54 / 69
まんまるトリュフチョコ1
しおりを挟む
「うちの家族も喜んでたよ」
月曜日、珍しく教室に入ってすぐ晴人は僕の元に駆けつけた。
サッカー部の連中に絡まれてはいたけれど、それを華麗にスルーしての直行。
まったく予想もしていなかったので、びっくりはしたけれど、彼が真っ先に僕に声をかけてくれたのは正直気分が良い。
「チーズケーキ、ありがとう」
「こちらこそ、そう言ってもらえると作り甲斐があるよ」
余ったバスクチーズケーキを切り分けて、晴人宅と大志くん宅にそれぞれお土産として持って帰ってもらったのは、もちろん善意もあるけどダイエットのためだったりするから、改めてお礼を言われるようなことじゃないんだけど、実際にされるとやっぱり嬉しい。
「つい作りすぎちゃうだけだから、また余ったらお家の人にも食べてもらえると助かるよ」
もともと食べたいより作りたい欲の方が強いせいか、ダイエットを始めても惹かれるのは爆盛りスイーツばかり。
節制のため動画視聴で欲を紛らわせたりもしているんだけど、次は何にしようと考える際の選択肢にやっぱり爆盛りは外せない。
そして思いついた。
創作に関しては仕方ないにしても、食欲はある程度コントロールできるのだから、作っても自分で消費しない状況にすれば良いんだって。つまり他の人にお裾分けすれば解決する、と。
ただし、爆盛りスイーツの件は伏せて。そうしないと、また晴人の機嫌を損ねてしまいそうだし。
となれば、それぞれの家族に差し入れるしか方法がなかったが、
「志音の家であんなに食べた癖に直人は家でもぺろりだったよ」
どうやらウィンウィンだったらしい。
「父さんも母さんも志音にはいつもお世話になっているから今度お礼がしたいって」
「ええっ! いいよ、そんなの」
気にしないで、と手を振るが、晴人はなかなか諦めてくれない。
「奥ゆかしいのも志音の魅力だけど、ある権利は主張していかないと」
僕が好きでやっているだけなんだけどなあ。
むしろ助かっているのはこちらの方だし。
「なんか畏れ多いよ」
渋りすぎも印象が悪いかもしれないけど、好きな人のご両親から何かしてもらうってめちゃくちゃ気が引ける。
「そんなことないって」
「そんなことあるって」
なんて押し問答しているうちに、担任が来てホームルームが始まったことで、一旦話は終わったかに見えた。
しかし実際には、
「直人も懐いているし、うちの親は志音のこと気に入ってるんだよね」
昼休憩、お弁当の最中にまでもつれ込んでいた。
例のごとく後ろから腹を抱えられたまま拘束され、決着はいまだつかず。
「僕の方が仲良くしてもらっている側なんじゃないかな」
「そんなことないよ。直人がしょっちゅうシオちゃんと次はいつ会えるかって聞いてくるくらいだし」
ニコニコと話す晴人には申し訳ないが、あと二、三週間もすれば僕の初恋の行く末が決まっちゃうような、そんな状況でご両親に会うのは躊躇われた。
きっと晴人の歴代恋人とか、初恋の人が話題に上がって……下手したら相当な痛手を負って立ち直れなくなってしまう。
所詮は妄想。なのに、悪い方にしか考えがいかない。
はっきり友達だって紹介されると現実を突きつけられそう怖いし、何より絶対精神衛生上よろしくないことなんて目に見えている。
「俺にとっても志音は特別だよ」
だから、あんまり思わせぶりなことをしないでいただきたいんだって!
いろいろと決心が鈍っちゃいそうだよ。
「日曜、もし空いていたらおいでよ」
普段は押しが強い方でないのに、今度ばかりは珍しく引く様子がない。
僕に、晴人の他に遊ぶ友達がいないと知っていて、こんな誘い方をしてきているんだってことくらいわかる。
だけど、どうしてここまで頑ななのか。
根負けしちゃいそうだけど、受け入れてつらくなるのは自分だ。
「ごめん、その日は先約があって……」
見え透いた嘘。
それでも、心を守るためにはこうするしかなかった。
ごめん、晴人。
僕が君の「ちゃんとした友達」になれたら、失恋の傷跡が瘡蓋くらいになったら、その時はきっとこんな重苦しいことなんて考えず、素直にその誘いに応じるから。
今だけは許してほしい。
そんな贖いにも似た気持ちが通じたのか、
「そっか、残念。また今度だね」
始業のチャイムが鳴ると共にようやく解放された、と思ったのも束の間、
「週末、楽しんで」
階段を下りながら、嘘を見破る鋭い眼差しに射抜かれた。
月曜日、珍しく教室に入ってすぐ晴人は僕の元に駆けつけた。
サッカー部の連中に絡まれてはいたけれど、それを華麗にスルーしての直行。
まったく予想もしていなかったので、びっくりはしたけれど、彼が真っ先に僕に声をかけてくれたのは正直気分が良い。
「チーズケーキ、ありがとう」
「こちらこそ、そう言ってもらえると作り甲斐があるよ」
余ったバスクチーズケーキを切り分けて、晴人宅と大志くん宅にそれぞれお土産として持って帰ってもらったのは、もちろん善意もあるけどダイエットのためだったりするから、改めてお礼を言われるようなことじゃないんだけど、実際にされるとやっぱり嬉しい。
「つい作りすぎちゃうだけだから、また余ったらお家の人にも食べてもらえると助かるよ」
もともと食べたいより作りたい欲の方が強いせいか、ダイエットを始めても惹かれるのは爆盛りスイーツばかり。
節制のため動画視聴で欲を紛らわせたりもしているんだけど、次は何にしようと考える際の選択肢にやっぱり爆盛りは外せない。
そして思いついた。
創作に関しては仕方ないにしても、食欲はある程度コントロールできるのだから、作っても自分で消費しない状況にすれば良いんだって。つまり他の人にお裾分けすれば解決する、と。
ただし、爆盛りスイーツの件は伏せて。そうしないと、また晴人の機嫌を損ねてしまいそうだし。
となれば、それぞれの家族に差し入れるしか方法がなかったが、
「志音の家であんなに食べた癖に直人は家でもぺろりだったよ」
どうやらウィンウィンだったらしい。
「父さんも母さんも志音にはいつもお世話になっているから今度お礼がしたいって」
「ええっ! いいよ、そんなの」
気にしないで、と手を振るが、晴人はなかなか諦めてくれない。
「奥ゆかしいのも志音の魅力だけど、ある権利は主張していかないと」
僕が好きでやっているだけなんだけどなあ。
むしろ助かっているのはこちらの方だし。
「なんか畏れ多いよ」
渋りすぎも印象が悪いかもしれないけど、好きな人のご両親から何かしてもらうってめちゃくちゃ気が引ける。
「そんなことないって」
「そんなことあるって」
なんて押し問答しているうちに、担任が来てホームルームが始まったことで、一旦話は終わったかに見えた。
しかし実際には、
「直人も懐いているし、うちの親は志音のこと気に入ってるんだよね」
昼休憩、お弁当の最中にまでもつれ込んでいた。
例のごとく後ろから腹を抱えられたまま拘束され、決着はいまだつかず。
「僕の方が仲良くしてもらっている側なんじゃないかな」
「そんなことないよ。直人がしょっちゅうシオちゃんと次はいつ会えるかって聞いてくるくらいだし」
ニコニコと話す晴人には申し訳ないが、あと二、三週間もすれば僕の初恋の行く末が決まっちゃうような、そんな状況でご両親に会うのは躊躇われた。
きっと晴人の歴代恋人とか、初恋の人が話題に上がって……下手したら相当な痛手を負って立ち直れなくなってしまう。
所詮は妄想。なのに、悪い方にしか考えがいかない。
はっきり友達だって紹介されると現実を突きつけられそう怖いし、何より絶対精神衛生上よろしくないことなんて目に見えている。
「俺にとっても志音は特別だよ」
だから、あんまり思わせぶりなことをしないでいただきたいんだって!
いろいろと決心が鈍っちゃいそうだよ。
「日曜、もし空いていたらおいでよ」
普段は押しが強い方でないのに、今度ばかりは珍しく引く様子がない。
僕に、晴人の他に遊ぶ友達がいないと知っていて、こんな誘い方をしてきているんだってことくらいわかる。
だけど、どうしてここまで頑ななのか。
根負けしちゃいそうだけど、受け入れてつらくなるのは自分だ。
「ごめん、その日は先約があって……」
見え透いた嘘。
それでも、心を守るためにはこうするしかなかった。
ごめん、晴人。
僕が君の「ちゃんとした友達」になれたら、失恋の傷跡が瘡蓋くらいになったら、その時はきっとこんな重苦しいことなんて考えず、素直にその誘いに応じるから。
今だけは許してほしい。
そんな贖いにも似た気持ちが通じたのか、
「そっか、残念。また今度だね」
始業のチャイムが鳴ると共にようやく解放された、と思ったのも束の間、
「週末、楽しんで」
階段を下りながら、嘘を見破る鋭い眼差しに射抜かれた。
0
あなたにおすすめの小説
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら
たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生
海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。
そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…?
※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。
※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる