【本編完結済】爆盛りスイーツから始まる恋のレシピ~陰キャ男子はお菓子作りでボッチ回避に成功しました~

ぷかり

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ひんやり水羊羹3

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 僕は晴人が好き、なのかもしれない。
 学校が始まるまでの約一週間、考えに考えて出した答えがそれだった。

 父が赴任先に戻ってすぐに訪れた今年最初の週末は、珍しく母が家にいて新年一発目の爆盛りスイーツ日和とはならなかった。
 いや、母が在宅でなくとも、きっとお菓子作りはしなかったと思う。
 ことあるごとに晴人と彼女のツーショットが脳裏をよぎって、とてもでないが、それどころじゃなかったのだ。何をやっても集中できない。

 せめて休みの間はできるだけ晴人を避けようと一旦は外出を控えてみたものの、課題にすらまともに取り組めなくて、苦肉の策で訪れた図書館でまさかの遭遇。
 彼らを揃って見かけてしまい、むしろ勉強の妨げになった。
 もちろん、声をかけるなんて愚かな真似はしない。

 そんなことをして、

「彼女の――ちゃんだよ」

 なんて紹介でもされようものなら、もう立ち直れる自信がなかった。

 それに、晴人の彼女は小さな町の図書館にいる時でも可愛い恰好をしているのに、僕ときたらまったくの普段着で、顔を見られるどころか、存在を認識されるのも恥ずかしいくらい。
 自分をこんなにみっともないと思ったのは初めて。
 しっかり睡眠をとっているからか、砂糖を大量に摂取している割には、目立った肌荒れもないし。
 中学で「男でも眉毛は整えた方が良い」と小耳に挟んでから、週に一度の手入れを欠かしたことがないし。
 普段から人畜無害でいるために、できる限りの清潔感は大事にしているけれど、ほっそりとした華奢な女の子を前にすると、何もかも不十分な気がして、もともとなかった自信が一気に失われてしまった。

「やっぱり、可愛いとか嘘だよ」

 ああいう言葉は彼女にこそぴったり。
 きっとあの子も晴人に「可愛い」って甘やかされているんだろうなあ。
 膨大なダメージを食らうってわかっていて、勝手に想像しては勝手に傷つく。

 ひどいよ。僕を揶揄って楽しかった?
 友達のいない、陰キャのデブだからって。こんなことってないよ。

 卑屈になるといよいよダメで、見つからないうちにさっさと家に逃げ帰ってしまった。

 ただ、それでも晴人のことは憎みきれなくて、友達のままでいいから傍にいたくて。
 時間が経って思い返してみれば、図書館でのあれは好きという気持ちを再確認しただけの出来事に過ぎない気がしてくる。

 おみくじにも「精進せよ」って書いてあった。
 初恋は叶わないと歌では言われているし、僕が晴人の彼女に敵う隙なんてたぶん一ミリもない。
 だけど、このまま何もせず気持ちを封印するのも、僕の恋に失礼なんじゃないだろうか。
 付き合うことはできなくても、せめて告白――ううん、冗談めかして、男同士の友情を装っての「好き」くらいは伝えたい。
 たとえその本意が晴人に届かなくても別にいい。
 僕だって別にカップルの仲を引き裂きたいわけじゃないんだし。

 ちゃんと玉砕して、自分の中で決着をつけて、次の恋に進みたい。
 これはそのためのステップ。
 ちゃんと期限を決めて、そこまで努力して、最後にたった一言だけ自分の口から「好き」だと告げられたら、後は卒業までちゃんと友達でいる。

 固く心に誓って、僕はレシピ帳にペンを走らせた。
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