シンクロ -アゲハ舞い飛ぶ さくら舞い散る5-

真田晃

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キング編

385.

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蕾が5歳、類が2歳の頃──両親が交通事故で他界。
偶々その車に乗り合わせていなかった蕾と類は、身体は無傷であったものの、突然両親を奪われたせいで、心に深い傷を負った。──特に、理解できる年頃の蕾は。

世界でたった、二人ぼっち。
駆け落ち同然の両親には、頼れる肉親や親戚はなく、まともな葬式すらあげられないまま、児童養護施設行きを余儀なくされた。


「……君達が、蕾くんと類くんか」
「……」
「大きくなったなぁ。おじさんは、君たちのお母さんのお兄さんなんだよ。
これからは、おじさんと一緒に暮らそうね」

見た事もないスーツ姿の男性が、蕾の前にしゃがみ込み、目線を合わせて優しく微笑む。
その顔に、母の面影など一切感じなかったものの、言われてみればそうなのかもしれない程度に、似ているような気がした。
児童相談所に一時保護されていた蕾と類は、このおじさんに引き取られた。


だけど、その生活環境は余りに荒んだものだった。
まるで地獄絵図。
こんな世界が、この世に存在するんだろうかと疑う程、悲惨なものだった。 

塗装が剥がれ、蔦は蔓延り、長年の雨ざらしで屋根や壁が錆び付いたアパート。
その一室。玄関のドアを開けると、鼻が曲がりそうな程の異臭が襲う。
酸っぱいような、苦いような……何ともいえないアパート特有の臭いと腐敗臭。
足の踏み場もない程の、食べ散らかしたゴミの山。そこをつま先立ちで歩きながら中へと進む。
スナック菓子の袋。割り箸が刺さったままの汁入りカップ麺。食べ散らかした其れ等が散乱する小さなテーブル前に辿り着く。
その周りの一部だけ、床が見えていた。

傘のない小さな電球。
天井から伸びた黒い線が揺れる度に、作り出した影を様々な方向へと散らす。


「これでも食ってな」

類が腹の音を鳴らせば、後から入ってきたおじさんが、今し方履いていた靴下を投げてよこす。

「ははは、冗談だ。
もし飯が食いたけりゃあ、蕾。………お前に、ひと仕事してもらうぞ」
「……」

おじさんの変貌に、恐怖で肝が縮み上がる。

「……」

後悔したって、遅い。
もう蕾と類は、このおじさんの保護下にいるのだから。



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