15 / 19
和式便器に跨っておしがま
しおりを挟む
トイレトイレトイレ。ああもう、めっちゃトイレ行きたい。
俺は不自然に腰を後ろに引かせながら、その広大なフィールドをすたすたと忙しなく歩き回っていた。
知人に連れてこられた謎の大型展示イベント。多種多様な企業が打ち出す渾身のプロダクトが各ブースに立ち並び、未来のナンチャラ~とか新時代のナンチャラ~とか御託を並べた意識高い系イベントだ。そういう最新のビジネス?に熱心な知人と行動を共にしているうちに、気付けばすっかり数時間が経過していた。それこそ、トイレに行く暇もないほど。
2時間くらい前から尿意を覚えてはいた。が、何となく知人の邪魔をしたくなくて、暫くは我慢していたのである。けれどそれもいよいよ辛くなってきて、ついに「ちょ、ごめん!トイレ行かせて!!」とその場を駆け出してしまった。
(何時間連れ回す気だよ……!もうおしっこガチで限界……)
腹を軽く摩ると、じぃん、と下腹部にざわつきが広がる。駄目だ、もう長くもたない。急がないと……!
幸いトイレの場所はすぐわかりそうだ。どこにいてもトイレの位置が分かるように、そこかしこに表示がある。ここからは、……あと200メートルか。仕方ない。とにかく俺はトイレを目指すべく、人並みを掻き分け、展示場内をそそくさと歩き回っているわけであった。
(トイレトイレトイレ……、あっ、ここだ……!)
そうしてやっとこさ辿り着いたトイレ列、だったが。
(うう~~……結構並んでるな……)
ざっと見積もって30人くらいが列をなしている男子トイレ。おいおいマジかよ、イベントってこんなにトイレ混むのか?ディズニーだってこんなに並ばないだろうに、そんなにこのイベントって魅力的な展示会なのかよ。
とはいえ回転率は良いのか、俺がいそいそと最後尾についたその瞬間にも中から一人、すっきりした表情で出ていくのが見える。
このスピード感であれば、まあ15分やそこらで順番は回ってくるだろう。別のトイレに移動する余裕もない。とりあえず俺は、ゆさゆさと身体を上下に揺らしながらも、最後の壁だと信じて耐えることを決めたのであった。
*
(あともうちょっと……!)
あれから15分。思ったよりも進みは遅かったがどうにかこうにか列は動き、ちょうど男子トイレの入口あたりにまで到達していた。ここまでくればもうひと踏ん張り、この曲がり角を左に曲がればトイレに辿り着く。もうこの頃にはパタパタと小さな足踏みが止まらなくなっていて、時折ズボンをぐいっと引き上げるのを何度も繰り返していた。
(あとちょっと、だけど……)
……困ったことに、俺にはまだ大きな懸念点が残されていた。
俺は昔から、排泄に関して少し困った問題を抱えている。それも、ふたつ。
まずひとつは、立ちションができないということ。
シングルマザーだったということもあってか、幼少期から立ちションのやり方を教わってこなかったのである。立ちションは飛び散るから汚い、マナー違反だ、などと強く擦りこまれてきたせいか、家の洋式便器での立ちションはおろか小便器でさえも使えない体質となってしまった。
もちろん何度も挑戦はした。けれどその度に便器やズボンにびしゃびしゃと撒き散らす無様な結末に終わった。中高生の頃に格好つけようと小便器で用を足して、何度やらかしてきたことか。
そしてもうひとつは、そもそも誰かのいる環境で排泄できないということ。
これは小便器を使えない理由にも繋がっているが、誰かが傍にいると思うだけで一気に羞恥心が込み上げてどうしようもなくなる。というか、人前でちんこを出すこと自体、恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。だから連れションなんてもってのほか。トイレを使う時は必ず個室で、できれば隣に誰も入っていない個室で、しかも音姫をガンガンに流してでしか用を足せないのである。
とは言っても、誰かが近くにいるからと言って尿意が消えるわけではなく、ただ「恥ずかしい」という理由だけで我慢をしてしまうわけだから、理性が無駄に働く俺の身体には随分と不便を感じてきた。
要するに、列の先頭が回ってきたタイミングであっても、個室が空いていなければ俺は排泄に辿り着けない、ということである。
小便器に用がある人、個室に用がある人が一緒くたになったこの列では、順番通りに便器に辿り着けるとは限らない、というのが男子トイレの厄介なところだ。勇気のある人ならば前の人を抜かして個室に入る……なんてこともできるのかもしれないが、少なくとも俺にはできない。とにかく、今はただ祈るしかない……!
