弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり

文字の大きさ
28 / 79

子供達の出会い

しおりを挟む
 セサミとヴィーガが相談し、ミディアとコロネはワッサンモフ公爵邸で顔を合わせることになった。

 普段からあまり邸におらず、資金稼ぎをしているコロネにとっては、セサミの命令は憂鬱なものでしかない。
 こんなことより、クリム一家をどうにかして欲しいのに。

 それでも大人である祖父だから、何か深い考えがあるのかもしれないと思い、何も言い出せなかったコロネ。

 そして今回、見合い染みた顔合わせが行われたのだから、困惑しかない。


(もしかしたら戻らない両親の代わりに叔父クリムに公爵家を継がせるか、父の娘である私にこの家を任せ、駄目そうなら爵位を国に返すのかと思っていたのに。
 私の婿候補を連れてくるのなら、やっぱり存続を願っているのかしら?)


「よく分からないわ」

 これがコロネの本音である。
 終わりの見えない借金返済(自転車操業)で、1年半が過ぎていた。

 相変わらずクリム一家は、我が物顔でワッサンモフ公爵家に居座っているが、彼らがいるのは客室である。

 スライスト、ミカヌレ、コロネの部屋には外出時は鍵がかけられており、クリム一家が入れる状態にはない。
 そこはしっかり家令レイアー達が、目を光らせているからだ。

 あくまでも彼らは、ゲスト来客扱いなのだ。
 前公爵で祖父セサミの次男で、父スライストの弟と、その妻と娘と言う血縁のある親戚。コロネからすれば、それだけの繋がりだった。


 クリムやコーラス、ブルーベルの横柄な態度も変わらずだが、コロネは特に気にしていない。使用人達だけが悟られないように、殺気を漲らせていた。



◇◇◇
「やあ。久しぶりだな、コロネ。困ったことはないかな?」

 好好爺のように微笑むセサミだが、さすがにモンテカルロ伯爵と子息の前で、恥のような話はできない。

「直近で困ることはありませんわ」
 微笑んでこう言うしかない。

「そうか、さすがだな。ハハッ」
 含みのあるセサミの笑いに、イラッとする使用人達。


「初めましてだな、コロネ嬢。私は君の父上の友人でヴィーガン・モンテカルロだ。隣にいるのが息子のミディアで8歳になる。これから友人として仲良くして欲しいな。ほら、自己紹介しなさい」

「っ、ミディア・モンテカルロです。よろしく」

 ヴィーガンの妻はスライストが療養中であり、今後の後継者がハッキリしない状態では不満があると言って、ここには来ていない。
 父子だけの訪問である。

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。コロネ・ワッサンモフで御座います」


 コロネは失礼がないように、公爵令嬢として丁寧な挨拶をする。

 メイド達にも、最上級のお茶やお菓子の準備をして貰うように伝えている。婚約うんぬんはさて置き、今後父が戻って来る可能性はあるし、邪険にすることはない。婚約者になるかはまだ分からないが、父の友人であるならば礼を尽くすべきだと思ったのだ。


 ミディアはコロネを見て、綺麗な子だと思った。
(煌めく金の髪と、碧眼の瞳。やや猫目だけど微笑む様子が優しそうだ)


 コロネはミディアの緑の髪を見て、鍛冶師の弟子となったシャインを思い出した。そして知らずと微笑んでいたのだ。

 勿論ミディアの方が美形であるが、コロネは特に顔の美醜を気にすることはなかった。
(もし結婚するなら、一途に自分を思い正直で働き者が良いわ)と思っているからである。

 美しい舞台俳優などが嫌いと言う訳ではないが、恋愛や結婚は別物なのだ。


 その後は当たり障りのない世間話をして、和やかに場は終了することになった。




 ヴィーガンとセサミは、ミディアを見て微笑むコロネに好感触の反応だった。

「これは良い感じかもしれんな」
「ええ、印象は悪くないようです」

 ミディア自身、特別な好意はないと気付いていたが、男2人はそう思わなかったのである。


 勿論侍女アンナも他の使用人達も、コロネがミディアに見惚れたなんて思っていない。
(まだまだお洒落より、料理長のご飯が大好きなコロネ様だもの。どうせ食べ物のことでも思い出したのでしょ?)

 ちなみにコロネは孤児院の神父、チャーシが山奥深くに入り狩ってくる、猪ステーキが大好きだ。ただで狩ってるからと安価で購入させてくれるので、公爵家の食卓にもよく出るお肉。濃厚な旨味と深いコクがあり、食費の節約にも一役買っている。




 そんな勘違いの出会いだったが、セサミにより定期的に顔を合わせる約束が結ばれた。月に2回、ワッサンモフ公爵家でのお茶会だ。


 そこに異分子が紛れ込む。
 それは美形大好き、ブルーベル(8歳)だ。

 桃色の髪に、新緑の瞳の美少女だ。クリムが政略結婚を蹴って結婚したコーラスと同じで、とても美しいかんばせをしていた。

 そして公爵家で贅沢をすることで、すっかり傲慢さに磨きがかかっていた。

「なんて格好良いの? ミディア様はコロネのブスより、私にお似合いよ」


 
 嫌な予感しかしない。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私ではありませんから

三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」 はじめて書いた婚約破棄もの。 カクヨムでも公開しています。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

いらない子のようなので、出ていきます。さようなら♪

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 魔力がないと決めつけられ、乳母アズメロウと共に彼女の嫁ぎ先に捨てられたラミュレン。だが乳母の夫は、想像以上の嫌な奴だった。  乳母の息子であるリュミアンもまた、実母のことを知らず、父とその愛人のいる冷たい家庭で生きていた。  そんなに邪魔なら、お望み通りに消えましょう。   (小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています)  

拝啓。私を追い出した皆様へ! 化け物と噂の辺境伯に嫁がされましたが噂と違い素敵な旦那様と幸せに暮らしています。

ハーフのクロエ
恋愛
 公爵家の長女のオリビアは実母が生きている時は公爵家令嬢として育ち、8歳の時、王命で王太子と婚約して12歳の時に母親が亡くなり、父親の再婚相手の愛人だった継母に使用人のように扱われていた。学園の卒業パーティーで婚約破棄され、連れ子の妹と王太子が婚約してオリビアは化け物と噂のある辺境伯に嫁がされる。噂と違い辺境伯は最強の武人で綺麗な方でオリビアは前世の日本人の記憶持ちで、その記憶と魔法を使い領地を発展させて幸せになる。

彼のいない夏

月樹《つき》
恋愛
幼い頃からの婚約者に婚約破棄を告げられたのは、沈丁花の花の咲く頃。 卒業パーティーの席で同じ年の義妹と婚約を結びなおすことを告げられた。 沈丁花の花の香りが好きだった彼。 沈丁花の花言葉のようにずっと一緒にいられると思っていた。 母が生まれた隣国に帰るように言われたけれど、例え一緒にいられなくても、私はあなたの国にいたかった。 だから王都から遠く離れた、海の見える教会に入ることに決めた。 あなたがいなくても、いつも一緒に海辺を散歩した夏はやって来る。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった

佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。 その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。 フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。 フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。 ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。 セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。 彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。

処理中です...