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みっちりバスクチーズケーキ7
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僕の勘は間違いではなかった。
というより、先人たちは正しかったと言うべきか。
焼き立てほやほやではぷるぷるだった生地も、冷蔵庫に入れてしばらくすると本当に落ち着いてしまったらしく、徐々に固さが出てきた模様。
少なくともお皿に盛る段階では、あの柔らかさが嘘のようにしっかりした質感になっていた。
米粉、なくて正解だったかも。
ホッと安堵の一息を吐く。
「シオちゃん、早く!」
来がけと同じく急かすナオくんに、
「はいはい」
返事をしながら、ケーキを盛った大皿をローテーブルに運ぶ。
芸も何もなく、大きい型と小さい型で作ったものを重ねただけだけど、二段ケーキって夢があるから良しとする。
部活で疲れて帰ってきた晴人も大胆なバスクチーズケーキに歓声を上げている。
「相変わらずすごいね」
せめてクリームで装飾したら良かったんだろうけどね。
ダイエット中だから無骨な仕上がりになってしまった。
だけど、腹ペコ男子にはそんなの関係ないようで、皆目の前の爆盛りスイーツに吸い寄せられている。
「うまそー」
「美味しそうだねえ」
子供たちに至ってはフォークを持たせると、さっさと「いただきます」をしてしまいそうな勢い。
ケーキに釘付けなのはいいけど、先に飲み物を用意しなきゃ。
晴人と僕はコーヒーだけど、小学生には牛乳で大丈夫かな。
「はい、フォーク」
「ありがとう」
先に晴人の食器だけ渡すと、
「お兄ちゃん、ずるい」
目敏いナオくんから抗議が入る。
視野が広いんだよね。
「ほら、こっちに二人のもあるから」
ちょうどお湯が沸いたので、まあいいか、とフォークを預けたところで、彼らはお行儀が良いので予想したような事態には陥らず、
「まだ?」
催促しつつも、僕が席に着くのを待ってくれている。
「もういいよ。食べよう」
皆揃って手を合わせて、ようやく味わえるバスクチーズケーキ。
「美味しい!」
「なんか普通のと違う!」
子供たちの口には合ったようで、パクパクと小鳥が啄むように、というよりアニメのネズミが齧った跡のようにケーキに穴が開いていく。
僕も一口食べてみる。
表面は香ばしく、中身はとろとろ。結構みっちりしている。
定番のスフレチーズケーキよりこってり濃厚で、ベイクドチーズケーキほど固くない。
カラメルっぽさがあるのはバスク風ならでは。
「滑らかだね」
「うん」
冷やして生地をしっかりさせた後、少し常温に戻しておくととろっとするとあったから、晴人が戻って来るちょっと前から室温に慣らしておいたんだよね。
その甲斐あって口当たりがすごく良い。
「豆腐が入ってるとか作ってなかったらわかんないよな」
そうそう、本当にその通り。
大志くんの言葉に頷きかけたその時、
「豆腐?」
不思議そうに晴人が聞き返すのを見てハッとする。
完全に油断してた!
口止めしておけば、と思ったけど後の祭り。
「あのね、あのね! 冷奴の豆腐を混ぜたんだよ! サラサラになるまでやったから腕がクタクタになったの」
止める間もなくすでにナオくんが全部吐いてしまった。
何その、ある意味ファインプレー的なやつ。
少なくとも僕にとっては最悪の事態なんだけど、これも自分で蒔いた種。
どこまで誤魔化せるかわからないが、無理なら甘んじて罰は受けよう。
そう覚悟を決めて弁解を図る。
「その、豆腐を使うと滑らかになるらしくて、えっと、使ってみたかったんだよねー」
さすがに棒読み過ぎた?
