【本編完結済】爆盛りスイーツから始まる恋のレシピ~陰キャ男子はお菓子作りでボッチ回避に成功しました~

ぷかり

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ひんやり水羊羹2

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 元旦はなぜだか毎年晴れている気がする。

 快晴と言って差し支えないほどの青空が広がる午前九時すぎ。
 大晦日に炊いた黒豆やらを味わったその足で、連れてこられた神社は地元ではちょっとした有名なスポットらしく、肌寒い陽気にも関わらず、それなりの賑わいを見せていた。

「父さんが子供の頃は毎年ここに通っていたんだ」

 得意げに先頭を行く父によると、それでもピークは過ぎているのだとか。

「まずはお参りからだ」

 参道の両脇には屋台が並んでいて、まばらに人々が行き交っている。
 その真ん中で長い列を成す一行に紛れ込むと、次から次へと後続がやって来た。
 それでも、前がじわじわとしか進まないことに変わりないから、列は伸びる一方。
 ふと後ろを振り返れば、鳥居の外、階段の下にまで続く人混みが、まるで黒い龍のように映った。もう拝殿が近い。

「ねえ、お賽銭って……」

 二十五円だったっけ、と母の方を向いたその時、雑踏の中に晴人の横顔を見た。

 間違いない。
 冬休みに入るまでほとんど毎日間近で眺めていたもの。
 あの整ったフェイスラインは他の誰でもない晴人のものだ。

 今朝目が覚めたら届いていた、昨夜の非礼を詫びるメッセージでも初詣の話題は出ていないから、これは本当に本当の偶然。

 てっきり新学期まで会えないと思っていたのに。もしかしたら神様が気を利かせてくれたのかも。
 参拝が終わったら声をかけてみようかな。
 さすがに行列を抜け出すわけにもいかないし、晴人もすぐ帰るわけじゃないだろう。

 なんて呑気に考えていた僕が馬鹿だった。

「ハルくん、お家に戻ったら勉強教えてね」

 人影から生えてきた手が、ぽんぽんと晴人の肩を叩く。
 その手の持ち主はどこからどう見ても女の子。
 白い毛皮付きコートの袖口から、白くて綺麗な指が覗いている。

 何あれ。

 シュレディンガーの猫のように、これ以上何も目に入いれなければ確かな核心に迫ることもなかったのに。
 運悪くちょうど視界を遮っていた人物が捌けたことで、知りたくもなかった全容が明らかになる。

 明らかに僕らと同じ年頃。
 髪を器用に編み込んでまとめた上に、リボンのヘアクリップがついている。
 顔まではわからないけれど、雰囲気からして綺麗な子だ。

 傍目で見てもお似合いな二人。
 認めたくないけど、僕なんかと違って、晴人と並んでいても違和感がない。

 きっと男子校で、周りに女子なんて一人もいないから麻痺していただけで、本来晴人の隣にはああいう子が相応しいことなんて明白だし。晴人が同性を本気で好きになれたとして、そもそも僕じゃ不釣り合いだ。

 今更何にショックを受けているんだろう。
 コイビトがいないと勘違いしていたこと?
 それとも晴人からの甘やかしを、あの「デート」って言葉を心のどこかで本気にしていたから?

 ガラララと濁った鈴の音に紛れて、夢のような時間の終わる音がする。

 神様、お願い。目隠しがほしい。
 見たくないのに、あんなに眩しくされたら、つい目で追っちゃうよ。
 いちいち視界の端にチラついて、その度に胸が傷たむなんて。誰がどう考えたって不毛だ。
 そうわかっているのに、仲睦まじそうに寄り添う彼らから目が離せない。

 やがて参拝の順番が回ってきても、さっきの光景が頭を占めたまま、結局お賽銭にいくらつぎ込んだのか、何をどう祈ったのか、もはや何も覚えていない。
 その後に、ぼんやり両親について行って、引いたおみくじは中吉で「恋愛、精進せよ」の部分だけやけに浮いて見えた。

「いったい何を頑張れっていうんだ……」

 溜息交じりに納め所に結んだところで、新年早々こんな目に遭っておいて、すでにご利益とかそんなのない気がするのだが、そこは慣習ということで。
 というか、僕と晴人は別にそんな仲じゃなくて友達だし。友達なのに彼女の存在を隠されていたせいで、ちょっと滅入っているだけだし。

 もらった甘酒を飲みながら、何気なく境内を見回す。
 さすがにもう晴人も帰ったよね。

 好奇心を満たす、というより不安を払拭するための行為だったのに、またもや晴人たちの姿が目に飛び込んで来て、口の中の甘さが一気に引いた。
 見慣れているせいか、それとも彼がひと際輝いているせいか、迷うことなく目線がそこに向かった、という方が正しいかもしれない。

「なんでまだいるのさ」

 幸いにして向こうはこちらに気づいていない。
 助かった。そう安堵する気持ちの中に、こっちを見てほしいって、わがままが混ざる。

 一秒、二秒、三秒。

 じっと見つめてみるけれど、やっぱり彼の目に僕が映ることなどなくて、遠くから楽しげに談笑する二人を、ただ眺めることしかできなかった。
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