シンクロ -アゲハ舞い飛ぶ さくら舞い散る5-

真田晃

文字の大きさ
298 / 559
五十嵐編

298.

しおりを挟む

「──なのに、!」

痛みからか、怒りからか……五十嵐の声が震え戦慄く。


いつしか父親が、ふらっと帰ってきては金をせびるようになった。妹を進学させるだけの金を稼いでいると、嗅ぎつけて。
妹を護る為、悔しい思いをしながらも、五十嵐は大人しくそれに従っていた。勿論、妹の為の資金を予め引き抜いた上で。
そんなやり取りを、何度か妹の前でしてしまった事が徒となってしまったんだろう──


「あの下衆野郎は、……妹に、手ぇ出しやがったんだっ……!!」


家を留守にしている間、金に困った父親がふらっと立ち寄り、家中を荒らしまくった。
何処かに隠しているだろう貯めた金を探し出し、見つけたそれを封筒毎握り締め、意気揚々と家を出ようとした所に──偶然、妹が帰宅。
玄関で靴を履いている父と、その背後に見える部屋の様子から、事の重大さを瞬時に悟った妹は、自らの身体を張って父親を引き止めた。

真っ暗な部屋にぶら下がる、裸電球。
それが大きく揺れる度に、二つの大きな影をも大きく揺れながら伸び縮みする。
明暗を分けたその下で、妹を拳で捩じ伏せた父親は、力無く仰向けに倒れ、首元を無防備に曝した自分の娘の容姿を、初めてマジマジと見下ろす。

『………返して。それは、お兄ちゃんが……』
『そうかそうか。……それなら、服脱いで股開けや』


「……」

静かに監視を続けていたらいが、床から片足を浮かせ、ソファの座に踵を乗せると膝を抱えた。

「………妹は……身体を、差し出したんだっ。
他にどうする事も出来ず……言われるがままに。
……俺が、汗水垂らして稼いだ、大切な金だからって……それを取り返す為だけに……っ、!」


「……」


天井が、揺れる。
太一らに騙され、監禁され、服を剥ぎ取られ、手足の自由を奪われ……
僕の上に跨がった男が、鋭く光るカッターナイフの刃をチラつかせる。

──はぁ、はぁ、はぁ、
僕を犯しながら口元を歪ませ……その刃先を僕の胸元に当て──


「………目を疑ったよ。
余りに信じられない光景が目に飛び込んできて……一体、何が起きたのか……理解、出来なかった」
「……」

息を飲み、震えて止まらない身体を更に小さく丸める。

「だって、実の子だぞ。
まさか……血を分けた子供にまで欲情して、思い通りにするなんて……
何処まで下衆な野郎なんだと思ったら、カッと頭に血が昇って──

気付いたら俺は、叫びながら親父を鈍器でぶん殴ってた。

何度も何度も何度も何度も……!」


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

身体検査その後

RIKUTO
BL
「身体検査」のその後、結果が公開された。彼はどう感じたのか?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...