(あと数人、もう着くから……っ!ううう、おしっこしたいぃ……!)
皺ができるほどズボンをぐいぐい引き上げて股間に圧をかける。ちんこがむずむずして、思わず手が先端に伸びそうになるけれど、そんなみっともないことできるわけがない。己の筋肉で下半身を締め付けるしかなく、膝が内側に入って、どんどん腰が沈んでしまう。
ぶるる……っ♡♡♡
「ん、……ッ」
(だ、だめ、背中ぞくぞくして……!)
ツンとした、独特の臭気。誘われるように膨らむ欲求に、びりびりと背中に戦慄が走る。どくん、どくん、と膀胱が疼いて、だめ、マジでおしっこしたいっ!
もじもじと腰を揺すること数秒、また1人、手をハンカチで拭いながら出てくる人の姿。列が一歩前に進む。ああ、ここを曲がったらようやくトイレ……!
(頼む、個室空いていてくれ……!)
角を曲がる。視界の方向が変わり、トイレの蛍光灯がぱっと瞳に差し込む。頼む、頼むから、個室ガラ空きであってくれ……!
希望を抱きながら、奥の方に視線を向けた時。俺はその光景に、肩をぴくりと跳ねさせた。
「え、……!?」
(な、なんだこのトイレ!?)
小便器が並ぶ、その奥。本来は個室が位置するところ。にもかかわらず、だった。
(な、なんで、こっち便器も丸見えなんだ!?!?)
そこにあったのは、野ざらしになった和式便器の列。あろうことか、本来であれば個室に収まっているはずの便器がすべて、小便器と同様に晒されているのである。しかもひとつ残らず全て和式。理解が追い付かず、俺は思わず目を見開いて硬直した。
(え、え……?これ、なに、どういうこと……!?)
なんで、どうして。これは悪い夢か?パニックになって周りを見渡すけれど、俺の前に並んでいる人はまるで素知らぬ顔。いや驚けよこの状況。あきらかにおかしいだろ!?
「うわ、このトイレほんとに実在したんだ(笑)」
「性犯罪防止のためって、逆効果じゃね(笑)」
後ろに並んでいた二人組の馬鹿にしたような声にはっとする。なるほど、これもこの新時代のナンチャラとかいう阿保らしいイベントの一環というわけか。ふざけるな、排泄はお遊びじゃねえ。緊急性のある行為だろ。しかも個室こそ腹下した奴が駆け込む場所だってのに。それをどっかのお偉いさんのエゴのためにエンタメに使われるなんて、冗談じゃねえ……!
やけに列の進みが遅い原因はコレのせいだったようだ。当たり前に誰も和式便器には近寄らない。たった5つの小便器で列を捌いているのだから、そりゃそうなるはずだ。阿保だ、このトイレを計画した奴、止めなかった奴、全員阿保だ……!
(どうしよう、でも、もう別のトイレに移動するなんて……!)
すっかり個室で用を足そうと思っていた俺にとって、今の状況はまさに大ピンチだった。立ちションができない、でも人前で排泄もできない。でも今はどちらもコンプリートしてしまっている状況。小便器で立ちションか、丸見えの便器で座りションか。
(和式は使ったことがある、けど……っ!)
和式だって得意なわけではない。でも立ちションは完全に「できない」。
二者択一、どちらかしか道はない。
「ぅ、うぅぅ……ッ!」
(やばい、便器見たらおしっこが……!)
骨盤の辺りからぞくぞくと湧き上がってくる尿意。ここがトイレだと思った瞬間、脳が反射的に「そろそろ」だと勝手に告げて、排尿を促してくる。両の内腿をこれまでにないくらいぎゅううう!ときつく押しつけて、下半身の筋肉をガチガチに固める。でも、もうちんこの先が熱くなって……!
そうこうしているうちにも順番は迫ってくる。前に並んでいた一人が、一直線に小便器に向かう。とうとう俺の番は次だ。あんなにも待ち遠しかった列の先頭なのに、どうしよう、どうすれば。
(和式の方が……っ、いやでもまだ立ちションの方が見えないけど、でも……!)
今まで何回も何回もチャレンジしてきた立ちション。でもいつも、何回も何回もおしっこでびしゃびしゃに汚してきた。ズボンも、靴も、床も、便器も。和式だったらとりあえずその心配はない。でもここの和式は、頭が前を向くような配置───つまり壁のない方向に向かって開脚しなければならない。前隠しがあるとはいえ、公衆の面前で堂々と股を開くなんて。
途端。むずむずむずっ!!と先端が激しく戦慄いた。股間がカッと熱を帯びる感覚に、咄嗟にそこを小刻みに摘まんでしまった。やばい、もう、きてる、おしっこが……!!
刻一刻と決断が迫られているのに、決められない。どうしよう、どうしよう。焦りが尿意を加速させて、小さな足踏みが止まらない。膀胱の水位がぐんぐん上がる感覚。小便器から一人去る。一つ空いた、便器。駄目だ、早く決めないと。
……そんな時、天井から軽やかなチャイムが降り注いだ。丁度真上にあるスピーカーからだ。
『本日の展示はただ今の時間をもちまして終了とさせていただきます───』
その流暢なアナウンスに、俺はふと気が付いた。
振り返れば、俺の後ろに並んでいるのはあと7,8人。このアナウンスが言う通りイベントが終わった今、この後ろに並ぶ奴はきっといない……!
(最後の一人がいなくなるのを待ってれば……!)
おそらくこの状況で立ちションするのは無理だ。冷静に出せる自信がない。であれば、もう覚悟を決めるしかなかった。
目の前にひとつ空いた小便器を無視して、和式便器の方に歩みを進める。後ろの奴がマジか見たいな顔をしているけれど、気にしていないフリだ。漏らすわけにも、撒き散らすわけにもいかないのだから。
一段上がったところに掘られた和式便器。絶対に誰も使っていないであろう、真っ白でピカピカの便器だ。俺は滑る指を叱咤しながらベルトを外し、ズボンを膝下までずり下ろす。
「う、……っ」
(はずかしい、けど……!)
すっぽんぽんになった下半身。ガバリと両脚を開く。すると今まで必死に締め付けてきた内腿の力が弛緩してしまい、堰き止められていたおしっこが急降下してきた。まずい、このまま出るっ!!俺は股の間にぶら下がったちんこを、両手でぎゅううっ!と握り締めた。
(この体勢やばい!おしっこ出そう!!)
(はやく、はやくっ!)
完全な放尿体勢で我慢するのは、想定していたよりもはるかに苦行であった。全く股間に力が入らない、むしろ「放尿してください」と言わんばかりの姿勢だ。おしっこが出口を目掛けてどっと押し寄せる感覚。でも駄目だ、まだまだ沢山の人がすぐそこにいる。あちらの小便器は壁を向いているが、俺の和式便器は壁を向くことは許されない。真正面には誰もいないとはいえ、開かれた空間に向かって開脚する、とてつもない羞恥心。絶対に出すものかと、モミモミモミモミ、俺は性器を全力で揉みしだく。
けれどそんな努力も虚しく、どくんっ♡どくんっ♡と際限なく湧き上がってくる尿意。
ぽたっ、ぽたっ……
「く、うううぅ……ッッ!!!」
ツンとした欲求が股間に走った瞬間、握っている尿道の隙間を縫って雫が垂れる。猛烈な尿意。思わず目をぎゅっと瞑って、激しい欲求の波を凌ぐ。
(で、でる、ッ、はやく、みんないなくなって……!)
