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キング編
435.
しおりを挟むもし、あの手を掴んで引っ張り上げられたとしたら……あの忌まわしい過去のトラウマから解放されたかもしれない。
……でも……
掴んだ瞬間、引き摺り込まれてしまったら。
もし……入れ替わったり、したら。
過去の『僕』と……
──ドクン
不安が押し寄せ、大きく胸を打つ。
……怖い……
ただの夢かもしれないのに。そうは思えない程リアルで、怖い……
「……」
指先に残る感触。
あの時──伸ばした手の先が触れた瞬間……何で『僕』は、口の片端を僅かに持ち上げたりしたんだろう。
助けようとする僕に向かって、何か悪巧みをしているかのような……
「オラ、早く来い!」
怒鳴りつける声。近付いてくる、複数の足音。
その声や音に引っ張られ、薄く瞼を持ち上げてみれば……涙で霞む視界に映ったのは、二人の男に羽交い締めにされた、赤い髪の男──
───蕾……!?
驚いて、瞼を更に大きく開く。
目を合わせたくないのか。顔を伏せ、怯えながら小さく震えている蕾。
その表情は、前髪が隠してしまってよく見えない。
「良く見てみろ」
蕾を捩じ伏せながら一緒にしゃがみ込んだ太一が、後ろに束ねた蕾の赤い髪を荒々しく掴み、力尽くで僕の首元へと押しやる。
「……」
ジャラ……
僅かに僕の身体が震えれば、首元から鳴り響く、金属同士のぶつかる小さな音。
───黒くて、長いもの
ハッとして、黒革の首輪を覆い隠そうとすれば、それに気付いた太一が、僕の細い手首を掴んで阻止する。
「……」
「………なァ蕾。お前、姫の声だけでおっ勃ててたんだってなァ」
「……」
「本当は、ヤりたくてヤりたくて……堪んなかったんだろォ……?」
ふぅ……ふぅ……
……はぁ、はぁ、はぁ……
僕の顔の両側に手を付き、荒々しい呼吸をする度に肩を大きく上下に揺らす。
大きく見開かれ、血走った二つの眼。それが、獲物を狙うかの如く僕の首元に釘付けられる。
「……良かったなァ、蕾。このお姫サマは、まだ満足してねェんだってよ」
「……!」
太一の言葉が届いたのか。
蕾が静かに僕の上に跨がる。
狂気に満ちた眼。
感情の一切が感じられない。
「………」
あの時と同じだ──ホテルで眠っていた僕を襲う、あの時の蕾と。
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