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ぷにりん
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「ところで、マルコさん。そちらの方は?」
さっきから影に隠れて姿が見えない人について聞く。
「……この方は――」
マルコさんが話してくれようとしたときに全身鎧の人がマルコさんのおなかを殴る。
「いってぇぇぇ!」
鈍い音が響き渡りマルコさんがお腹を抱えうずくまる。
よ、鎧を着てるのに……。
私は少し二人から距離をとる。
「ち、違う!! いや、違わないが、それでも違う。だって、隠れたまま助ける……その方がカッコ良くないか?」
その声は聞き覚えがあった。
あの時、ポーションを買って行ってくれた女の人だ!
ただ、あまり正体がばれたくないみたいなので、私もわからないふりをしてあげる。
「わー、すごーい。お姉さん、ありがとうございまーす」
どう? 私の迫真の演技。これならお姉さんも正体がバレているとわからずに——。
ど、どうしたの? みんな私を冷たい目で見て……。
「今のは私に対する当てつけか?」
「やるなミーシャ。俺の仇を取ってくれたのか?」
「ミーシャ? さすがに今のはおいらでもないと思ったぞ」
これを上げて行ってきたのは順にお姉さん、マルコさん、ちびどらだった。
えー? 結構頑張って演技したのになぁ……。
私は肩を落とす。
「第一、私が全身を隠しているのにどうしてお姉さんとわかったんだ?」
「あっ……」
お姉さんのその一言で私は自分がしたミスに気付いた。
◇
「それで、お姉さんたちは何をされていたのですか?」
もう正体がばれていいと思ったのか、兜だけをとってくれたお姉さん。やはりポーションを買いに来てくれたその人だった。
でも知り合いとこんな森の中でばったりと会う。
そうそうないことだよね?
少し気になったので聞いてみた。
「私たちはこの森に現れた魔物の討伐に来たんだ。やたら高速で動く空色の物体だそうだ。話の内容的に相手はぷにりんだと思うが、それだと高速で動くという部分が変だからな」
ぷにりん?
なんだか可愛らしい名前だけど、どんな魔物なのだろう?
「とにかく、ここにいては危険だ! 早く森を抜けて……」
途中まで言って言葉が詰まるお姉さん。
どうしたのだろう?
私はお姉さんの視線の先にあるものを見てみる。
しかし、そこには特に変わったものはなかった。
ちょうどフリードさんが座っているだけで……。
「き、き、きさま……、なんで恰好を!?」
おそらく顔を赤くして話しているのが容易に想像できる。
そっか……、服を着たとはいえ、フリードさんはまだ変態らしい格好だもんね。
「別に服を着てるからいいだろう」
「問題だらけだ!! もしかしてお前は彼女の——」
「あぁ、素材採取の間、パーティを組んでいる」
そう伝えるとお姉さんはなく頭のてっぺん辺りを掻き毟る。
「この人、情緒不安定だな」
「あぁ、お前もそう思うか……。いつものことなんだ」
マークくんとマルコさんが二人、影で内緒話をしていた。
「こ、こんな変態に守らせるくらいなら一緒に連れて行く方がマシだ! 私たちと一緒についてこい。きっちりと守ってやるから」
手を差し出すお姉さん。
私はいいのかなと変態さんを見るけど、彼は特に何も気にした様子はない。
どうもこの中で気にしているのはお姉さんだけのようだ。
でも守ってくれるのなら、ついて行かせてもらった方がいいよね。
その方がもっと森の奥に入れて素材もたくさん集まるかも……。
少し期待をしながら私はお姉さんの手を取った。
◇
「ミーシャ、本当に良かったのか? さすがにあまり奥に行くと俺たちも危険だぞ?」
マークくんが注意を促してくる。
「大丈夫だよー。お姉さんが守ってくれるし、いざという時はマルコさんやフリードさんもいるんだし」
マークくんは心配しすぎなんだから……。
私たちはお姉さんの後に付いていく。
すると、木々の間から突如として青色の球体状のものが飛び出してくる。
どこか愛らしい姿。
少し攻撃するのがためらわれるかも……。
「ぷにりんだ! 構えろ!」
お姉さんの合図の元、私は杖を構える。
といっても、これで叩くくらいしかできないけどね。
すると私が構えた杖の先にちびどらが乗っかる。
「ミーシャはどうせまともに戦えないでしょ。いざというときはおいらが――」
どうやらちびどらが私を守ってくれるようだ。
ただ、どうせ戦えないというのはひどいなぁ。
これでもしっかり戦えるのに。
よーし、こうなったら私の力を見せつけてやる―。
密かに気合いを入れるが、そのためにどうするか……それを考えていなかった。
必死にそれを考えている間にぷにりんは倒されてしまった。
「よし、戦闘は終わりだ。ただ、今の物音で魔物がよってくるかもしれん。しばらくは警戒しておいてくれ」
テキパキと指示を出していくお姉さん。
なんだかかっこいいなぁ。
お姉さんに憧れのようなものを感じていると私の後ろを守っているマルコさんが肩をちょんちょんと小さく突いてくる。
「どうかされましたか?」
「いや、あいつに食われんように注意しろよ? 俺からいえることはそれだけだ」
それだけ言うとマルコさんは何も言わなくなってしまった。
食われる?
まさかお姉さんって人を食べる――ってそんなわけないよね?
もう、マルコさんは私を驚かすためにわざとそんなことを言ったんだな。
ただ、そのマルコさんの冗談のおかげで私は少し緊張が解け、少し笑みを浮かべることができた。
さっきから影に隠れて姿が見えない人について聞く。
「……この方は――」
マルコさんが話してくれようとしたときに全身鎧の人がマルコさんのおなかを殴る。
「いってぇぇぇ!」
鈍い音が響き渡りマルコさんがお腹を抱えうずくまる。
よ、鎧を着てるのに……。
私は少し二人から距離をとる。
「ち、違う!! いや、違わないが、それでも違う。だって、隠れたまま助ける……その方がカッコ良くないか?」
その声は聞き覚えがあった。
あの時、ポーションを買って行ってくれた女の人だ!
ただ、あまり正体がばれたくないみたいなので、私もわからないふりをしてあげる。
「わー、すごーい。お姉さん、ありがとうございまーす」
どう? 私の迫真の演技。これならお姉さんも正体がバレているとわからずに——。
ど、どうしたの? みんな私を冷たい目で見て……。
「今のは私に対する当てつけか?」
「やるなミーシャ。俺の仇を取ってくれたのか?」
「ミーシャ? さすがに今のはおいらでもないと思ったぞ」
これを上げて行ってきたのは順にお姉さん、マルコさん、ちびどらだった。
えー? 結構頑張って演技したのになぁ……。
私は肩を落とす。
「第一、私が全身を隠しているのにどうしてお姉さんとわかったんだ?」
「あっ……」
お姉さんのその一言で私は自分がしたミスに気付いた。
◇
「それで、お姉さんたちは何をされていたのですか?」
もう正体がばれていいと思ったのか、兜だけをとってくれたお姉さん。やはりポーションを買いに来てくれたその人だった。
でも知り合いとこんな森の中でばったりと会う。
そうそうないことだよね?
少し気になったので聞いてみた。
「私たちはこの森に現れた魔物の討伐に来たんだ。やたら高速で動く空色の物体だそうだ。話の内容的に相手はぷにりんだと思うが、それだと高速で動くという部分が変だからな」
ぷにりん?
なんだか可愛らしい名前だけど、どんな魔物なのだろう?
「とにかく、ここにいては危険だ! 早く森を抜けて……」
途中まで言って言葉が詰まるお姉さん。
どうしたのだろう?
私はお姉さんの視線の先にあるものを見てみる。
しかし、そこには特に変わったものはなかった。
ちょうどフリードさんが座っているだけで……。
「き、き、きさま……、なんで恰好を!?」
おそらく顔を赤くして話しているのが容易に想像できる。
そっか……、服を着たとはいえ、フリードさんはまだ変態らしい格好だもんね。
「別に服を着てるからいいだろう」
「問題だらけだ!! もしかしてお前は彼女の——」
「あぁ、素材採取の間、パーティを組んでいる」
そう伝えるとお姉さんはなく頭のてっぺん辺りを掻き毟る。
「この人、情緒不安定だな」
「あぁ、お前もそう思うか……。いつものことなんだ」
マークくんとマルコさんが二人、影で内緒話をしていた。
「こ、こんな変態に守らせるくらいなら一緒に連れて行く方がマシだ! 私たちと一緒についてこい。きっちりと守ってやるから」
手を差し出すお姉さん。
私はいいのかなと変態さんを見るけど、彼は特に何も気にした様子はない。
どうもこの中で気にしているのはお姉さんだけのようだ。
でも守ってくれるのなら、ついて行かせてもらった方がいいよね。
その方がもっと森の奥に入れて素材もたくさん集まるかも……。
少し期待をしながら私はお姉さんの手を取った。
◇
「ミーシャ、本当に良かったのか? さすがにあまり奥に行くと俺たちも危険だぞ?」
マークくんが注意を促してくる。
「大丈夫だよー。お姉さんが守ってくれるし、いざという時はマルコさんやフリードさんもいるんだし」
マークくんは心配しすぎなんだから……。
私たちはお姉さんの後に付いていく。
すると、木々の間から突如として青色の球体状のものが飛び出してくる。
どこか愛らしい姿。
少し攻撃するのがためらわれるかも……。
「ぷにりんだ! 構えろ!」
お姉さんの合図の元、私は杖を構える。
といっても、これで叩くくらいしかできないけどね。
すると私が構えた杖の先にちびどらが乗っかる。
「ミーシャはどうせまともに戦えないでしょ。いざというときはおいらが――」
どうやらちびどらが私を守ってくれるようだ。
ただ、どうせ戦えないというのはひどいなぁ。
これでもしっかり戦えるのに。
よーし、こうなったら私の力を見せつけてやる―。
密かに気合いを入れるが、そのためにどうするか……それを考えていなかった。
必死にそれを考えている間にぷにりんは倒されてしまった。
「よし、戦闘は終わりだ。ただ、今の物音で魔物がよってくるかもしれん。しばらくは警戒しておいてくれ」
テキパキと指示を出していくお姉さん。
なんだかかっこいいなぁ。
お姉さんに憧れのようなものを感じていると私の後ろを守っているマルコさんが肩をちょんちょんと小さく突いてくる。
「どうかされましたか?」
「いや、あいつに食われんように注意しろよ? 俺からいえることはそれだけだ」
それだけ言うとマルコさんは何も言わなくなってしまった。
食われる?
まさかお姉さんって人を食べる――ってそんなわけないよね?
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ただ、そのマルコさんの冗談のおかげで私は少し緊張が解け、少し笑みを浮かべることができた。
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