もみもみ、ぐにぐに、先端と竿を交互に揉みしだき、高速で握り潰す。腰を八の字にゆさゆさとくねらせる。膀胱の中身が荒波を立てて尿意を増幅させる。膀胱容量120%超え。耐えろ、耐えろ、まだ駄目だ、あっあっあっ、おしっこしたい、お、お、おしっこ!!!
(おしっこ……!!!)
ちょろろろ……
「ぁ、……ッ!」
一筋の黄色い液体が着水する音。反射的にちんこをもみくちゃに捏ね繰り回す。放出は止まったけれど尿意は全く治まらない。出したい、おしっこしたい、思いっ切り出したい。
ここはトイレなのに、便器に跨っているのに、遮るものは何もないのに。たったひとつ、おしっこをしている姿を見られたくない、おしっこの音を聞かれたくないという羞恥心だけが理性を引き留める。
列はなくなった。残りは小便器で用を足している4人と、手を洗っている2人と、これから用を足そうとベルトに手を掛けている1人。俺だけがただひとり、便器の上で腰を揺らしておしっこの猛攻に耐えている。
(耐えろっ、我慢我慢我慢……!!)
もみもみ、わしゃわしゃ、擦り切れそうなほどちんこを刺激する。一瞬でもこの手を緩めたら溢れ出る。握って離して、握って離して、たまに絞るくらい握り潰して。誰かがこちらを覗きに来たら一巻の終わりだ。こんな頭のおかしいトイレに跨って、腰をくねくね捩らせて、隠すことさえ許されず堂々と股を広げるなんて、不審者以外の何者でもないのだから。
しゅいいぃぃ……
それでも耐え切れず漏れ出てしまうおしっこ。便器の中の水がわずかに濁る。
(はやくっ、おしっこしたい、おしっこ、トイレッ)
おしっこの体勢なのにおしっこできない。目の前に便器があるのにおしっこできない。もう尿意は限界で、自分の意志に反しておしっこが漏れてしまいそうな感覚に、気付けば涙までもが込み上げていた。
(あ、あ、あっ、あと5人、でる、でちゃう、おしっこの音聞かれちゃう、見られちゃう!!!)
(頼むからはやく、あ、あ、あ、ッ、はやくしてほんとに頼むから!!!!)
すると小便器の方から「はあぁ…………」と深い溜息が響いた。その直後。
じょおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッ!!!!!
「ッッ!?!?!?」
最後の1人、ベルトを外し終わった青年が、怒涛の勢いで放尿を始めたのである。
(ま、まって、音が、あっあっあっ、だめ、おしっこが、でる、出る出る出る出るッッッ)
ちょろろろろろろ……
「~~~~~~~~~~~ッッッッッッ!!!!!」
ジェットストリームのような豪快な水音に、誘われないわけがなかった。これまでの比じゃないほどの強烈な尿意が下半身に殴りかかる。揉んでも揉んでも尿意が引いてくれない。むしろ青年の放つおしっこの音に、匂いに合わせて、1秒ごとに欲求が膨らんでいく気さえする。
(我慢しろ、おしっこ見られる、やだ、やだやだやだやだ……ッ!!!)
ちょろろ、しぃぃぃ……
(トイレなのに、便器に座ってるのに、トイレしたいのに!!!)
(思いっ切りしたい、じょおおぉぉって、おしっこしたいのにぃぃ!!!)
じょろろろろッッ!!!
「ッ!!!!」
これはあちらの青年の出した音ではない。正真正銘、俺の股間からおしっこが噴き出した音だ。
「ふ、ぐうぅぅぅ……ッ!!!」
(も、も、漏れるッッッッ!!!!!)
もはやパニック状態だった。青年のおしっこはまだ止まらない。相当我慢していたのだろう。でもこっちだってもう限界だ。握り締めた手のひらは、汗だか何だかでびしゃびしゃ。揉む仕草が止められない。お願いだから、はやくいなくなってくれ!!!!
