シンクロ -アゲハ舞い飛ぶ さくら舞い散る5-

真田晃

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五十嵐編

292.

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……違う……!

全然似てない……
……ハイジなんかじゃ、ない……


抗うように、何度も何度も心の中で突っぱねる。
そうしないと、このまま飲み込まれてしまいそうで……

上下に揺すられる身体。
黒革の首輪に付いた、飾りである鎖同士がぶつかり合い、律動に合わせて小さな金属音を立てる。

ハイジは──僕の為なら相手ひとを傷付けてしまう猟奇性と、邪気を孕む激しい狂気性を兼ね揃え……一方で、硝子細工のような繊細さと、底知れぬ優しさを持ち合わせていた。
それでも。嘘偽り無く、切ない程に真っ直ぐ、僕だけを見て愛してくれた──

こんな奴とは……違う……
……違う……

そう、言い聞かせているのに。
一度身体に巡ってしまえば、そう簡単に元には戻ってくれなくて。
心が、身体が……勝手にあの日の出来事を蘇らせ、震えが止まらない……

「……さくら」
「、ゃ……」

甘え縋るようにナカを何度も貫かれ、何度も何度も擦り上げられれば、その存在かたちが奥深くに刻まれ──力の抜け落ちる快感と恐怖が容赦なく襲う。


「──あ″ぁっ ……、!」


堕ちる……
……ぃや、だ……、!


熱く昂っていく身体。胸を突き破るほどに激しい動悸。絶頂感。
もっと欲しいと肉壁が痙攣し、与えられる快感と肉欲を貪ってしゃぶりつく。


……い、やだ……


「…………ゃ、だ……」


……こんなの……おかしい……
おかしい……


熱く乱れる呼吸。
紅潮する頬。
蕩けて潤んでいく、瞳──

ベッドに沈められた両手を握り締め、抗おうと懸命に力を籠める。

だけど……見下ろされる瞳は真っ直ぐ僕を捉え、抑えつけ、離さない──


「さくら……」
「……ぁ、ぁ、……やぁっ、……あ″ぁ……」


……全然、違う……
違う、違う、違う、違う──

……ハイジじゃない。
寛司でも、誰でも……ない……

ここにいるのは──五十嵐、だ……


「───ッ、!」


ナカが擦れる度、甘い電流が全身を走り抜け……仄暗い背後から、無数の手が伸び──


……壊れ、る……
壊さ、れる──堕ち……る………


拒絶し、留まろうとする僕の精神を容赦なく引き裂き……
身体だけが……強烈な情欲に飲み込まれてく。

はぁ、はぁ、はぁ、
揺れる視界が、涙で歪んでいく。
間近に迫り、僕の見下ろす絶望にも似た瞳が、脳裏に映るハイジのものと重なった瞬間───僕のナカが切なく戦慄き……


「………あぁ……あ″………っ、!!」


むぁっ、と立ち篭める、噎せ返る程の甘い匂い──事後の若葉から感じた、あの妖艶な匂いと同じ……

それに当てられたのか。
五十嵐が、僕の首筋に顔を埋める。


「──っ、!! くど……ぅう……」
「……ゃ、ぁあ…あ″……ぁっ、」

「イく──!!」



──ドク、ドクンッッ……


最奥に放たれる欲望。
強く握られる手。

大きく震え、粟立つ……心と身体──




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