不幸でしあわせな子どもたち

山口かずなり

文字の大きさ
8 / 13

ボール蹴りに夢中な子ども・キック

しおりを挟む

七人目の子ども

「ボール蹴りに夢中な子ども・キック」

キックは、寒い季節も半ズボンでいるくらいに、脚が自慢の子どもです。

季節を問わずに靴工場の裏で、ボールをゴールに向かって蹴り飛ばしています。

キックの目標は、ボール蹴りの選手になる事のようですが、その目標の手前にはたくさんの障害物が見えて、簡単にはシュートもさせてくれません。

意地悪をされているかのように、弾かれてしまうのです。

キックは、その度に練習をしました。

ですが、うまくいきません。

汗と、ずっとこらえていた涙が頬を伝います。

キックは、靴工場の外側の壁を蹴りました。    

もうやめなよ、と友だちが言います。

キックは、友だちの言葉が辛くてたまりません。

友だちの脚を蹴って、出ていけと叫びます。

キックは、一人になってから、これがさいごのチャンスだと自分に言い聞かせて、ゴールに向かってボールを思いっきり蹴り飛ばしました。

思いっきり蹴り飛ばしたからでしょうか、ボールは、ゴールの上を飛び越えて、靴工場の裏から、外の道へと出ていきます。

キックは、それを追いかけました。

外は障害物だらけです。

忙しい大人たちが険しい顔で早足で歩いていて、車がビュンビュンと風のように走り抜けていきます。

あっ、あぶない。

荒っぽい運転の車が、急に横から飛び出してきた子どもをひいてしまいました。

車は止まりますが、ひき逃げをします。

他人の死に構っている時間なんて、ないのです。

キックは、黙ってそれを見ていましたが、首を左右にふり、ボールを追いかけました。

あのボールは、きっと、どこかへゴールする。

今でもそう思って、自慢の脚を半ズボンから出して、キックは自分が蹴り飛ばしたボールを追いかけて走り続けています。

キックは、自分の目標をずっと追いかけられて、

しあわせな子どもでした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...