もう少しおしがま
https://hare-hare.fanbox.cc/posts/9745710
俺は不自然に腰を後ろに引かせながら、その広大なフィールドをすたすたと忙しなく歩き回っていた。
知人に連れてこられた謎の大型展示イベント。多種多様な企業が打ち出す渾身のプロダクトが各ブースに立ち並び、未来のナンチャラ~とか新時代のナンチャラ~とか御託を並べた意識高い系イベントだ。そういう最新のビジネス?に熱心な知人と行動を共にしているうちに、気付けばすっかり数時間が経過していた。それこそ、トイレに行く暇もないほど。
2時間くらい前から尿意を覚えてはいた。が、何となく知人の邪魔をしたくなくて、暫くは我慢していたのである。けれどそれもいよいよ辛くなってきて、ついに「ちょ、ごめん!トイレ行かせて!!」とその場を駆け出してしまった。
(何時間連れ回す気だよ……!もうおしっこガチで限界……)
腹を軽く摩ると、じぃん、と下腹部にざわつきが広がる。駄目だ、もう長くもたない。急がないと……!
幸いトイレの場所はすぐわかりそうだ。どこにいてもトイレの位置が分かるように、そこかしこに表示がある。ここからは、……あと200メートルか。仕方ない。とにかく俺はトイレを目指すべく、人並みを掻き分け、展示場内をそそくさと歩き回っているわけであった。
(トイレトイレトイレ……、あっ、ここだ……!)
そうしてやっとこさ辿り着いたトイレ列、だったが。
(うう~~……結構並んでるな……)
ざっと見積もって30人くらいが列をなしている男子トイレ。おいおいマジかよ、イベントってこんなにトイレ混むのか?ディズニーだってこんなに並ばないだろうに、そんなにこのイベントって魅力的な展示会なのかよ。
とはいえ回転率は良いのか、俺がいそいそと最後尾についたその瞬間にも中から一人、すっきりした表情で出ていくのが見える。
このスピード感であれば、まあ15分やそこらで順番は回ってくるだろう。別のトイレに移動する余裕もない。とりあえず俺は、ゆさゆさと身体を上下に揺らしながらも、最後の壁だと信じて耐えることを決めたのであった。
*
(あともうちょっと……!)
あれから15分。思ったよりも進みは遅かったがどうにかこうにか列は動き、ちょうど男子トイレの入口あたりにまで到達していた。ここまでくればもうひと踏ん張り、この曲がり角を左に曲がればトイレに辿り着く。もうこの頃にはパタパタと小さな足踏みが止まらなくなっていて、時折ズボンをぐいっと引き上げるのを何度も繰り返していた。
(あとちょっと、だけど……)
……困ったことに、俺にはまだ大きな懸念点が残されていた。
俺は昔から、排泄に関して少し困った問題を抱えている。それも、ふたつ。
まずひとつは、立ちションができないということ。
シングルマザーだったということもあってか、幼少期から立ちションのやり方を教わってこなかったのである。立ちションは飛び散るから汚い、マナー違反だ、などと強く擦りこまれてきたせいか、家の洋式便器での立ちションはおろか小便器でさえも使えない体質となってしまった。
もちろん何度も挑戦はした。けれどその度に便器やズボンにびしゃびしゃと撒き散らす無様な結末に終わった。中高生の頃に格好つけようと小便器で用を足して、何度やらかしてきたことか。
そしてもうひとつは、そもそも誰かのいる環境で排泄できないということ。
これは小便器を使えない理由にも繋がっているが、誰かが傍にいると思うだけで一気に羞恥心が込み上げてどうしようもなくなる。というか、人前でちんこを出すこと自体、恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。だから連れションなんてもってのほか。トイレを使う時は必ず個室で、できれば隣に誰も入っていない個室で、しかも音姫をガンガンに流してでしか用を足せないのである。
とは言っても、誰かが近くにいるからと言って尿意が消えるわけではなく、ただ「恥ずかしい」という理由だけで我慢をしてしまうわけだから、理性が無駄に働く俺の身体には随分と不便を感じてきた。
要するに、列の先頭が回ってきたタイミングであっても、個室が空いていなければ俺は排泄に辿り着けない、ということである。
小便器に用がある人、個室に用がある人が一緒くたになったこの列では、順番通りに便器に辿り着けるとは限らない、というのが男子トイレの厄介なところだ。勇気のある人ならば前の人を抜かして個室に入る……なんてこともできるのかもしれないが、少なくとも俺にはできない。とにかく、今はただ祈るしかない……!
