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プールサイドの極上
二人でプール
ホテル最上階にあるプールからは、陽光にきらめく海をはるかかなたまで見通すことができる。数人の客がいるが皆思い思いの場所で絶景や水音を楽しみながら寛いでおり、喧噪とは無縁である。プールに浸かったまま注文できるカフェ&バーで、悟空と玄奘の二人はグラスを傾けていた。
二人とも水着姿だが、マネージャーから日焼けをするなときつく言い渡されているため、上半身はラッシュガードを着用している。玄奘は長袖のプルオーバータイプ、悟空はいざというときに動きやすいようTシャツタイプである。
玄奘の前にあるのは薄桃色の液体が入った背の高いグラスである。一口含んでじっくりと味わってから玄奘は言った。
「このパッションフルーツのカクテルは、桃も少し入っているようだよ。甘いけど、ヨーグルトの酸味が爽やかだ。ねえ、ほら悟空、飲んでみて」
「いや、だいじょうぶです」
「美味しいから、飲んで」
「おれはいざというときのために、酒を入れたくないんですよ。特に今は、水中の浮遊感で酔いやすくなりますから」
角切りの桃が入ったノンアルコールのモヒートを飲みながら悟空は言う。彼はそわそわしている。ラッシュガードを着ているとはいえ、玄奘の水着姿は刺激が強いせいだ。腰くらいまで水に浸かった玄奘は水飛沫を顔に散らしていて、瑞々しい魅力を増している。
悟空はタオルで玄奘の額を拭いてやった。悟空に世話をやかれることに慣れている玄奘はにこりと笑ってそれを受け入れたまま、話を続けた。
「『いざというとき』って例えば?」
「……玄奘が溺れたり、そこら辺のモブが玄奘をナンパしてきたり、玄奘のキスを賭けて遠泳対決が始まったり、そういう『いざというとき』ですよ。いつでも備えていないと」
ぼそぼそっとふてくされるように挙げた悟空の話を、玄奘はけらけらと笑って否定した。
「こんなのんびりとしたプールで、そんなこと起こるわけがないだろう?」
「ヤクザに誘拐されたことのある人には何も言う資格ないんですよ」
悟空だって本気で厄介事が起こるとは思っていないものの、玄奘は想定外のトラブルに巻き込まれがちなことは否定できない。やたらと美しい水着姿はプールサイドに咲く一凛の花そのものである。その美しさが何かの火種にならないよう、悟空は周囲に目を光らせていた。
「……それなら、私もアルコールの入っていないものにすればよかったな」
しゅん、と俯いてしまった玄奘に、悟空は慌ててその肩を抱き寄せた。恋人を落ち込ませたかったわけではない。
悟空は、少しためらってから玄奘の頬に手を添えた。尋ねるような瞳の玄奘に目を合わせ、微笑んでからそっと唇を合わせた。
「……んっ」
ふれていたのは数秒だったが、悟空はしっかりと唇の裏までなめとっていった。あっけにとられたような表情の玄奘を見て、悟空は唇の端で笑った。玄奘は、かぁと身体が熱くなる。人前でいちゃつくことをためらうことが多い悟空が、まさかキスをしてくるとは思わなかったのである。開放的なプールの雰囲気のせいだろうか。
「……ご、悟空……」
「たしかに、……少し桃の香りがするかも……です」
「もう……そんなほんの少しのキスで、わかるわけないだろう?」
ふくれつらをした玄奘の耳元で、悟空はささやいた。悟空は浮力を味方に、ふわふわと頼りない玄奘の腰を引き寄せた。もしかしてもう酔いが回ってきたのだろうか。
「じゃあ、もっと長いキスで試してみます?」
玄奘がお気に入りの低めの声で言ってくるのがたまらない。玄奘は甘いカクテルをさらにもう一口飲んでから、ゆっくりと頷いた。
「……う、うん、いいよ」
悟空は再び唇を近づけた。唇が合わさるかと思ったその瞬間、玄奘が急に腰を引いて距離をとった。呻きながら不安定な体勢になった玄奘を、悟空はとっさに腕を掴んで支える。
「悟空……、足が、……つった、みたい」
玄奘はうめいている。何か起こるだろうなと予想していた悟空は、盤石の体勢で玄奘の腰を抱えながら二人でプールサイドに上がった。そのまま足首と膝を固定し、ぐいんと力をかけてやる。
「だいじょうぶですか」
「うん……ごめん」
せっかく楽しく過ごしていたのに、とすまなそうな顔をする玄奘に、悟空は快活に笑って提案した。
「玄奘の足も心配ですし、そろそろプールからあがって部屋に行きましょうか」
「そう……だな」
まだプールに名残惜しそうな玄奘の髪をタオルで拭いてやりながら、悟空はぼそっと付け加える。
「部屋でさっきのキスの続きをしましょう。桃の味、おれにも分けてください」
