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五十嵐編
300.
しおりを挟むそれから間もなくして、住み込みでのテレアポを紹介された。
アパートに一人、妹を残す事に不安はあったものの、問題の父親が未だ意識不明の重体である事と、努力次第では一ヶ月で全額返済が可能だと示唆された為、大人しく従う事にした。
送りのワゴン車に乗り込み辿り着いた先は、山頂付近の廃れたラブホテル。
敷地内には同じ形のログハウスが幾つも並び、その中のひとつに案内される。
「初めてその内部を見た瞬間、異様な光景にゾクッと背筋が凍った」
狭い部屋に詰め込まれた、十数人の若い男女。生気を失い虚ろな表情。持っていた紙を、全員が食い入るように見ていた。
部屋に渦巻く、ぶつぶつと呟く呪文の様な台詞。……それが、テレアポのマニュアル文だと解ったのは、部屋に上がって彼らの資料を覗き見てからだった。
「俺が少しでも近付こうものなら、ガタガタと身体を震わせて、警戒するように小さく身構えていた。
……とても、住み込みで働いてるだけのようには見えなかったよ」
一体何が、彼等をそうさせているのか。
荒稼ぎする仕事など、まともではないとは思っていたが、想像とは違う異様な光景に不安が過った。
『……これ、明日までに覚えておいた方がいいよ』
そんな中。唯一まともに応対してくれた人がいた。五十嵐よりひとつ年上の、二十歳の男性。ガッシリとした身体つきに、浅黒い肌。ここに来るまでは、体力仕事をしてきたのだろう。
差し出されたのは、彼等が持っているものと同じマニュアルの資料。
その時初めて、この仕事が『掛け子』である事に気付いた。
『失敗したら、総括を受ける事になる。気をつけなよ』
『総括……?』
『……ああ。聞いた事ないか、総括って。
あさま山荘事件は有名だから、当然知ってるよな。……あれ、知らねぇ?
人質をとって別荘に立て籠もった犯人を捕まえる為に、警察部隊が大きな鉄球で建物をドーン、って破壊するやつだよ』
『……』
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