弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり

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チェロスト子爵家の謝罪

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 チェロスト子爵家の執務は今(も昔もずっと)、クリムの妻コーラスの妹サイダー夫婦が担っている。

 さすがに1か月を過ぎた頃には、帰って来ないクリム達へ「子爵家へ戻るように」と何度も手紙を出していた。

「いくら何でも、もう限界だよ。公爵家に失礼だ」

「お姉様がいくら厚顔無恥でも、相手が悪すぎますわ。我が子爵家まで、連座で没落しかねないのよ(沈むのなら、貴方達だけにして!by心の叫び)」


 けれど手紙を読んでいないのか、無視をしているのか、返信もないし帰って来ない。

「どうしよう、ジンジャー。もしかしたらもう、無礼だと言って殺されていたりして」

「まさか! でもあの3人ならありうるよな。ここはもう、公爵家に手紙を直接送ろう。縁者である私達の訪問は嫌かもしれないから、先ずは手紙で謝罪してみよう」

「そうね。出向かないで失礼かもしれないけど、先ずは状況を確認しないとね」


 そんな感じでクリム一家が公爵家に住み着いてから2か月後、コロネの元に手紙が届いた。
 とても丁重で恐縮した内容で、長い謝罪が綴られていた。
「長く義兄夫婦がお世話になり、大変申し訳ありません。何度も帰ってくるように手紙を出したのですが、返信が来ませんでした。もし亡くなっているなら、秘密裏に遺体を取りに行きたいです」等などと、死んでいることも覚悟しているようだ。

 手紙を書いても連絡もなく帰って来ないなら、最悪そうかも死んでるかもと思うだろう。

 チェロスト子爵領は、緑に囲まれた酪農と農業が盛んで、王都からはずいぶんと離れている。放牧している牛や馬、そして豚の方が、人より多いのどかな場所なのだ。


「チェロスト子爵家…妹夫婦の方は普通の感覚を持っているみたいね。レイアー、どうしましょう?」

「そうですね。こちらで様子を見るので、お気になさらずとでも書いて送っておきますか。セサミ様の考えも分かりませんし」

「そうね。そうしましょう」


 そんな感じで子爵家には、もう少し滞在しそうだが、心配しないようにと返信したのだった。

 サンダーとジンジャーが寛大な返信内容を読み、安堵し涙したのは言うまでもない。

 その後も定期的に、子爵家と公爵家との手紙のやり取りは続いているが、『叔父様クリムは手紙は読んでいないようです』とコロネが伝えれば、ジンジャーは大いに落胆した。

「こんなに心配しているのに、手紙に目も通さないなんて。義理とは言え、兄弟だと思っていたのに」

 どうやら元公爵令息(次男)は、元伯爵令息(三男)への格下扱いを続け(執務も任せきりで)、身内とも思っていないことが発覚した。
 サイダーからコーラスへ宛てた手紙も、同様に読まれていなかった。

「どうせ小言しか書いてないのよ。サイダーってば、少し勉強ができるからって威張っちゃって。私の方が美しいから嫉妬しているのね。嫌になっちゃう」


 いやいやいや。チェロスト子爵は、名目上クリム(とコーラス)が継いでいるのだから、当主が執務や責任を取るのは当然のことだ。
 それをせずに遊んでいれば、注意の一つもされるだろう。子爵家の為の諫言なのに……。まさに馬の耳に念仏らしい。いや、チェロスト領地の馬の方が利口かも?


 そんな申し訳ない気持ちでいっぱいのサイダー達は、特産物をコロネに送ることにした。

 本当は出向きたいものの、執務ができる者が少なく手が足りないのでと謝罪し、王都に行く商人に輸送賃を払って届けてくれたのだ。


『滞在費には全く足りないのですが、どうか兄夫婦ではなくコロネ様達で召し上がって下さい』と、苺やキウイ、デザートトマト、薫製にした牛や豚肉など、季節の実りと肉製品が定期的に送られてくるようになった。

『このことは義兄クリム達には、伝えなくて良いです。領地の名産品を田舎くさいと馬鹿して、食べない人達ですし。きっとこちらからの手紙に書いても、読むこともないでしょうし……等など』と、手紙にはそう記されていた。


 コロネはその思いを汲んで、内緒にすることにした。やり取りが続くうちに、苦労していることが分かったからだ。



「これすごく美味しい。チェロスト子爵家は果物が名産なのね。お肉まで! すごいね♪」
「はい。領民も真面目だしサイダー夫妻も優秀な方のようで、かなりの利益があるようです。……ですがそれも、クリム様達が食い潰していたようですがね」

「まあ! 今と同じじゃない。あっ、失礼ね。私ったら」
「いいえ、その通りですよ。もっと言ったれです!」

「コレッ、アンナ。言葉が酷いぞ!」
「だってレイアー様。何でクリム達だけが、遊んでばっかりいて許されるんですか?」

「……心配せずとも、何れ破綻は来るのだ。お前は余計なことを考えんで良い」
「ブーブー、だってぇ~」

「ふふっ。本当に仲が良いわね。親子みたい」

「「冗談でしょ?」」

「「あっ(嘘、また同時に声がでた!))


 アンナとレイアーのシンクロ率は、さておき。



 思わぬ形でチェロスト子爵との繋がりができたワッサンモフ公爵家。今後の商売はスイーツ?、それとも保存食?

 食べ盛りの6歳の夢は、膨らむばかりなのだ。




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