった。だ、だから泣き止んでくれ」
私の姿を見たマルコさんはあわあわと慌てていた。
「お、おいらのこと忘れてないか?」
そういえば魔物がいたときにはいなかったけど、どこにいたのだろう?
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