「うん……、そうしよう」
玄奘は悟空の濡れた髪を優しく撫でながら答えた。
玄奘の潤んだ瞳は水面の反射で輝いている。悟空は眩しい恋人の手を引いた。
二人とも水着姿だが、マネージャーから日焼けをするなときつく言い渡されているため、上半身はラッシュガードを着用している。玄奘は長袖のプルオーバータイプ、悟空はいざというときに動きやすいようTシャツタイプである。
玄奘の前にあるのは薄桃色の液体が入った背の高いグラスである。一口含んでじっくりと味わってから玄奘は言った。
「このパッションフルーツのカクテルは、桃も少し入っているようだよ。甘いけど、ヨーグルトの酸味が爽やかだ。ねえ、ほら悟空、飲んでみて」
「いや、だいじょうぶです」
「美味しいから、飲んで」
「おれはいざというときのために、酒を入れたくないんですよ。特に今は、水中の浮遊感で酔いやすくなりますから」
角切りの桃が入ったノンアルコールのモヒートを飲みながら悟空は言う。彼はそわそわしている。ラッシュガードを着ているとはいえ、玄奘の水着姿は刺激が強いせいだ。腰くらいまで水に浸かった玄奘は水飛沫を顔に散らしていて、瑞々しい魅力を増している。
悟空はタオルで玄奘の額を拭いてやった。悟空に世話をやかれることに慣れている玄奘はにこりと笑ってそれを受け入れたまま、話を続けた。
「『いざというとき』って例えば?」
「……玄奘が溺れたり、そこら辺のモブが玄奘をナンパしてきたり、玄奘のキスを賭けて遠泳対決が始まったり、そういう『いざというとき』ですよ。いつでも備えていないと」
ぼそぼそっとふてくされるように挙げた悟空の話を、玄奘はけらけらと笑って否定した。
「こんなのんびりとしたプールで、そんなこと起こるわけがないだろう?」
「ヤクザに誘拐されたことのある人には何も言う資格ないんですよ」
悟空だって本気で厄介事が起こるとは思っていないものの、玄奘は想定外のトラブルに巻き込まれがちなことは否定できない。やたらと美しい水着姿はプールサイドに咲く一凛の花そのものである。その美しさが何かの火種にならないよう、悟空は周囲に目を光らせていた。
「……それなら、私もアルコールの入っていないものにすればよかったな」
しゅん、と俯いてしまった玄奘に、悟空は慌ててその肩を抱き寄せた。恋人を落ち込ませたかったわけではない。
悟空は、少しためらってから玄奘の頬に手を添えた。尋ねるような瞳の玄奘に目を合わせ、微笑んでからそっと唇を合わせた。
「……んっ」
ふれていたのは数秒だったが、悟空はしっかりと唇の裏までなめとっていった。あっけにとられたような表情の玄奘を見て、悟空は唇の端で笑った。玄奘は、かぁと身体が熱くなる。人前でいちゃつくことをためらうことが多い悟空が、まさかキスをしてくるとは思わなかったのである。開放的なプールの雰囲気のせいだろうか。
「……ご、悟空……」
「たしかに、……少し桃の香りがするかも……です」
「もう……そんなほんの少しのキスで、わかるわけないだろう?」
ふくれつらをした玄奘の耳元で、悟空はささやいた。悟空は浮力を味方に、ふわふわと頼りない玄奘の腰を引き寄せた。もしかしてもう酔いが回ってきたのだろうか。
「じゃあ、もっと長いキスで試してみます?」
玄奘がお気に入りの低めの声で言ってくるのがたまらない。玄奘は甘いカクテルをさらにもう一口飲んでから、ゆっくりと頷いた。
「……う、うん、いいよ」
悟空は再び唇を近づけた。唇が合わさるかと思ったその瞬間、玄奘が急に腰を引いて距離をとった。呻きながら不安定な体勢になった玄奘を、悟空はとっさに腕を掴んで支える。
「悟空……、足が、……つった、みたい」
玄奘はうめいている。何か起こるだろうなと予想していた悟空は、盤石の体勢で玄奘の腰を抱えながら二人でプールサイドに上がった。そのまま足首と膝を固定し、ぐいんと力をかけてやる。
「だいじょうぶですか」
「うん……ごめん」
せっかく楽しく過ごしていたのに、とすまなそうな顔をする玄奘に、悟空は快活に笑って提案した。
「玄奘の足も心配ですし、そろそろプールからあがって部屋に行きましょうか」
「そう……だな」
まだプールに名残惜しそうな玄奘の髪をタオルで拭いてやりながら、悟空はぼそっと付け加える。
「部屋でさっきのキスの続きをしましょう。桃の味、おれにも分けてください」
「うん……、そうしよう」
玄奘は悟空の濡れた髪を優しく撫でながら答えた。
玄奘の潤んだ瞳は水面の反射で輝いている。悟空は眩しい恋人の手を引いた。
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