ミーシャのアトリエ

空野進

文字の大きさ
15 / 17

森での採取

しおりを挟む
 私とマークくん、フリードさんとちびどらの四人で森までやってきた。


「ここだとたくさん素材がありそうだね」


 私はうれしくなって小躍りしそうになる。
 その一方、マークくんは険しい顔をしていた。


「ミーシャ、もう少し緊張感を持ってくれ。ここは普通に魔物が出る森なんだぞ!」


 魔物が出るから心配してくれていたようだ。


 でも大丈夫だよ。

 今はへんた……じゃなかった、フリードさんが一緒なんだもん。


 フリードさんも素材採取に一緒に来てくれないかとお願いしてみたら、服のお礼に……と一緒に来てくれることになった。


 一部問題があることを除いたらすごい人みたいだから安心できるよね? できるよね?


 フリードさんの格好を見た瞬間に急に不安が襲ってくる。







 森は奥に行くほど、光が届きにくくなって暗くなる。
 天を覆い尽くすほど大きく育った大木が陽の光を遮るからだ。


「ま、マークくん……」


 周りが暗くなってくるにつれて私は怖くなり、必死にマークくんにしがみついていた。
 目には少し水がたまっていた。


 こ、これは……そう、あくび。あくびをしたから……ひゃっ!?


 必死に自分に言い訳していたときにいきなり何かが羽ばたいていく音が聞こえた。

 それに驚いて私は更にぎゅっとマークくんの服の裾を握りしめる。


「ミーシャは臆病だな……」

「だ、だって……、真っ暗なんだよ。お、おば……」


 私は必死にマークくんに伝えようとする。その途中でマークくんが話を遮る。


「それ名前を言うと本物が出るっていうな」

「おば……さん元気にしてるかなぁ」


 うぅぅぅ、危なかった。本物が出たら怖いよね。


 私は相変わらずマークくんの後ろに隠れながら進む。

 先頭にはフリードさんとちびどらが周囲を警戒しながら進んでくれているので危険は少ないだろう。

 それと念のためにマークくんには即席で作った石の剣を渡しておいた。

 少し怖い森だが、その分素材も豊富にある。

 ちょうどいい大きさの石があったのでそれを使ってマークくんの分の石の剣を作成するのも容易であった。

 また、自分用に木の杖も作り、ぎゅっと握りしめていた。
 まぁ使い道はないだろうけどね。


 それより、ここ暗すぎるよぉ……。


 森の中をゆっくり素材を集めながら進んでいった。







「あっ、あの草使えそう……」


 変わった色の草を見つけ私はボソリと呟く。

 するとそれに応えるかのように側に生えている木の枝がユラユラと揺れる。

 ハッとそちらに向くとそこから顔を出したのは、大きな魔物だった。

 漆黒の毛を持った魔物。
 手には鋭い爪、口には大きな牙。
 そして、目は赤くギラついている。

 4足歩行する姿は犬を彷彿とさせるが、それよりももっと凶暴そうだった。


「ま、魔物!?」


 マークくんが力なく呟く。

 睨まれた恐怖からか私はその場にペタンと腰をついて動けなくなる。


「あ、ああ……」


 呂律も上手く回らない。

 そんな私たちを遮るようにフリードさんが立ちふさがる。

 腰の剣に手をかけて魔物をジッと凝視する。
 魔物の方も迂闊に動けないのか、その場で様子を伺っている。

 そんなとき、魔物の後ろから誰かが現れる。

 グルゥゥゥァァァァ!!

 魔物の断末魔が辺りに響き、その魔物は突然現れた人によって倒されてしまった。
 全身を鎧で着込んだ人でどんな人かもわからない。

 そんな格好をしていたからか、私はホッとしていたけど、マークくんやフリードさんは構えたままジッと凝視していた。


「ど、どうしたの? もう魔物、倒されたよね?」

「あいつ、強いぞ! もし敵だったら……」


 マークくんが説明してくれる。


 でも、敵になるような人がわざわざ私たちを助けるかな?
 そんなことないよね。


 そう感じた私はマークくんの忠告を聞かずに起き上がって、砂を払うとトタトタと私たちを助けてくれた人の方に行く。


「お、おい! ミーシャ! 行くな!」

「そうだよ! 危ないよ!」


 マークくんとフリードさんは必死に止めようとする。
 でも、あの人、あんまり怖そうには見えない。

 何でだろう?
 どこか見覚えがある気もするし……。

 そう思っているとその人の後ろからもう一人誰かが走ってくる。体格のいい怖いおじさん――マルコさんだった。


「お、おーい。置いてくなよ。流石にこの鎧着て走るのはしんどいんだぞ!」

「すまない。次から気をつけよう」


 マルコさんの姿を見つけたマークくんは私同様に警戒を解いて、その場に座り込んだ。


「なんだ! 変態じゃないか!?」

「俺は変態じゃない!」

「僕も変態じゃないよ」


 マークくんの言葉に2人ほど反応する。フリードさんは確かに変態だけど、マルコさんは違うよね。


「それよりマルコさん。こんなところでどうしたの?」


 私はマルコさんに聞いてみる。


「どうしたの? はこっちのセリフだ! こんな危ないところに来やがって、怪我でもしたらどうするんだ!」


 マルコさんに大声で怒鳴られる。

 それに驚いた私は目に涙が流れて、何度もマルコさんに謝った。


「い、いや、分かればいいんだ。俺も怒鳴ってすまなかった。だ、だから泣き止んでくれ」


 私の姿を見たマルコさんはあわあわと慌てていた。


「お、おいらのこと忘れてないか?」


 そういえば魔物がいたときにはいなかったけど、どこにいたのだろう?


「寂しかったぞ。まっすぐ進んでいたと思って後ろを振り向くと誰もいないこの感じ……」


 あっ、私たちが止まったことに気づかないでそのまま進んで行ったんだ
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛

タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。 しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。 前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。 魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...