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閑話 梅雨の話
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「雨、降りそう……」
莉愛は窓の外を見ながら眉をひそめていた。
(有場さん、今日は雨が降るから傘を持って行けって言ってたけど本当なんだ……)
朝は少し曇ってる程度で訝しんでいた莉愛だったが、彼の言うことだからと傘を持ってきた。
それを本当に使うことになるとは思わなかった。
「でも、雨は憂鬱ですね……」
「莉愛ちゃん、どうしたの?」
窓の外を眺めていると伊緒が顔を覗き込んでくる。
「もうテスト終わったのになんだか元気がなさそうだよ?」
「雨が降りそうですから……」
「本当だ……って、私傘持ってきてないよ!? どうしよう……」
伊緒が慌て出す。
その様子をクスクスと微笑みながら答える。
「それなら私と一緒に帰りますか? この雨だったら有場さんも車でお迎えに来られると思いますから」
「うん、ありがとう、莉愛ちゃん。助かるよ」
「く、苦しいよ、伊緒ちゃん……」
伊緒に抱きしめられて莉愛は少しだけ苦笑を浮かべるのだった。
◇
帰る時間になると雨は本格的に降り出してくる。
「結構きついね……」
「そうですね……。あっ、有場さん!」
莉愛は校門付近で傘を差しながら待っている有場の姿を見つけると笑みを浮かべる。
彼も莉愛のことを見つけると軽く手を上げてくれた。
そして、莉愛達に近づいてきてくれる。
でも、その後ろには車がない。
もしかして、歩いてきてくれたのだろうか?
「有場さん、お待たせしました」
「いや、気にするな。それよりもやっぱり雨が降ってきたな……」
「でも、有場さんのおかげで雨に濡れずにすみますね」
莉愛は手に持っている傘を有場に見せてくる。
すると隣で伊緒が何かを考え込んでいた。
「どうしたのですか?」
「うーん、この状況なら……。うん、莉愛ちゃんの傘、借りてもいい?」
「えっと、一緒に入って帰らないと私がぬれちゃうんですけど……」
「大丈夫、莉愛ちゃんはお兄ちゃんと一緒に帰れば良いよ。ねっ?」
伊緒はにっこり笑顔を向けると莉愛を彼の方に押し寄せてくる。
有場は莉愛を抱き留めると伊緒は傘を差して、大きく手を振ってくる。
「それじゃあ、莉愛ちゃん。また明日ー!」
大きく手を振ると伊緒は走っていってしまった。
「えっと……どうしましょうか?」
後に残された莉愛は苦笑を浮かべながら有場の顔を見る。
「そうだな。車を呼ぶか? 少し時間はかかるだろうけど、雨に濡れないだろうし……」
「そう……ですね」
それしかないかなと頷こうとする。
ただ、その時に伊緒の顔が浮かぶ。
まるで伊緒はこの状況を作り出そうとしていた。
どうしてでしょうか?
少し考えていると有場が傘を差してくる。
「大丈夫か? 濡れてないか?」
よく見ると莉愛の肩が少しだけ濡れていた。
差し出された傘の中に入るとようやく莉愛は今の状況を理解する。
「あの……、もしよろしければこのまま一緒に帰りませんか……?」
傘を差す彼の手をギュッと抱きしめながら莉愛は提案してみる。
すると有場は少し考え込んだ後、頷いてくれる。
「それは構わないが車を呼んだ方が良くないか?」
「いえ、絶対に一緒に帰る方がいいです!」
自信たっぷりに答えると彼は呆れながらも頷いてくれる。
「それじゃあ帰るか……」
「はい……」
◇
雨の中、有場と莉愛は一つの傘を共有しながらゆっくり歩いていた。
「莉愛、濡れてないか?」
「大丈夫です。でも、有場さんは……」
莉愛と体がくっつかないように歩いていた有場は肩から先が濡れているようだった。
「いや、このくらいなら気にしないぞ……」
「ダメです! 有場さんももっとちゃんと入ってください」
莉愛はギュッと有場に抱きつく。
すると有場は顔を染めて慌てた様子だった。
「お、おい、莉愛!?」
「えへへー、これで濡れませんね」
満面の笑みを見せる莉愛を見ると有場は苦笑を浮かべ、空いてる手で頭をかいていた。
「仕方ないか……。家に帰るまでだからな」
「はーい」
こうやって二人きりで帰れるなら雨もいいかもしれない。
「雨っていいですね。私、少し雨の方が好きになりました……」
