129 / 559
ハイジ編
129.
しおりを挟む「……わかった」
掴んでいたケットを引っ張り上げ、身構える。
僕の返答に対し、モルの首を掴む手が簡単に離される。もうお前に用はないと、軽く突き飛ばすように。
後ろに転がったモルが、背中を丸め喉元を押さえながら、苦しそうに声を絞り出す。
「………ひ、め……っ、」
此方を見据えながら、龍成がゆっくりと腰を上げる。その双眸はハイジの比ではない程の邪鬼を孕み、ゆらりと揺れながら僕に近付く。
「……」
ベッド端に座り、スッと顔を僕に寄せると、耳元でボソリと囁く。
「アゲハの居場所、教えろ」
「……ぇ……」
それは……どういう……
予想外の台詞に、一瞬、理解が追い付かない。
「……」
龍成とアゲハは、中学時代──仲の良い友達だった。
化学室に入り浸ったり、家に招いたり。
……だけど。
アゲハのバックには、美沢大翔──龍成と敵対する組織、虎龍会がついている。
アゲハに危害を加えるつもり、なのだろうか。
「それ聞いて、どうするの?」
指先が、身体が、……震える。
でも、アゲハが悪いようにされてしまうのは嫌だ。
「……愚問だな」
鼻で笑った後、それまで尖っていた眼が少しだけ緩み……何処か含んだように柔らかな笑みを一瞬だけ漏らす。
「久し振りにツラ、この目で見たくなっただけだ」
龍成の手のひらが僕の顎下に差し込まれ、クイッと強引に持ち上げられる。
冷たい眼。
その眼の奥には、何処までも続く暗い闇が広がり、底が見えない──
………吸い込まれる。
底冷えの如く、身体の芯から震えが止まらない。
「……」
……怖い……のに、
目が、離せない……
「……あー、龍成さん」
部屋の入り口から、人影が差し込む。
緊迫した雰囲気にそぐわない、人懐っこい声。柔和な口調。
そのせいで、一気に空気が緩む。
「……って。
まさか、その子に手ぇ出しちゃうつもりでした……?」
その声に、龍成が手を離す。
ガラス玉のような眼が其方へと動き、それに引っ張られるように視線を動かす。
龍成の肩越しから聞き覚えのある声の主を見れば、そこに立っていたのは
───吉岡だった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる