Rain -拗らせた恋の行く末は…-

真田晃

文字の大きさ
62 / 107
第三章 虚ろいの秋雨

懐かしい温もり2

しおりを挟む

言葉とは裏腹に、大きな手が僕の髪をそっと撫でる。

「もし俺が、本気で襲ったとしたら……お前、どうするつもりだよ」
「……」

どうするって……
今井くんとの関係が、全て無かったものにされてない事が……嬉しくて。
全然そんな事、思いもしなかった。
それに……

「……多分、しないよ。だって、今井くんにはもう……石田さんが、いるみたいだから……」
「はぁ?!……なに寝ぼけた事言ってんだ」
「……」
「……まさか、この前の事か?」

眇めた今井の眉間に、深く刻まれる縦皺。
こくん、と小さく頷けば、深い溜め息が漏れる。

「あれは、文化祭で使う小道具の買い出しに行っただけだ。変に勘繰ってんじゃねぇよ」
「……」
「俺は、今だってお前を──」

ぶっきらぼうに言い放った後、視線がスッと外される。
鋭く吊り上がった目。だけどその頬は、少しだけ赤く染まっていて。
その反応が、……可愛い。

不思議。
付き合ってた時は、あんなに怖くて。
苦しくて。辛くて。
今井くんの隣が、こんなに心地良いなんて……知らなかった。

もう少し早く、知りたかったな……


「……!」

俯いた僕の項に掛かる、今井くんの手。
それに気付いて顔を上げれば、瞳を柔く閉じた今井くんが、スッと唇を寄せて……

ふわりと香る、今井くんの匂い。
僕を抱き止める、大きな手。
深く重なる、唇。

熱い舌が差し込まれれば……次第に蘇っていく、熱い夏の記憶。

舌が絡まる度に、時間が巻き戻り……
あの夏の終わりに重ねた劣情が、脳内を支配していく。
……酷く懐かしくて、切なくて……心が擽ったい。


「………実雨」

唇が、ゆっくりと離れていく。
その隙間に吹き込む、冷たい秋風。
与えられた熱は、現実を思い知らされる度に、簡単に風の中に消えていく──

「何で、受け入れんだよ」
「……」
「ちゃんと拒否らねぇと、本気で食っちまうぞ」
「………うん」
「うん、って。……お前、ちゃんと意味解ってんのかよ」

呆れたような、困ったような表情かお
見た目は厳つくて。ガタイも良くて。目だって鋭く吊り上がってて、怖い人にしか見えないのに。……可愛い。

「──うん、いいよ。今井くんがそうしたいなら」
「馬鹿、お前……」

スッと、僕から手が離れる。
途端にできる、今井くんとの距離。
たった数センチ。
だけど、もう……それを埋めるだけの理由が見つからない。


「……なぁ、実雨」
「………」
「渡してぇもんがある」

ガシガシと後頭部を掻き、視線を逸らしたまま、今井が続けて言う。

「今日の帰り──俺んちの近くの喫茶店、解るだろ。そこで、待っててくれ」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サラリーマン二人、酔いどれ同伴

BL
久しぶりの飲み会! 楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。 「……え、やった?」 「やりましたね」 「あれ、俺は受け?攻め?」 「受けでしたね」 絶望する佐万里! しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ! こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。

目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?

綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。 湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。 そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。 その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

先輩のことが好きなのに、

未希かずは(Miki)
BL
生徒会長・鷹取要(たかとりかなめ)に憧れる上川陽汰(かみかわはるた)。密かに募る想いが通じて無事、恋人に。二人だけの秘密の恋は甘くて幸せ。だけど、少しずつ要との距離が開いていく。 何で? 先輩は僕のこと嫌いになったの?   切なさと純粋さが交錯する、青春の恋物語。 《美形✕平凡》のすれ違いの恋になります。 要(高3)生徒会長。スパダリだけど……。 陽汰(高2)書記。泣き虫だけど一生懸命。 夏目秋良(高2)副会長。陽汰の幼馴染。 5/30日に少しだけ順番を変えたりしました。内容は変わっていませんが、読み途中の方にはご迷惑をおかけしました。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

双葉の恋 -crossroads of fate-

真田晃
BL
バイト先である、小さな喫茶店。 いつもの席でいつもの珈琲を注文する営業マンの彼に、僕は淡い想いを寄せていた。 しかし、恋人に酷い捨てられ方をされた過去があり、その傷が未だ癒えずにいる。 営業マンの彼、誠のと距離が縮まる中、僕を捨てた元彼、悠と突然の再会。 僕を捨てた筈なのに。変わらぬ態度と初めて見る殆さに、無下に突き放す事が出来ずにいた。 誠との関係が進展していく中、悠と過ごす内に次第に明らかになっていくあの日の『真実』。 それは余りに残酷な運命で、僕の想像を遥かに越えるものだった── ※これは、フィクションです。 想像で描かれたものであり、現実とは異なります。 ** 旧概要 バイト先の喫茶店にいつも来る スーツ姿の気になる彼。 僕をこの道に引き込んでおきながら 結婚してしまった元彼。 その間で悪戯に揺れ動く、僕の運命のお話。 僕たちの行く末は、なんと、お題次第!? (お題次第で話が進みますので、詳細に書けなかったり、飛んだり、やきもきする所があるかと思います…ご了承を) *ブログにて、キャライメージ画を載せております。(メーカーで作成) もしご興味がありましたら、見てやって下さい。 あるアプリでお題小説チャレンジをしています 毎日チームリーダーが3つのお題を出し、それを全て使ってSSを作ります その中で生まれたお話 何だか勿体ないので上げる事にしました 見切り発車で始まった為、どうなるか作者もわかりません… 毎日更新出来るように頑張ります! 注:タイトルにあるのがお題です

処理中です...