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第三章 虚ろいの秋雨
意識
しおりを挟むそんな筈、ない。
そういうのとは、全然違う。
だって、樹さんは大空のお父さんだし。
そもそも僕が好きなのは、大空だし……
……それに、もし仮にそうだったとしても。
そんなの、許される筈ない……
「………まぁ、いいや」
俯いたまま答えずにいれば、携帯灰皿に煙草を揉み消した魁斗が、柔らかな声を発しながら僕に優しく微笑む。
「そろそろ、帰ろっか……」
立ち上がってお尻を叩く。
缶コーヒーを豪快に傾ける魁斗が視界に入り、つられて空を見上げる。
周りがそんなに明るくないせいか、星がよく見える。綺麗な半月。ビルとビルに挟まれ、低い位置にあるせいか。いつもより大きく、模様まではっきりと見える。
これから満ちていくのか。それとも、欠けていくのか……
先の事を思うと、不安で胸が苦しい。
「送ろっか?」
「……あ、全然……大丈夫です」
「そう?」
結局、一度も開けなかったミルクティー。それを、パーカーのポケットに仕舞う。
「じゃあね」と片手を軽く上げて立ち去る魁斗に、おずおずと手を振り返す。
「……」
──好き。
僕が、樹さんを好き、だなんて──
そんなの、全然……意識した事なんてなかった。
樹さんに抱く感情の全ては、大空に似ているせいだとばかり……思ってたから。
確かに。まだ顔も知らない……ネット上でやり取りをしていた時から、好意はあった。
でもそれは、僕の話を聞いてくれて、受け止めてくれたからで……
「……」
もし、これが好きという感情なら……
大空の時とは、全然違う。
だからこそ、違う筈なのに。
なのに……どうしてちゃんと、否定できなかったんだろう……
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