「そうか、それは良かったな」
「はいっ」
そして、ゆっくり館に向かって歩いて帰った。
莉愛は窓の外を見ながら眉をひそめていた。
(有場さん、今日は雨が降るから傘を持って行けって言ってたけど本当なんだ……)
朝は少し曇ってる程度で訝しんでいた莉愛だったが、彼の言うことだからと傘を持ってきた。
それを本当に使うことになるとは思わなかった。
「でも、雨は憂鬱ですね……」
「莉愛ちゃん、どうしたの?」
窓の外を眺めていると伊緒が顔を覗き込んでくる。
「もうテスト終わったのになんだか元気がなさそうだよ?」
「雨が降りそうですから……」
「本当だ……って、私傘持ってきてないよ!? どうしよう……」
伊緒が慌て出す。
その様子をクスクスと微笑みながら答える。
「それなら私と一緒に帰りますか? この雨だったら有場さんも車でお迎えに来られると思いますから」
「うん、ありがとう、莉愛ちゃん。助かるよ」
「く、苦しいよ、伊緒ちゃん……」
伊緒に抱きしめられて莉愛は少しだけ苦笑を浮かべるのだった。
◇
帰る時間になると雨は本格的に降り出してくる。
「結構きついね……」
「そうですね……。あっ、有場さん!」
莉愛は校門付近で傘を差しながら待っている有場の姿を見つけると笑みを浮かべる。
彼も莉愛のことを見つけると軽く手を上げてくれた。
そして、莉愛達に近づいてきてくれる。
でも、その後ろには車がない。
もしかして、歩いてきてくれたのだろうか?
「有場さん、お待たせしました」
「いや、気にするな。それよりもやっぱり雨が降ってきたな……」
「でも、有場さんのおかげで雨に濡れずにすみますね」
莉愛は手に持っている傘を有場に見せてくる。
すると隣で伊緒が何かを考え込んでいた。
「どうしたのですか?」
「うーん、この状況なら……。うん、莉愛ちゃんの傘、借りてもいい?」
「えっと、一緒に入って帰らないと私がぬれちゃうんですけど……」
「大丈夫、莉愛ちゃんはお兄ちゃんと一緒に帰れば良いよ。ねっ?」
伊緒はにっこり笑顔を向けると莉愛を彼の方に押し寄せてくる。
有場は莉愛を抱き留めると伊緒は傘を差して、大きく手を振ってくる。
「それじゃあ、莉愛ちゃん。また明日ー!」
大きく手を振ると伊緒は走っていってしまった。
「えっと……どうしましょうか?」
後に残された莉愛は苦笑を浮かべながら有場の顔を見る。
「そうだな。車を呼ぶか? 少し時間はかかるだろうけど、雨に濡れないだろうし……」
「そう……ですね」
それしかないかなと頷こうとする。
ただ、その時に伊緒の顔が浮かぶ。
まるで伊緒はこの状況を作り出そうとしていた。
どうしてでしょうか?
少し考えていると有場が傘を差してくる。
「大丈夫か? 濡れてないか?」
よく見ると莉愛の肩が少しだけ濡れていた。
差し出された傘の中に入るとようやく莉愛は今の状況を理解する。
「あの……、もしよろしければこのまま一緒に帰りませんか……?」
傘を差す彼の手をギュッと抱きしめながら莉愛は提案してみる。
すると有場は少し考え込んだ後、頷いてくれる。
「それは構わないが車を呼んだ方が良くないか?」
「いえ、絶対に一緒に帰る方がいいです!」
自信たっぷりに答えると彼は呆れながらも頷いてくれる。
「それじゃあ帰るか……」
「はい……」
◇
雨の中、有場と莉愛は一つの傘を共有しながらゆっくり歩いていた。
「莉愛、濡れてないか?」
「大丈夫です。でも、有場さんは……」
莉愛と体がくっつかないように歩いていた有場は肩から先が濡れているようだった。
「いや、このくらいなら気にしないぞ……」
「ダメです! 有場さんももっとちゃんと入ってください」
莉愛はギュッと有場に抱きつく。
すると有場は顔を染めて慌てた様子だった。
「お、おい、莉愛!?」
「えへへー、これで濡れませんね」
満面の笑みを見せる莉愛を見ると有場は苦笑を浮かべ、空いてる手で頭をかいていた。
「仕方ないか……。家に帰るまでだからな」
「はーい」
こうやって二人きりで帰れるなら雨もいいかもしれない。
「雨っていいですね。私、少し雨の方が好きになりました……」
「そうか、それは良かったな」
「はいっ」
そして、ゆっくり館に向かって歩いて帰った。
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