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スプーン 快晴 金平糖
**
「……」
大輝からの、突然の誘い。
待ち合わせ場所は、最寄り駅から乗り換え含めて一時間程かかる、駅の改札口前。
空は見事な快晴。トートバックの中には、頼まれていた二人分のお弁当。
「………」
……遅いなぁ。
駅構内にある時計を見れば、約束の時間を三十分も過ぎている。待ち合わせ場所や時間を間違えたのかと、不安になって落ち着かない。
電車が到着したというアナウンス。キョロキョロと辺りを見回せば、その集団の中に、見慣れた人物がいて──
「……!」
ロゴ入りの白シャツに、キャメル色のスエットパーカー。いつものお堅いスーツとは違い、柔らかな印象の……誠。
──ドクンッ
大きく、胸が熱く高鳴る。
「……お久しぶりですね」
目を逸らせずにいる僕に、改札を抜けた誠が満面の笑みを浮かべて見せる。
でもそれは……爽やかながら、何処か壁を感じるもので……
「……」
タクシー内での出来事が思い出され、金平糖のような甘くて柔らかい棘が、胸の奥に突き刺さる。
……やっぱり、あの時……
首筋に付けられた痕を思い出し、手のひらで覆いながら俯く。
ブブブブ……
唐突に震えるスマホ。確認すれば、それは大輝からで。
《行けなくて、ごめんね》
……え、何それ……!
無情な一文に頬を膨らませると、視界の端に誠の靴が入り込んだ。
「……もしかして、浜田くんとここで待ち合わせですか?」
「……え、」
驚いて顔を上げれば、瞬きを数回しながら誠が視線を逸らす。
「実は、浜田くんとここで会う約束をしていたのですが……
……その、代わりに成宮さんと行って欲しいと、今、連絡が入りまして……」
「──!」
大輝……もしかして、また……
『……もう双葉を、自由にしてやってよ 』
『浮気したら、ぜってー許さねぇからな』
大輝と悠の言葉が、ぐるぐると脳内で渦巻く。
スプーンで掻き混ぜた褐色のコーヒーに、白色のクリームを流し込んだみたいに……
駅を出て少し歩いた所にある、動物公園。小規模ながら週末とあって、人の出入りが多い。
入園の手続きを済ませ、誠と共にゲートを潜る。
……悠……ごめんね。
これは、裏切りじゃないから……
心の中で懺悔をしつつ辺りを見渡せば、多くの家族連れ──赤ん坊を抱っこする夫婦や、燥ぐ子供と手を繋ぐ親子の姿が目に飛び込む。
次第に失っていく、色彩。
……悠にも、いるのかな……赤ちゃん……
別に居てもおかしくはないのに。仲睦まじい姿を想像し、胸の奥がチクンと痛む。
次第に狭まっていく視界。失っていく平行感覚。
遠退いていく、意識と喧騒──
嫌いで別れた訳じゃない。寧ろ、痛い位に真っ直ぐ、今も僕の事を想ってくれてる。
……でも……
そんなの許されない。悠が結婚している限り……
目の前が、マーブル状に歪んでいく。
指先が痺れて……息が……苦しい……
空はあんなに蒼かったのに。澱んで今にも雨が降り出しそうで。
不毛な思考ばかりが蔓延って、僕の心に暗い影を落とす。
重苦しさを感じていれば──不意に訪れる、違和感。
「……え、」
驚いて誠を見る。
苦慮する僕に、誠の優しい瞳が向けられ……
僕の手首に、誠の指が絡んだ。
「……」
大輝からの、突然の誘い。
待ち合わせ場所は、最寄り駅から乗り換え含めて一時間程かかる、駅の改札口前。
空は見事な快晴。トートバックの中には、頼まれていた二人分のお弁当。
「………」
……遅いなぁ。
駅構内にある時計を見れば、約束の時間を三十分も過ぎている。待ち合わせ場所や時間を間違えたのかと、不安になって落ち着かない。
電車が到着したというアナウンス。キョロキョロと辺りを見回せば、その集団の中に、見慣れた人物がいて──
「……!」
ロゴ入りの白シャツに、キャメル色のスエットパーカー。いつものお堅いスーツとは違い、柔らかな印象の……誠。
──ドクンッ
大きく、胸が熱く高鳴る。
「……お久しぶりですね」
目を逸らせずにいる僕に、改札を抜けた誠が満面の笑みを浮かべて見せる。
でもそれは……爽やかながら、何処か壁を感じるもので……
「……」
タクシー内での出来事が思い出され、金平糖のような甘くて柔らかい棘が、胸の奥に突き刺さる。
……やっぱり、あの時……
首筋に付けられた痕を思い出し、手のひらで覆いながら俯く。
ブブブブ……
唐突に震えるスマホ。確認すれば、それは大輝からで。
《行けなくて、ごめんね》
……え、何それ……!
無情な一文に頬を膨らませると、視界の端に誠の靴が入り込んだ。
「……もしかして、浜田くんとここで待ち合わせですか?」
「……え、」
驚いて顔を上げれば、瞬きを数回しながら誠が視線を逸らす。
「実は、浜田くんとここで会う約束をしていたのですが……
……その、代わりに成宮さんと行って欲しいと、今、連絡が入りまして……」
「──!」
大輝……もしかして、また……
『……もう双葉を、自由にしてやってよ 』
『浮気したら、ぜってー許さねぇからな』
大輝と悠の言葉が、ぐるぐると脳内で渦巻く。
スプーンで掻き混ぜた褐色のコーヒーに、白色のクリームを流し込んだみたいに……
駅を出て少し歩いた所にある、動物公園。小規模ながら週末とあって、人の出入りが多い。
入園の手続きを済ませ、誠と共にゲートを潜る。
……悠……ごめんね。
これは、裏切りじゃないから……
心の中で懺悔をしつつ辺りを見渡せば、多くの家族連れ──赤ん坊を抱っこする夫婦や、燥ぐ子供と手を繋ぐ親子の姿が目に飛び込む。
次第に失っていく、色彩。
……悠にも、いるのかな……赤ちゃん……
別に居てもおかしくはないのに。仲睦まじい姿を想像し、胸の奥がチクンと痛む。
次第に狭まっていく視界。失っていく平行感覚。
遠退いていく、意識と喧騒──
嫌いで別れた訳じゃない。寧ろ、痛い位に真っ直ぐ、今も僕の事を想ってくれてる。
……でも……
そんなの許されない。悠が結婚している限り……
目の前が、マーブル状に歪んでいく。
指先が痺れて……息が……苦しい……
空はあんなに蒼かったのに。澱んで今にも雨が降り出しそうで。
不毛な思考ばかりが蔓延って、僕の心に暗い影を落とす。
重苦しさを感じていれば──不意に訪れる、違和感。
「……え、」
驚いて誠を見る。
苦慮する僕に、誠の優しい瞳が向けられ……
僕の手首に、誠の指が絡んだ。
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