(あと数人、もう着くから……っ!ううう、おしっこしたいぃ……!)
皺ができるほどズボンをぐいぐい引き上げて股間に圧をかける。ちんこがむずむずして、思わず手が先端に伸びそうになるけれど、そんなみっともないことできるわけがない。己の筋肉で下半身を締め付けるしかなく、膝が内側に入って、どんどん腰が沈んでしまう。
ぶるる……っ♡♡♡
「ん、……ッ」
(だ、だめ、背中ぞくぞくして……!)
ツンとした、独特の臭気。誘われるように膨らむ欲求に、びりびりと背中に戦慄が走る。どくん、どくん、と膀胱が疼いて、だめ、マジでおしっこしたいっ!
もじもじと腰を揺すること数秒、また1人、手をハンカチで拭いながら出てくる人の姿。列が一歩前に進む。ああ、ここを曲がったらようやくトイレ……!
(頼む、個室空いていてくれ……!)
角を曲がる。視界の方向が変わり、トイレの蛍光灯がぱっと瞳に差し込む。頼む、頼むから、個室ガラ空きであってくれ……!
希望を抱きながら、奥の方に視線を向けた時。俺はその光景に、肩をぴくりと跳ねさせた。
「え、……!?」
(な、なんだこのトイレ!?)
小便器が並ぶ、その奥。本来は個室が位置するところ。にもかかわらず、だった。
(な、なんで、こっち便器も丸見えなんだ!?!?)
そこにあったのは、野ざらしになった和式便器の列。あろうことか、本来であれば個室に収まっているはずの便器がすべて、小便器と同様に晒されているのである。しかもひとつ残らず全て和式。理解が追い付かず、俺は思わず目を見開いて硬直した。
(え、え……?これ、なに、どういうこと……!?)
なんで、どうして。これは悪い夢か?パニックになって周りを見渡すけれど、俺の前に並んでいる人はまるで素知らぬ顔。いや驚けよこの状況。あきらかにおかしいだろ!?
「うわ、このトイレほんとに実在したんだ(笑)」
「性犯罪防止のためって、逆効果じゃね(笑)」
後ろに並んでいた二人組の馬鹿にしたような声にはっとする。なるほど、これもこの新時代のナンチャラとかいう阿保らしいイベントの一環というわけか。ふざけるな、排泄はお遊びじゃねえ。緊急性のある行為だろ。しかも個室こそ腹下した奴が駆け込む場所だってのに。それをどっかのお偉いさんのエゴのためにエンタメに使われるなんて、冗談じゃねえ……!
やけに列の進みが遅い原因はコレのせいだったようだ。当たり前に誰も和式便器には近寄らない。たった5つの小便器で列を捌いているのだから、そりゃそうなるはずだ。阿保だ、このトイレを計画した奴、止めなかった奴、全員阿保だ……!
(どうしよう、でも、もう別のトイレに移動するなんて……!)
すっかり個室で用を足そうと思っていた俺にとって、今の状況はまさに大ピンチだった。立ちションができない、でも人前で排泄もできない。でも今はどちらもコンプリートしてしまっている状況。小便器で立ちションか、丸見えの便器で座りションか。
(和式は使ったことがある、けど……っ!)
和式だって得意なわけではない。でも立ちションは完全に「できない」。
二者択一、どちらかしか道はない。
「ぅ、うぅぅ……ッ!」
(やばい、便器見たらおしっこが……!)
