106 / 107
エピローグ 夢幻の梅雨
…ありがとう
しおりを挟む
握っていた手をそっと開けば、内側に『sky&rain』と掘られた、シルバーのペアリング。
眠っている間もずっと、握り締めていたらしい。
その指輪が、降り注ぐ太陽の光に溶け込み、不思議と白金色に輝いて見える。
「……実雨」
黙って僕の話を聞いていた樹さんが、静かに口を開く。
その声にはっと我に返り、指輪から樹さんへと視線を移す。
「僕も、思っている事を、言ってもいい?」
「………え、うん」
改まったその口調に緊張が走る。
樹さんを見つめたまま背筋をしゃんと伸ばし、膝に手を置いてきちんと座り直す。
その畏まった姿勢に、樹さんがふっと吹き出し、顔を綻ばせた。
「昨日電話で、実雨が言ってた事なんだけどね」
「……」
「その指輪、無理に手放さなくてもいいんじゃないかな」
穏やかで、優しい口調。
その笑顔に、本音を隠したようなものは感じられない。
だからこそ──予想に反したその言葉に、驚きを隠せなかった。
「………え、でも……」
本当は、持っていたい。
大空が残してくれた、唯一のものだから。
──だけど。
大空のお墓参りに行く日を決めた時からずっと、これは大空に返さなくちゃって考えてた。
大空に対しての恋愛感情が薄れ、もう思い出に変わってしまったとしても……これを持っていたら、きっと樹さんを嫌な気持ちにさせてしまうからって。
「もし、実雨が持っていたいなら……だけど」
「……」
「実雨?」
「………樹さんは、いいの……?
僕がこの指輪を持っていたら、不安になったり、嫌な気持ちになったりしない……?」
思っている事を、ちゃんと言葉にして伝える。
「うん。……本音を言えば、良くは思わないよ。
だけど、実雨の心は、確かに僕の中にあるのに……そこまで強制したくはないと思ってる」
「……」
……樹さん……
温かくて、大きなもので身体と心を包まれたような安心感と……居心地の良さ。
僕の事を、ちゃんと解ってくれている事が、何よりも嬉しい。
「それじゃ、……持ってても、いい?」
「うん」
答えながら、樹さんが微笑んでくれる。
その笑顔が、降り注ぐ柔らかな光に溶け込み……一層僕の心を掴んで離さない。
「………ありがとう、樹さん」
眠っている間もずっと、握り締めていたらしい。
その指輪が、降り注ぐ太陽の光に溶け込み、不思議と白金色に輝いて見える。
「……実雨」
黙って僕の話を聞いていた樹さんが、静かに口を開く。
その声にはっと我に返り、指輪から樹さんへと視線を移す。
「僕も、思っている事を、言ってもいい?」
「………え、うん」
改まったその口調に緊張が走る。
樹さんを見つめたまま背筋をしゃんと伸ばし、膝に手を置いてきちんと座り直す。
その畏まった姿勢に、樹さんがふっと吹き出し、顔を綻ばせた。
「昨日電話で、実雨が言ってた事なんだけどね」
「……」
「その指輪、無理に手放さなくてもいいんじゃないかな」
穏やかで、優しい口調。
その笑顔に、本音を隠したようなものは感じられない。
だからこそ──予想に反したその言葉に、驚きを隠せなかった。
「………え、でも……」
本当は、持っていたい。
大空が残してくれた、唯一のものだから。
──だけど。
大空のお墓参りに行く日を決めた時からずっと、これは大空に返さなくちゃって考えてた。
大空に対しての恋愛感情が薄れ、もう思い出に変わってしまったとしても……これを持っていたら、きっと樹さんを嫌な気持ちにさせてしまうからって。
「もし、実雨が持っていたいなら……だけど」
「……」
「実雨?」
「………樹さんは、いいの……?
僕がこの指輪を持っていたら、不安になったり、嫌な気持ちになったりしない……?」
思っている事を、ちゃんと言葉にして伝える。
「うん。……本音を言えば、良くは思わないよ。
だけど、実雨の心は、確かに僕の中にあるのに……そこまで強制したくはないと思ってる」
「……」
……樹さん……
温かくて、大きなもので身体と心を包まれたような安心感と……居心地の良さ。
僕の事を、ちゃんと解ってくれている事が、何よりも嬉しい。
「それじゃ、……持ってても、いい?」
「うん」
答えながら、樹さんが微笑んでくれる。
その笑顔が、降り注ぐ柔らかな光に溶け込み……一層僕の心を掴んで離さない。
「………ありがとう、樹さん」
0
あなたにおすすめの小説
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
先輩のことが好きなのに、
未希かずは(Miki)
BL
生徒会長・鷹取要(たかとりかなめ)に憧れる上川陽汰(かみかわはるた)。密かに募る想いが通じて無事、恋人に。二人だけの秘密の恋は甘くて幸せ。だけど、少しずつ要との距離が開いていく。
何で? 先輩は僕のこと嫌いになったの?
切なさと純粋さが交錯する、青春の恋物語。
《美形✕平凡》のすれ違いの恋になります。
要(高3)生徒会長。スパダリだけど……。
陽汰(高2)書記。泣き虫だけど一生懸命。
夏目秋良(高2)副会長。陽汰の幼馴染。
5/30日に少しだけ順番を変えたりしました。内容は変わっていませんが、読み途中の方にはご迷惑をおかけしました。
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
両片思いの幼馴染
kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。
くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。
めちゃくちゃハッピーエンドです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる