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依頼完了(2)
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「ところでお前の用事は済んだのか? 何かしていた様には見えなかったが……」
「あぁ、問題ない」
ブライトの力を見ることと勧誘すること、そのどちらも無事に終えることができた。
当面は様子を見るしかできないな。
今の俺にしかできないことも見えてきた。
貴族として動いて大丈夫かの見極めも必要になるだろう。
畑の問題は巡回兵の数を増やせば解決するはず。
……ただし、その兵がまともに仕事をすれば、の話だ。
兵自体がまともに仕事をしない可能性がある以上、そのことも併せて考慮しないといけない。
「そうか……、お前は俺を誘うために――」
ブライトも俺の用事について察したようでそれ以上は何も言わなかった。
そして、そのまま俺たちはブライトの依頼人に会いに行く。
◇◇◇
「も、もう倒されたのですか……?」
シャドウウルフの素材を見せると依頼人は驚きの表情を見せていた。
「長引くと困るんだろう?」
「も、もちろんです。本当にありがとうございます。……そちらの方は?」
俺の方を見て依頼人は首をかしげる。
すると、ブライトが説明してくれる。
「今回の依頼をするにあたって呼んだ協力者だ。ギルドの連中ではない」
「そうなのですね。本当にありがとうございます」
改めて礼を言ってくる依頼人。
その態度を見て俺は仮面の中で苦笑をした。
どうやらギルドもかなり嫌われているようだな。
つくづくこの世界は平民には暮らしにくくなっているようだ。
「気にするな。俺には俺の思惑があった。これはついでだ」
サッと手を振って興味がない仕草をする。
その様子にブライトは乾いた笑みを浮かべていた。
「あっ、でも、報酬の方が――」
依頼人の顔に陰りが見える。
あまり多くの金がないのだから、二人分払わないといけないかと思ったのだろう。
すると、ブライトがきっぱりと言い切ってくる。
「いや、報酬は予定通りの額でいい」
「ほ、本当によろしいのでしょうか?」
「もちろんだ」
それだけ言うとブライトは依頼人から金を受け取っていた。
額は銀貨十五枚。
一般的な兵がもらっている月の給金の半分。
ただ、困窮している国民達にはかなり高価な金額になる。
おそらくかなり無理をして金を集めたのだろう。
あの魔物を倒さない限り、畑でまともに仕事ができない。
仕事ができなければ生きていくこともできない。
苦渋の決断だったのだろう。
それをギルドの依頼として出して断られる。
それを考えると先ほどギルドに抱いていた不満は当然だろう。
ブライトは受け取った金を数える。
そして、十五枚きっちりあることを確認した後に頷く。
「確かに約束の報酬を受け取った。これは倒した魔物の素材だ」
ブライトは綺麗に解体した素材を依頼人に渡そうとする。
しかし、依頼人は呆けていた。
「あ、あの……、私はここまでは言っていないのですが――」
「魔物討伐の証だ。ギルドでも討伐素材を渡すのが当たり前だからな」
「それはそうですが、これはその……。なんといいますか、多すぎる上にこの魔物は――」
「依頼は畑の魔物を倒してくれ……だったからな。魔物が何か……は問題がない」
「し、しかし――。シャドウウルフはBランクの魔物……。本当なら報酬もこれだと全然足りない上にその素材もかなり高額で――」
「……まだまだ金も必要になるだろう。これで過ごすといい」
「あ、ありがとうございます」
膝をついて、何度も頭を下げてくる。
そんなブライトを見て俺は再度苦笑をする。
◇◇◇
「今回の依頼ができたのはお前のおかげだ。ありがとう――」
依頼人と別れたあと、改めてブライトが礼を言ってくる。
「気にするな。俺は俺の目的を果たしたまでだ」
「……そうだよな。ただ、高価な巻物まで使ってもらったんだ。せめてこの後の飯でも奢らせてくれ」
「いや、そこまでは――」
初めは断ろうとしたのだが、ブライト自身が負い目に感じても良くないだろう。
ここはむしろ気持ち良く奢られた方が気兼ねなく対応してくれるな。
「……わかった。ご相伴に預からせてもらう」
「よし、決まりだ! この先に旨い飯屋があるんだ! 一緒に行くか」
嬉しそうに笑みを浮かべたブライトがその馬鹿力で思いっきり肩を叩いてくる。
