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しおりを挟む「……」
窓辺に立ち、抱えたバックと靴を窓から落とす。
ザッッ、と植え込みの枝葉が揺れ、壁際の地面に転がって落ちたのが見えた。
サッシに手を掛け、身を乗り上げるようにして片足を掛ける。
ドクン、ドクン、ドクン……
……高い。
転がっている小石が、米粒にも満たない大きさに見える。遠くの駐輪場も、ミニチュアの玩具みたいだ。
でも、大丈夫。バックも靴も、ゆっくりと落ちていったように感じたから。
両足を窓枠の外に投げ出し、ぶらんとさせて座る。冷たい風が吹き、僕の横髪を少しだけ乱す。
その髪を耳に掛け顔を上げると、遠くの空を眺めた。
「……」
雲の切れ間から射す、一筋の光。呼吸を整え、高鳴る心臓を抑える。
と……
「──ええ度胸しとるやんっ、!」
……え……
突然の声に驚く。
下を見れば、モカブラウンの髪を後ろに束ね、黒のロングコートを羽織った凌が、此方に向かって歩きながら僕を見上げていた。
「俺が、受け止めたろか?」
その軽い口調に、それまであった緊張が解けていく。
……来て、くれた……
本当に……僕の為に……
「……うん、」
──トサ、
下で構えた凌の腕の中に、トスンと落ちる。
たった数秒。なのに、もっと長く空中にいたような気がする。
背中と腿裏に衝撃を受け、しっかりと受け止められた瞬間……甘く爽やかな匂いがふわっと立ち篭め、僕の鼻腔を擽った。
「さくらちゃんて、えろう軽いんやな。40キロも無いやろ」
「……」
僕をしっかりと抱きかかえ、覗き込んだその瞳は優しくて。明るく微笑むその表情は、陽だまりのように温かくて。
ただ、それだけで……大きなものに包み込まれたように、酷く安心する。
「よく気張って飛んだな。……偉い偉い!」
両足を下ろして立たせると、僕の髪をくしゃくしゃと掻き回す。
柔らかくて、大きな手。
恥ずかしくて俯けば、突然、その手が止まる。
「それ、どないしたんや」
緊迫する声。
何かを察したようなその響きに、思わず片手で首筋を隠す。
「ハルオに……乱暴されたんやな」
その腕に触れた凌の手が、誘導するようにそっと剥がす。
首筋だけじゃない。その手首にも……強く握られた痕がうっすらと残っていた。
「……怖かったやろ」
憂いを帯びた声。
ゆっくりと、小さく頭を縦に振れば、凌がそっと抱き締める。
「……」
その腕の中は、温かくて。
怖ず怖ずと凌の背中に腕を回し、頭を胸に預けた。
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