骨盤の辺りからぞくぞくと湧き上がってくる尿意。ここがトイレだと思った瞬間、脳が反射的に「そろそろ」だと勝手に告げて、排尿を促してくる。両の内腿をこれまでにないくらいぎゅううう!ときつく押しつけて、下半身の筋肉をガチガチに固める。でも、もうちんこの先が熱くなって……!
そうこうしているうちにも順番は迫ってくる。前に並んでいた一人が、一直線に小便器に向かう。とうとう俺の番は次だ。あんなにも待ち遠しかった列の先頭なのに、どうしよう、どうすれば。
(和式の方が……っ、いやでもまだ立ちションの方が見えないけど、でも……!)
今まで何回も何回もチャレンジしてきた立ちション。でもいつも、何回も何回もおしっこでびしゃびしゃに汚してきた。ズボンも、靴も、床も、便器も。和式だったらとりあえずその心配はない。でもここの和式は、頭が前を向くような配置───つまり壁のない方向に向かって開脚しなければならない。前隠しがあるとはいえ、公衆の面前で堂々と股を開くなんて。
途端。むずむずむずっ!!と先端が激しく戦慄いた。股間がカッと熱を帯びる感覚に、咄嗟にそこを小刻みに摘まんでしまった。やばい、もう、きてる、おしっこが……!!
刻一刻と決断が迫られているのに、決められない。どうしよう、どうしよう。焦りが尿意を加速させて、小さな足踏みが止まらない。膀胱の水位がぐんぐん上がる感覚。小便器から一人去る。一つ空いた、便器。駄目だ、早く決めないと。
……そんな時、天井から軽やかなチャイムが降り注いだ。丁度真上にあるスピーカーからだ。
『本日の展示はただ今の時間をもちまして終了とさせていただきます───』
その流暢なアナウンスに、俺はふと気が付いた。
振り返れば、俺の後ろに並んでいるのはあと7,8人。このアナウンスが言う通りイベントが終わった今、この後ろに並ぶ奴はきっといない……!
(最後の一人がいなくなるのを待ってれば……!)
おそらくこの状況で立ちションするのは無理だ。冷静に出せる自信がない。であれば、もう覚悟を決めるしかなかった。
目の前にひとつ空いた小便器を無視して、和式便器の方に歩みを進める。後ろの奴がマジか見たいな顔をしているけれど、気にしていないフリだ。漏らすわけにも、撒き散らすわけにもいかないのだから。
一段上がったところに掘られた和式便器。絶対に誰も使っていないであろう、真っ白でピカピカの便器だ。俺は滑る指を叱咤しながらベルトを外し、ズボンを膝下までずり下ろす。
「う、……っ」
(はずかしい、けど……!)
すっぽんぽんになった下半身。ガバリと両脚を開く。すると今まで必死に締め付けてきた内腿の力が弛緩してしまい、堰き止められていたおしっこが急降下してきた。まずい、このまま出るっ!!俺は股の間にぶら下がったちんこを、両手でぎゅううっ!と握り締めた。
(この体勢やばい!おしっこ出そう!!)
(はやく、はやくっ!)
完全な放尿体勢で我慢するのは、想定していたよりもはるかに苦行であった。全く股間に力が入らない、むしろ「放尿してください」と言わんばかりの姿勢だ。おしっこが出口を目掛けてどっと押し寄せる感覚。でも駄目だ、まだまだ沢山の人がすぐそこにいる。あちらの小便器は壁を向いているが、俺の和式便器は壁を向くことは許されない。真正面には誰もいないとはいえ、開かれた空間に向かって開脚する、とてつもない羞恥心。絶対に出すものかと、モミモミモミモミ、俺は性器を全力で揉みしだく。
けれどそんな努力も虚しく、どくんっ♡どくんっ♡と際限なく湧き上がってくる尿意。
ぽたっ、ぽたっ……
「く、うううぅ……ッッ!!!」
ツンとした欲求が股間に走った瞬間、握っている尿道の隙間を縫って雫が垂れる。猛烈な尿意。思わず目をぎゅっと瞑って、激しい欲求の波を凌ぐ。
(で、でる、ッ、はやく、みんないなくなって……!)