痛いんだけど……。
少し目を細くしながら、俺はため息混じりの笑みを溢していた。
「あぁ、問題ない」
ブライトの力を見ることと勧誘すること、そのどちらも無事に終えることができた。
当面は様子を見るしかできないな。
今の俺にしかできないことも見えてきた。
貴族として動いて大丈夫かの見極めも必要になるだろう。
畑の問題は巡回兵の数を増やせば解決するはず。
……ただし、その兵がまともに仕事をすれば、の話だ。
兵自体がまともに仕事をしない可能性がある以上、そのことも併せて考慮しないといけない。
「そうか……、お前は俺を誘うために――」
ブライトも俺の用事について察したようでそれ以上は何も言わなかった。
そして、そのまま俺たちはブライトの依頼人に会いに行く。
◇◇◇
「も、もう倒されたのですか……?」
シャドウウルフの素材を見せると依頼人は驚きの表情を見せていた。
「長引くと困るんだろう?」
「も、もちろんです。本当にありがとうございます。……そちらの方は?」
俺の方を見て依頼人は首をかしげる。
すると、ブライトが説明してくれる。
「今回の依頼をするにあたって呼んだ協力者だ。ギルドの連中ではない」
「そうなのですね。本当にありがとうございます」
改めて礼を言ってくる依頼人。
その態度を見て俺は仮面の中で苦笑をした。
どうやらギルドもかなり嫌われているようだな。
つくづくこの世界は平民には暮らしにくくなっているようだ。
「気にするな。俺には俺の思惑があった。これはついでだ」
サッと手を振って興味がない仕草をする。
その様子にブライトは乾いた笑みを浮かべていた。
「あっ、でも、報酬の方が――」
依頼人の顔に陰りが見える。
あまり多くの金がないのだから、二人分払わないといけないかと思ったのだろう。
すると、ブライトがきっぱりと言い切ってくる。
「いや、報酬は予定通りの額でいい」
「ほ、本当によろしいのでしょうか?」
「もちろんだ」
それだけ言うとブライトは依頼人から金を受け取っていた。
額は銀貨十五枚。
一般的な兵がもらっている月の給金の半分。
ただ、困窮している国民達にはかなり高価な金額になる。
おそらくかなり無理をして金を集めたのだろう。
あの魔物を倒さない限り、畑でまともに仕事ができない。
仕事ができなければ生きていくこともできない。
苦渋の決断だったのだろう。
それをギルドの依頼として出して断られる。
それを考えると先ほどギルドに抱いていた不満は当然だろう。
ブライトは受け取った金を数える。
そして、十五枚きっちりあることを確認した後に頷く。
「確かに約束の報酬を受け取った。これは倒した魔物の素材だ」
ブライトは綺麗に解体した素材を依頼人に渡そうとする。
しかし、依頼人は呆けていた。
「あ、あの……、私はここまでは言っていないのですが――」
「魔物討伐の証だ。ギルドでも討伐素材を渡すのが当たり前だからな」
「それはそうですが、これはその……。なんといいますか、多すぎる上にこの魔物は――」
「依頼は畑の魔物を倒してくれ……だったからな。魔物が何か……は問題がない」
「し、しかし――。シャドウウルフはBランクの魔物……。本当なら報酬もこれだと全然足りない上にその素材もかなり高額で――」
「……まだまだ金も必要になるだろう。これで過ごすといい」
「あ、ありがとうございます」
膝をついて、何度も頭を下げてくる。
そんなブライトを見て俺は再度苦笑をする。
◇◇◇
「今回の依頼ができたのはお前のおかげだ。ありがとう――」
依頼人と別れたあと、改めてブライトが礼を言ってくる。
「気にするな。俺は俺の目的を果たしたまでだ」
「……そうだよな。ただ、高価な巻物まで使ってもらったんだ。せめてこの後の飯でも奢らせてくれ」
「いや、そこまでは――」
初めは断ろうとしたのだが、ブライト自身が負い目に感じても良くないだろう。
ここはむしろ気持ち良く奢られた方が気兼ねなく対応してくれるな。
「……わかった。ご相伴に預からせてもらう」
「よし、決まりだ! この先に旨い飯屋があるんだ! 一緒に行くか」
嬉しそうに笑みを浮かべたブライトがその馬鹿力で思いっきり肩を叩いてくる。
痛いんだけど……。
少し目を細くしながら、俺はため息混じりの笑みを溢していた。
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