Rain -拗らせた恋の行く末は…-

真田晃

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エピローグ 夢幻の梅雨

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「どんな夢?」

真っ直ぐに向けられる、穏やかな瞳。
何処となく、父性を感じる優しい眼差し。

「──小さい頃、お母さんに捨てられたって話、前にしたでしょ。
その時ね、一人で泣いている僕に、知らないお兄さんが声を掛けてくれた事があったんだけどね。
そのお兄さんが、大空だったっていう………不思議な夢」


言いながら、外した視線をフロントガラスの向こうに移す。
陽射しを浴び、新緑萌ゆる大きな木々。
時折柔らかな風が吹き、さわさわと木の葉の擦れる音が響く。


「大空がね。
実雨を心から愛してくれる人が、この先絶対に現れるから、って。……そう言ってくれたの」

ちらっと、樹さんを盗み見る。

「前に話したかもしれないけど。
大空が、樹さんと僕を、引き合わせてくれたのかなって……」

少し照れながらそう言えば、頬が熱くなる僕を、樹さんが嬉しそうに微笑んでくれる。

「………そうかもしれないね」
「うん……」

優しい声。
ガラス越しに降り注ぐ、春の柔らかな陽射しのように、温かくて……心地良い。


去年の今頃は──こんな未来が待っているなんて、想像できなかった。
あの時の僕は、誰とも関われず、孤独で……何もかもを諦めていたから。
でも今は、隣に樹さんがいる。それだけで、見るもの全てが華やいで見えて、心の中が温かく穏やかになって、幸せな気持ちになれる。


「………あのね」
「ん?」
「僕はずっと、誰からも愛されない……要らない存在なんじゃないかって思ってたの。
父との事もあって。誰の目にも触れられず、ここに存在いる事すら認識されないんだなって。
無償の愛情を注がれ、順風満帆に育ったんだろう他の人とは、全然違うんじゃないかって……感じてた。
だから、他の誰かと交われる事なんて、この先もきっと無いんだろうな、って……」

家でも学校でも、同じ空間にいながら僕だけが、周りの人とは違う場所にいて、一人取り残されてるみたいに感じていた。

「だけど。高校に上がって、大空が僕を見つけてくれて。
皆と僕とを隔てていた、透明な薄い膜のようなものを取り払ってくれて。
それから──変われたような気がする」


あの薄い膜が無くなってから、初めて気付いた。
怖がって、傷付きたくなくて……自ら一線を引いて、極力関わらないようにしていた事に。
周りの人達をそこから眺めて、目に映るものでしか、物事を捉えていなかった事に。

──一人一人の中には、それぞれちゃんと心があって、見えない過去があって、押し込めた感情や思いがある。

大空も、今井くんも、佐藤さんも、石田さんも、樹さんも、お父さんも……
みんな──

だから、何も変わらない。怖がる必要もない。
だって、姿形、考え方や捉え方は、一人一人違っていても……みんな同じなんじゃないかって、気付いたから。


「……だからね。大空にはとても感謝してるの」


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