もみもみ、ぐにぐに、先端と竿を交互に揉みしだき、高速で握り潰す。腰を八の字にゆさゆさとくねらせる。膀胱の中身が荒波を立てて尿意を増幅させる。膀胱容量120%超え。耐えろ、耐えろ、まだ駄目だ、あっあっあっ、おしっこしたい、お、お、おしっこ!!!
(おしっこ……!!!)
ちょろろろ……
「ぁ、……ッ!」
一筋の黄色い液体が着水する音。反射的にちんこをもみくちゃに捏ね繰り回す。放出は止まったけれど尿意は全く治まらない。出したい、おしっこしたい、思いっ切り出したい。
ここはトイレなのに、便器に跨っているのに、遮るものは何もないのに。たったひとつ、おしっこをしている姿を見られたくない、おしっこの音を聞かれたくないという羞恥心だけが理性を引き留める。
列はなくなった。残りは小便器で用を足している4人と、手を洗っている2人と、これから用を足そうとベルトに手を掛けている1人。俺だけがただひとり、便器の上で腰を揺らしておしっこの猛攻に耐えている。
(耐えろっ、我慢我慢我慢……!!)
もみもみ、わしゃわしゃ、擦り切れそうなほどちんこを刺激する。一瞬でもこの手を緩めたら溢れ出る。握って離して、握って離して、たまに絞るくらい握り潰して。誰かがこちらを覗きに来たら一巻の終わりだ。こんな頭のおかしいトイレに跨って、腰をくねくね捩らせて、隠すことさえ許されず堂々と股を広げるなんて、不審者以外の何者でもないのだから。
しゅいいぃぃ……
それでも耐え切れず漏れ出てしまうおしっこ。便器の中の水がわずかに濁る。
(はやくっ、おしっこしたい、おしっこ、トイレッ)
おしっこの体勢なのにおしっこできない。目の前に便器があるのにおしっこできない。もう尿意は限界で、自分の意志に反しておしっこが漏れてしまいそうな感覚に、気付けば涙までもが込み上げていた。
(あ、あ、あっ、あと5人、でる、でちゃう、おしっこの音聞かれちゃう、見られちゃう!!!)
(頼むからはやく、あ、あ、あ、ッ、はやくしてほんとに頼むから!!!!)
すると小便器の方から「はあぁ…………」と深い溜息が響いた。その直後。
じょおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッ!!!!!
「ッッ!?!?!?」
最後の1人、ベルトを外し終わった青年が、怒涛の勢いで放尿を始めたのである。
(ま、まって、音が、あっあっあっ、だめ、おしっこが、でる、出る出る出る出るッッッ)
ちょろろろろろろ……
「~~~~~~~~~~~ッッッッッッ!!!!!」
ジェットストリームのような豪快な水音に、誘われないわけがなかった。これまでの比じゃないほどの強烈な尿意が下半身に殴りかかる。揉んでも揉んでも尿意が引いてくれない。むしろ青年の放つおしっこの音に、匂いに合わせて、1秒ごとに欲求が膨らんでいく気さえする。
(我慢しろ、おしっこ見られる、やだ、やだやだやだやだ……ッ!!!)
ちょろろ、しぃぃぃ……
(トイレなのに、便器に座ってるのに、トイレしたいのに!!!)
(思いっ切りしたい、じょおおぉぉって、おしっこしたいのにぃぃ!!!)
じょろろろろッッ!!!
「ッ!!!!」
これはあちらの青年の出した音ではない。正真正銘、俺の股間からおしっこが噴き出した音だ。
「ふ、ぐうぅぅぅ……ッ!!!」
(も、も、漏れるッッッッ!!!!!)
もはやパニック状態だった。青年のおしっこはまだ止まらない。相当我慢していたのだろう。でもこっちだってもう限界だ。握り締めた手のひらは、汗だか何だかでびしゃびしゃ。揉む仕草が止められない。お願いだから、はやくいなくなってくれ!!!!
もう少しおしがま
https://hare-hare.fanbox.cc/posts/9745710
3
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる