【本編完結済】爆盛りスイーツから始まる恋のレシピ~陰キャ男子はお菓子作りでボッチ回避に成功しました~

ぷかり

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まんまるトリュフチョコ1

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「うちの家族も喜んでたよ」

 月曜日、珍しく教室に入ってすぐ晴人は僕の元に駆けつけた。
 サッカー部の連中に絡まれてはいたけれど、それを華麗にスルーしての直行。
 まったく予想もしていなかったので、びっくりはしたけれど、彼が真っ先に僕に声をかけてくれたのは正直気分が良い。

「チーズケーキ、ありがとう」
「こちらこそ、そう言ってもらえると作り甲斐があるよ」

 余ったバスクチーズケーキを切り分けて、晴人宅と大志くん宅にそれぞれお土産として持って帰ってもらったのは、もちろん善意もあるけどダイエットのためだったりするから、改めてお礼を言われるようなことじゃないんだけど、実際にされるとやっぱり嬉しい。

「つい作りすぎちゃうだけだから、また余ったらお家の人にも食べてもらえると助かるよ」

 もともと食べたいより作りたい欲の方が強いせいか、ダイエットを始めても惹かれるのは爆盛りスイーツばかり。
 節制のため動画視聴で欲を紛らわせたりもしているんだけど、次は何にしようと考える際の選択肢にやっぱり爆盛りは外せない。

 そして思いついた。
 創作に関しては仕方ないにしても、食欲はある程度コントロールできるのだから、作っても自分で消費しない状況にすれば良いんだって。つまり他の人にお裾分けすれば解決する、と。
 ただし、爆盛りスイーツの件は伏せて。そうしないと、また晴人の機嫌を損ねてしまいそうだし。

 となれば、それぞれの家族に差し入れるしか方法がなかったが、

「志音の家であんなに食べた癖に直人は家でもぺろりだったよ」

 どうやらウィンウィンだったらしい。

「父さんも母さんも志音にはいつもお世話になっているから今度お礼がしたいって」
「ええっ! いいよ、そんなの」

 気にしないで、と手を振るが、晴人はなかなか諦めてくれない。

「奥ゆかしいのも志音の魅力だけど、ある権利は主張していかないと」

 僕が好きでやっているだけなんだけどなあ。
 むしろ助かっているのはこちらの方だし。

「なんか畏れ多いよ」

 渋りすぎも印象が悪いかもしれないけど、好きな人のご両親から何かしてもらうってめちゃくちゃ気が引ける。

「そんなことないって」
「そんなことあるって」

 なんて押し問答しているうちに、担任が来てホームルームが始まったことで、一旦話は終わったかに見えた。

 しかし実際には、

「直人も懐いているし、うちの親は志音のこと気に入ってるんだよね」

 昼休憩、お弁当の最中にまでもつれ込んでいた。

 例のごとく後ろから腹を抱えられたまま拘束され、決着はいまだつかず。

「僕の方が仲良くしてもらっている側なんじゃないかな」
「そんなことないよ。直人がしょっちゅうシオちゃんと次はいつ会えるかって聞いてくるくらいだし」

 ニコニコと話す晴人には申し訳ないが、あと二、三週間もすれば僕の初恋の行く末が決まっちゃうような、そんな状況でご両親に会うのは躊躇われた。
 きっと晴人の歴代恋人とか、初恋の人が話題に上がって……下手したら相当な痛手を負って立ち直れなくなってしまう。

 所詮は妄想。なのに、悪い方にしか考えがいかない。
 はっきり友達だって紹介されると現実を突きつけられそう怖いし、何より絶対精神衛生上よろしくないことなんて目に見えている。

「俺にとっても志音は特別だよ」

 だから、あんまり思わせぶりなことをしないでいただきたいんだって!
 いろいろと決心が鈍っちゃいそうだよ。

「日曜、もし空いていたらおいでよ」

 普段は押しが強い方でないのに、今度ばかりは珍しく引く様子がない。
 僕に、晴人の他に遊ぶ友達がいないと知っていて、こんな誘い方をしてきているんだってことくらいわかる。
 だけど、どうしてここまで頑ななのか。
 根負けしちゃいそうだけど、受け入れてつらくなるのは自分だ。

「ごめん、その日は先約があって……」

 見え透いた嘘。
 それでも、心を守るためにはこうするしかなかった。

 ごめん、晴人。
 僕が君の「ちゃんとした友達」になれたら、失恋の傷跡が瘡蓋かさぶたくらいになったら、その時はきっとこんな重苦しいことなんて考えず、素直にその誘いに応じるから。
 今だけは許してほしい。

 そんな贖いにも似た気持ちが通じたのか、

「そっか、残念。また今度だね」

 始業のチャイムが鳴ると共にようやく解放された、と思ったのも束の間、

「週末、楽しんで」

 階段を下りながら、嘘を見破る鋭い眼差しに射抜かれた。
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