【本編完結済】爆盛りスイーツから始まる恋のレシピ~陰キャ男子はお菓子作りでボッチ回避に成功しました~

ぷかり

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まんまるトリュフチョコ5

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 ひとしきり遊び終わって、施設の外に出るともう辺りは薄暗く、街灯が灯る時間になっていた。
 たっぷり運動して身体はほかほかしていても、空っ風が吹くとやはり寒い。
 建物を後にしてすぐは火照っていた頬も、歩いているうちにその温もりを失っていた。
 それでも、電車の中なんかはまだマシな方で、慣れない混雑こそ圧し潰されて窮屈だったことを除けば概ね快適。
 風がないだけ凍えるほどではなかったが、地元の駅で降りてしまうと寒さを凌げるような地下道も、吹き荒ぶ風から身を守るものもなく、震えるしかなかった。

「冷えますね」

 アスファルトに覆われた田舎道を、先輩と並んで戻っていく。
 来た時と同じくらい静かなのに、時折口を開けばきちんと返事をしてくれる。

「こっち側に来い。これならちょっとはいいだろう」

 特段盛り上がることはなくても、後輩を気遣う優しさが無骨な言葉の端々に散りばめられている。

「風除けになってるか?」
「すみません、充分です」

 そういうつもりで放った言葉じゃなかったのにな。

 沈黙を埋める世間話だったのに、彼は僕を後ろに隠すようして、少しでも寒くないようにと身を挺してくれている。

「俺が夕方まで連れ回したせいで後輩が体調崩しても困るから」

 自分だって切り裂くような風に当たっているのに、あくまでも自分の保身のためみたいなフリをして。
 恋するならきっとこんな人を好きになった方が幸せになれるんだろうな。

 晴人みたいな人と一緒にいると胸がドキドキざわざわして、気分が乱高下して、ジェットコースターみたいに刺激が多くて、それはそれで「恋愛している!」って感じがするけれど、安定して長続きするのは山村さんみたいなタイプだって僕にもわかる。
 だけど、どうしても晴人に惹かれてしまうんだよね。

 恋って本当に盲目。
 他など眼中にないってくらい、何をしていても結局またこうして晴人のことばかり考えてしまうんだ。
 我ながら恐ろしい。

 だいたい晴人のせいで僕は女の子に興味すら持てないのに、晴人は彼女がいるとか残酷すぎるって。
 この恋に終止符が打てたら、次は山村さんのような人を好きになりたい。男の人でも女の人でも。
 まあ、理想の相手を好きになるなんて器用な真似などできないのだろうが。

 様々頭の中で巡らせているうちに、家の前まで来ていた。
 カーテンから灯りが漏れている。

「母が戻ってきているみたいです」

 本日のお礼を兼ねて先輩にお茶でも振舞いたいところだが、

「気にするな」

 遠慮もあってか、夕飯の時間も近いからと固辞されたところで、急に玄関の戸が開き、

「あら、お友達?」

 先輩と母が鉢合わせてしまった。

*
 別にやましいことはない。
 ただスポーツセンターに行って、身体を動かしてきただけ。
 だけど、妙に居た堪れないのはなぜだろう。

 リビングのローテーブルには母と僕、そして山村さんの姿があった。

「桜庭と同じ高校に通っている二年の山村旭です」

 あの後、ばったり山村さんと出くわした母が彼を僕の「初めての友人」だと勘違いしてしまい、近年稀に見る強引さで、山村さんを家の中に引き入れた結果がこれだ。

 正座をした山村さんが礼儀正しく挨拶する姿にいたく感動した母が、

「志音にお友達ができるなんて!」

 手を合わせて喜ぶところなんてさすがに見られたくなかった。

 いつまで経っても僕がボッチなのを気に病んでいたのは知っていたが、まさか山村さんに暴露されてしまうなんて。まして彼は友達ではない。

「母さん、山村さんは先輩だよ」

 訂正をする居た堪れなさったらない。
 それでも、母は僕が休日に人と出かけたのがよほど嬉しかったのか、笑顔で世間話に花を咲かせている。
 親子揃って変なことに付き合わせてしまって申し訳ない。

 しかし、山村さんは本当に出来た人で嫌がる素振りすら感じさせない調子で、

「毎朝走っているうちに仲良くなって」

 などと合わせてくれている。

 しかも、人柄が良く真面目で好青年を地で行っているから、しまいには帰り際、

「旭くん、またいらっしゃってね」

 すっかり懐柔された母が僕と手を振って見送るほど打ち解けてしまっていた。
 そもそも、母にとっては息子が唯一遊んだ相手って時点で好感度が高いんだもの。
 その上、ご近所に住む一学年上の頼れる先輩となると、そりゃあ全幅の信頼を寄せちゃうよね。

 僕もいつもお世話になっていて、親しくさせていただいているわけだから、山村さんの対応はありがたいんだけど、嫌な予感がするのは気のせいだろうか。

 山村さんが帰った後も母はしきりに、

「あの高校にして良かったわね」

 だの、

「お父さんにも報告しなくっちゃ」

 だのと、やけに楽しそうにしていて、しまいには鼻歌を歌い出すほどだった。
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