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第三章 虚ろいの秋雨
衣装合わせ
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×××
「………ねぇ、白石くん」
帰り支度をして席を立つ僕に、石田さんが話し掛ける。
学校全体が、文化祭ムードで盛り上がっている中、このクラスだけは何処か冷めていて。
教室内の飾り付けや衣装は、石田さんを中心に、熱心な一部の女子達によって進められていた。
その中には当然、佐藤さんの姿も。
「衣装とか一度合わせておきたいから、ちょっと残っててくれる?」
「……え、……うん」
手にしていた鞄を机上に置き、引いたままの椅子に座り直す。
他の人には声を掛けていないようで。同じ売り子係の人達が、帰りに何処へ寄ろうかと話しながら出て行く。
*
ギャザーのたっぷり入った、パステルピンクのワンピース。きゅっと絞ったウエストライン。そのフロントには、紐で縛るタイプの可愛らしいリボン。
足下がスースーして、何だか変な感じ。
「……うん。いい感じ」
着替え終わり、背を向けたままの石田さんに声を掛けようとして、先に振り返られる。
「ごめんね。白石くんだけ、チェックが遅くなっちゃって」
「……、ううん……」
答えながら俯けば、近寄った石田さんが僕を下から覗き込む。
「ねぇ。この服、誰が選んだと思う?」
その表情は、どこか含んでいて。何て答えていいか解らずにいれば、石田さんの口角が緩く持ち上がり、得意気な顔付きに変わる。
「なんと、猛くん。……意外でしょ?!」
「……」
「先週の日曜日、皆で集まった時にね。文化祭の衣装でも決めようかって話になって。
それでね。販売担当のみんなをイメージしながら、集まったみんなで服を選んでたんだけど……どうしても白石くんのだけが決まらなくて。そしたら、あの猛くんが、『白石には、これが似合う』って──」
「……」
今井くんが……そんな事……
想像しただけで、恥ずかしい。
もう関係は終わった筈なのに……まだ僕が、今井くんの中で特別な存在になってるような気がして。
「……ねぇ。ちょっとだけ、化粧してみてもいい?」
「………ねぇ、白石くん」
帰り支度をして席を立つ僕に、石田さんが話し掛ける。
学校全体が、文化祭ムードで盛り上がっている中、このクラスだけは何処か冷めていて。
教室内の飾り付けや衣装は、石田さんを中心に、熱心な一部の女子達によって進められていた。
その中には当然、佐藤さんの姿も。
「衣装とか一度合わせておきたいから、ちょっと残っててくれる?」
「……え、……うん」
手にしていた鞄を机上に置き、引いたままの椅子に座り直す。
他の人には声を掛けていないようで。同じ売り子係の人達が、帰りに何処へ寄ろうかと話しながら出て行く。
*
ギャザーのたっぷり入った、パステルピンクのワンピース。きゅっと絞ったウエストライン。そのフロントには、紐で縛るタイプの可愛らしいリボン。
足下がスースーして、何だか変な感じ。
「……うん。いい感じ」
着替え終わり、背を向けたままの石田さんに声を掛けようとして、先に振り返られる。
「ごめんね。白石くんだけ、チェックが遅くなっちゃって」
「……、ううん……」
答えながら俯けば、近寄った石田さんが僕を下から覗き込む。
「ねぇ。この服、誰が選んだと思う?」
その表情は、どこか含んでいて。何て答えていいか解らずにいれば、石田さんの口角が緩く持ち上がり、得意気な顔付きに変わる。
「なんと、猛くん。……意外でしょ?!」
「……」
「先週の日曜日、皆で集まった時にね。文化祭の衣装でも決めようかって話になって。
それでね。販売担当のみんなをイメージしながら、集まったみんなで服を選んでたんだけど……どうしても白石くんのだけが決まらなくて。そしたら、あの猛くんが、『白石には、これが似合う』って──」
「……」
今井くんが……そんな事……
想像しただけで、恥ずかしい。
もう関係は終わった筈なのに……まだ僕が、今井くんの中で特別な存在になってるような気がして。
「……ねぇ。ちょっとだけ、化粧してみてもいい?」
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