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五十嵐編
330.
しおりを挟む『気に入らない』
──たった……たったそれだけ?
それだけで、僕をターゲットにして……ここまでするものなの……?
「……!」
気付けば、僕の胸を弄んでいた愁の指が小刻み震えていた。
「………殺、される」
大きく見開き、思い詰めたように固まる眼。
大の大人がぶるぶると震え、声まで脅えている姿は滑稽に映る。
「……」
こんな奴を支配し、思い通りにしようとしていた事に、嫌気が差す。
幾らvaɪpərの実行犯だとはいえ、こんな状態の奴を手懐けた所で、どんな役に立つというのか。
僕の中で、黒くドロドロとした感情が支配していく。
「結局俺も、真木みてーに消されんだよ……」
「……」
「だから……その前に、一発ヤらせろよ。……どうせ皆死ぬんだから、今ここでシたっていいだろ。……いいよな?」
切羽詰まった声色。
何をそんなに、吉岡なんかに脅えているのか解らない。
さっきまでの威勢の良さや、強運の持ち主だと自慢していた姿は何処へ消えてしまったんだろう。
「“気に入らない”って、どういう──」
「あのねぇ。物事にイチイチ深い理由を結び付ける意味なんて、あるのかなぁ」
僅かに動揺した五十嵐の声を、直ぐに強い口調で遮る。
「警察に捕まった人達の動機、ニュースなんかで聞いた事ない?
すれ違い様に肩がぶつかった。人前で注意されて恥をかいた。痴情の縺れ。尽くしたのにフラれた。偶々ムラムラしていた。日々のストレス解消。全てが上手くいかず、むしゃくしゃしていた。……ほら、ね。
どんなに複雑そうに見えたとしても、蓋を開ければ理由なんて至極単純明快なんだよ」
「……」
吉岡の声が聞こえていないのか──愁が強引に、僕の服の中へと片手を突っ込む。そして僕の胸を弄りながら、もう片方の手で肩を押さえつけ、恐怖で戦きながら思い詰めた表情を覗かせる。
「──!」
僕の唇に迫る唇。
咄嗟に片手のひらを盾にして、冷静に阻止する。それに気付いた愁が、思い通りにいかないジレンマから眉尻を鋭く吊り上げた。
「テメェ、今更勿体ぶってんじゃ……!」
「………いっかいで、いいの?」
荒げた愁を宥めつつ蕩けた瞳を向け、誘うように首を僅かに傾げてみせる。そうすれば、鳩が豆鉄砲を食ったように愁の目が丸くなった。
「僕を、愁の好きにしていいよ。……でも、こんな所じゃ……やだ……」
言いながら片手を伸ばし、愁の太股にそっと触れる。そのままするすると内側へと移動し、布越しからでも解る程張り詰めた、硬くて熱いモノへと指先を這わせていく。
「愁と、二人っきりになれる所に連れてってくれたら……女子高生の制服姿になって、愁の上に跨がってスカート捲ってみせてあげる」
「……」
「それからココ。いっぱいしゃぶって、ご奉仕するね……」
熱く張り詰めたソレを、下から上へと指先で滑らせていき、先端辺りでカリッと引っ掻く。
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