一瞬空く間に心臓が身体に悪そうな音を出したが、なんとか丸め込まれてくれたらしい。
「へぇ、どうりで」
納得がいったという風に晴人が微笑んだことで、なんとかこの件は収集がついた、はずだった。
というより、先人たちは正しかったと言うべきか。
焼き立てほやほやではぷるぷるだった生地も、冷蔵庫に入れてしばらくすると本当に落ち着いてしまったらしく、徐々に固さが出てきた模様。
少なくともお皿に盛る段階では、あの柔らかさが嘘のようにしっかりした質感になっていた。
米粉、なくて正解だったかも。
ホッと安堵の一息を吐く。
「シオちゃん、早く!」
来がけと同じく急かすナオくんに、
「はいはい」
返事をしながら、ケーキを盛った大皿をローテーブルに運ぶ。
芸も何もなく、大きい型と小さい型で作ったものを重ねただけだけど、二段ケーキって夢があるから良しとする。
部活で疲れて帰ってきた晴人も大胆なバスクチーズケーキに歓声を上げている。
「相変わらずすごいね」
せめてクリームで装飾したら良かったんだろうけどね。
ダイエット中だから無骨な仕上がりになってしまった。
だけど、腹ペコ男子にはそんなの関係ないようで、皆目の前の爆盛りスイーツに吸い寄せられている。
「うまそー」
「美味しそうだねえ」
子供たちに至ってはフォークを持たせると、さっさと「いただきます」をしてしまいそうな勢い。
ケーキに釘付けなのはいいけど、先に飲み物を用意しなきゃ。
晴人と僕はコーヒーだけど、小学生には牛乳で大丈夫かな。
「はい、フォーク」
「ありがとう」
先に晴人の食器だけ渡すと、
「お兄ちゃん、ずるい」
目敏いナオくんから抗議が入る。
視野が広いんだよね。
「ほら、こっちに二人のもあるから」
ちょうどお湯が沸いたので、まあいいか、とフォークを預けたところで、彼らはお行儀が良いので予想したような事態には陥らず、
「まだ?」
催促しつつも、僕が席に着くのを待ってくれている。
「もういいよ。食べよう」
皆揃って手を合わせて、ようやく味わえるバスクチーズケーキ。
「美味しい!」
「なんか普通のと違う!」
子供たちの口には合ったようで、パクパクと小鳥が啄むように、というよりアニメのネズミが齧った跡のようにケーキに穴が開いていく。
僕も一口食べてみる。
表面は香ばしく、中身はとろとろ。結構みっちりしている。
定番のスフレチーズケーキよりこってり濃厚で、ベイクドチーズケーキほど固くない。
カラメルっぽさがあるのはバスク風ならでは。
「滑らかだね」
「うん」
冷やして生地をしっかりさせた後、少し常温に戻しておくととろっとするとあったから、晴人が戻って来るちょっと前から室温に慣らしておいたんだよね。
その甲斐あって口当たりがすごく良い。
「豆腐が入ってるとか作ってなかったらわかんないよな」
そうそう、本当にその通り。
大志くんの言葉に頷きかけたその時、
「豆腐?」
不思議そうに晴人が聞き返すのを見てハッとする。
完全に油断してた!
口止めしておけば、と思ったけど後の祭り。
「あのね、あのね! 冷奴の豆腐を混ぜたんだよ! サラサラになるまでやったから腕がクタクタになったの」
止める間もなくすでにナオくんが全部吐いてしまった。
何その、ある意味ファインプレー的なやつ。
少なくとも僕にとっては最悪の事態なんだけど、これも自分で蒔いた種。
どこまで誤魔化せるかわからないが、無理なら甘んじて罰は受けよう。
そう覚悟を決めて弁解を図る。
「その、豆腐を使うと滑らかになるらしくて、えっと、使ってみたかったんだよねー」
さすがに棒読み過ぎた?
一瞬空く間に心臓が身体に悪そうな音を出したが、なんとか丸め込まれてくれたらしい。
「へぇ、どうりで」
納得がいったという風に晴人が微笑んだことで、なんとかこの件は収集がついた、はずだった。
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