6 / 19
6.大事な話
しおりを挟む「──君が、一番だよ」
彼の声が、僕を簡単に引き止める。
一番──
それならどうして、僕だけを″弟″にしてくれなかったんだ……
「連絡が取れなくなって、淋しかった。
……心桜、もう一度やり直そう」
彼の手が、立ち止まった僕の両肩に置かれる。
「……」
心が、揺さぶられる。
折角……別れかけていたっていうのに。
「──無理。リベンジポルノする奴と、なんて……」
「心桜……その事なんだけど」
彼の身体が、僕との距離を詰める。
そして耳元に寄せられる、唇……
「ここでは何だから、何処か別の場所で話そう」
耳裏にかかる、熱い息。熱い身体。
背後から感じる……彼の温もり。
それらを感じる度に、身体は簡単に受け入れようとしてしまう。
「大事な話がある」
「……」
………ダメだ。
揺さぶられるな。こんなクズに。
やっとの思いで断ち切ったんだ。
絆されてついて行ったら、今度こそ……離れられなくなる。
「少しでいい。……五分だけでもいいから──」
「オイ、心桜!」
──突然。
後ろから、ガツンと頭を殴られたような衝撃が走る。
いきなり僕を怒鳴りつける声に、条件反射の如く肩が大きく跳ね上がる。
振り返ったのは、ほぼ無意識。
見れば彼も同じように振り返り、その肩越しに険しい形相の兄の顔が浮かんでいた。
「──どけっ、!」
彼を横目で睨みつけながら、兄が大股で僕に近付き、手を伸ばして乱暴に二の腕を引っ掴む。
「何してんだ。さっさと帰るぞ!」
気まずい空気。
行きとはまた違う、重苦しい車内。
家まで十分も掛からない筈なのに、やけに遠回りをしてる気がする。
「……心桜、さっきの野郎」
喉奥から絞り出すような、低い声。
肘をつき、助手席の窓の外を眺めていた僕は、その呻いた声にビクッと身体が震えた。
そっと、兄の顔をチラリと盗み見る。
「知り合いか?」
「……」
険しい表情の横顔。
目尻はつり上がり、睨みを利かせるように真っ直ぐ前を見据えている。
「………うん」
「随分と、イケ好かねぇ野郎だな」
「……」
どう反応したらいいか、解らない。
あの動画では多分、彼の顔は映っていない、筈……
……でも、もしかしたら
何か勘付かれたかも。
「お前の交友関係、どうなってんだ。あの野郎、俺より年上だろ。
……お前の何なんだ、アイツは」
「……」
「オイ、答えろっ!」
ゴッッ……
拳が飛び、僕の頭を小突く。
小突くというより、もう、殴る類の域。
これが手加減なしだから、結構痛い。
「………友達の、お兄さん……だよ」
頭を押さえ、咄嗟に嘘をつく。
30
あなたにおすすめの小説
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる