39 / 79
ブルーベルからの手紙
しおりを挟む
タバサの指導のもと、ブルーベルは生まれて初めての謝罪文を書き上げた。
「拝啓、コロネ様。
私からの手紙を受けとるのは、正直嫌だと思います。
捨てられている可能性もありますが、けれど読んで頂けていると思いながら、書かせて貰いますね。
私がお茶会で言った言葉は最低です。
今も懸命に捜索している貴女方に、なんて愛のない酷い暴言でしょう。
いくら知性のない私でも、後から振り返り震えました。私の両親は善良とは呼べないですが、それでもいなくなったと思えば、とても悲しいですもの。
それなのに、ミディア様を庇う貴女にその言葉をぶつけてしまいました。
思い通りにならない腹いせに。
本当にどうしようもないです。
我ながら今考えれば、幼子でもそこまで酷くないだろうと思いました。
許されると思っていないですが、ごめんなさい。
何度でも謝ります。
この手紙が届いていなくても、また書きます。
今は体を鍛えているので、ビンタをして貰うのは少し待っていて下さい。
心から反省しています。
敬具」
コロネは手紙を読み終わり、座っているソファーの背に深くもたれた。
「ねえ、アンナ。ブルーベルはどうしたのかしら? 彼女が謝罪するなんて、何だか不思議だわ」
そう思うのは、当然のことだった。
ここに突然訪れた時にも、碌に挨拶もせず、会えば文句か不快な顔しかされていなかったのだから。
極めつけはあのお茶会。
ミディアを守ろうとした時、両親がもう戻らないと断言された。
閉じ込めていた不安な気持ちをこじ開けられ、無意識に気絶してしまったのは、コロネからすれば恥ずべき失態だった。
使用人達は勿論、心配しかしていないが。
彼女が目覚めたのは、翌日の昼近く。いつ目覚めても良いように、食事は常に温められていた。
特にアンナは、片時も離れず看病をした。
◇◇◇
そんなことの後なので、今一つ腑に落ちなかった。
それでも手紙を手に取ったのは、タバサからの言葉掛けがあったからだ。
「すごく嫌だと思うけど、読んで貰えないかしら? 今後は私が指導していくつもりだから」と。
指導…ね。
ブルーベルは、タバサにも何かしたのかしら?
それにビンタって? 頬を叩くことよね?
謝罪に??? この国でそんな習慣はないわよね?
「えーとですね。タバサの祖母の生家が辺境の方なので、そう言うこともあるみたいな、ないみたいな感じです」
「まあ。この国のことなのに知らなかったわ。勉強不足ね、私ったら」
あぁ、不味いな。
コロネお嬢様は、超記憶持ちだった。
調べだしたら、嘘がバレるな。
でも前世記憶とか、ちょっと情報過多だし。
今知らせるのも、どうかと思うのよ。
アンナは強くて優しい、けれど結構適当で嘘が下手である。あんまり後先のことを考えないで話すので、内緒にされている情報もある。
以前チェロスト子爵家のサイダーと取り引きがあった時も、彼女だけ蚊帳の外だった。だからその際に、「チェロスト子爵家で、クリムを引き取りに来ないなぁ」と文句を言っていたのである。
嘘が下手なので、万が一にクリムに聞かれた時に途中経過を漏らしそうだった為、レイアー達からいろいろ内緒にされていた。まあそんな心配は、そもそもなかったのだけど。
今はサイダー達を仲間認定したので、彼女が裏切ることはないのだ。
◇◇◇
「まあビンタは、ちょっと過激な禊かもしれないので、状況を見てから対処しましょう。それくらいの気持ちで反省しているようですし」
「そうね。過ちを認められるのは、とてもすごいことだものね。うん、待ってるわ」
コロネは既に、ブルーベルを許すことに決めていた。両親のことは心配だけど、死体が出た訳ではない為、独自で調査を続けるつもりだった。希望を捨ててはいないのだ。
そしてその後日。
覚悟を決めたレイアー達から、スライストとミカヌレの所在が明かされる。
それはある意味、セサミとの決別だった。
「拝啓、コロネ様。
私からの手紙を受けとるのは、正直嫌だと思います。
捨てられている可能性もありますが、けれど読んで頂けていると思いながら、書かせて貰いますね。
私がお茶会で言った言葉は最低です。
今も懸命に捜索している貴女方に、なんて愛のない酷い暴言でしょう。
いくら知性のない私でも、後から振り返り震えました。私の両親は善良とは呼べないですが、それでもいなくなったと思えば、とても悲しいですもの。
それなのに、ミディア様を庇う貴女にその言葉をぶつけてしまいました。
思い通りにならない腹いせに。
本当にどうしようもないです。
我ながら今考えれば、幼子でもそこまで酷くないだろうと思いました。
許されると思っていないですが、ごめんなさい。
何度でも謝ります。
この手紙が届いていなくても、また書きます。
今は体を鍛えているので、ビンタをして貰うのは少し待っていて下さい。
心から反省しています。
敬具」
コロネは手紙を読み終わり、座っているソファーの背に深くもたれた。
「ねえ、アンナ。ブルーベルはどうしたのかしら? 彼女が謝罪するなんて、何だか不思議だわ」
そう思うのは、当然のことだった。
ここに突然訪れた時にも、碌に挨拶もせず、会えば文句か不快な顔しかされていなかったのだから。
極めつけはあのお茶会。
ミディアを守ろうとした時、両親がもう戻らないと断言された。
閉じ込めていた不安な気持ちをこじ開けられ、無意識に気絶してしまったのは、コロネからすれば恥ずべき失態だった。
使用人達は勿論、心配しかしていないが。
彼女が目覚めたのは、翌日の昼近く。いつ目覚めても良いように、食事は常に温められていた。
特にアンナは、片時も離れず看病をした。
◇◇◇
そんなことの後なので、今一つ腑に落ちなかった。
それでも手紙を手に取ったのは、タバサからの言葉掛けがあったからだ。
「すごく嫌だと思うけど、読んで貰えないかしら? 今後は私が指導していくつもりだから」と。
指導…ね。
ブルーベルは、タバサにも何かしたのかしら?
それにビンタって? 頬を叩くことよね?
謝罪に??? この国でそんな習慣はないわよね?
「えーとですね。タバサの祖母の生家が辺境の方なので、そう言うこともあるみたいな、ないみたいな感じです」
「まあ。この国のことなのに知らなかったわ。勉強不足ね、私ったら」
あぁ、不味いな。
コロネお嬢様は、超記憶持ちだった。
調べだしたら、嘘がバレるな。
でも前世記憶とか、ちょっと情報過多だし。
今知らせるのも、どうかと思うのよ。
アンナは強くて優しい、けれど結構適当で嘘が下手である。あんまり後先のことを考えないで話すので、内緒にされている情報もある。
以前チェロスト子爵家のサイダーと取り引きがあった時も、彼女だけ蚊帳の外だった。だからその際に、「チェロスト子爵家で、クリムを引き取りに来ないなぁ」と文句を言っていたのである。
嘘が下手なので、万が一にクリムに聞かれた時に途中経過を漏らしそうだった為、レイアー達からいろいろ内緒にされていた。まあそんな心配は、そもそもなかったのだけど。
今はサイダー達を仲間認定したので、彼女が裏切ることはないのだ。
◇◇◇
「まあビンタは、ちょっと過激な禊かもしれないので、状況を見てから対処しましょう。それくらいの気持ちで反省しているようですし」
「そうね。過ちを認められるのは、とてもすごいことだものね。うん、待ってるわ」
コロネは既に、ブルーベルを許すことに決めていた。両親のことは心配だけど、死体が出た訳ではない為、独自で調査を続けるつもりだった。希望を捨ててはいないのだ。
そしてその後日。
覚悟を決めたレイアー達から、スライストとミカヌレの所在が明かされる。
それはある意味、セサミとの決別だった。
81
あなたにおすすめの小説
いらない子のようなので、出ていきます。さようなら♪
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
魔力がないと決めつけられ、乳母アズメロウと共に彼女の嫁ぎ先に捨てられたラミュレン。だが乳母の夫は、想像以上の嫌な奴だった。
乳母の息子であるリュミアンもまた、実母のことを知らず、父とその愛人のいる冷たい家庭で生きていた。
そんなに邪魔なら、お望み通りに消えましょう。
(小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています)
私ではありませんから
三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」
はじめて書いた婚約破棄もの。
カクヨムでも公開しています。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
彼のいない夏
月樹《つき》
恋愛
幼い頃からの婚約者に婚約破棄を告げられたのは、沈丁花の花の咲く頃。
卒業パーティーの席で同じ年の義妹と婚約を結びなおすことを告げられた。
沈丁花の花の香りが好きだった彼。
沈丁花の花言葉のようにずっと一緒にいられると思っていた。
母が生まれた隣国に帰るように言われたけれど、例え一緒にいられなくても、私はあなたの国にいたかった。
だから王都から遠く離れた、海の見える教会に入ることに決めた。
あなたがいなくても、いつも一緒に海辺を散歩した夏はやって来る。
拝啓。私を追い出した皆様へ! 化け物と噂の辺境伯に嫁がされましたが噂と違い素敵な旦那様と幸せに暮らしています。
ハーフのクロエ
恋愛
公爵家の長女のオリビアは実母が生きている時は公爵家令嬢として育ち、8歳の時、王命で王太子と婚約して12歳の時に母親が亡くなり、父親の再婚相手の愛人だった継母に使用人のように扱われていた。学園の卒業パーティーで婚約破棄され、連れ子の妹と王太子が婚約してオリビアは化け物と噂のある辺境伯に嫁がされる。噂と違い辺境伯は最強の武人で綺麗な方でオリビアは前世の日本人の記憶持ちで、その記憶と魔法を使い領地を発展させて幸せになる。
婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?
との
恋愛
「取り替えっこしようね」
またいつもの妹の我儘がはじまりました。
自分勝手な妹にも家族の横暴にも、もう我慢の限界!
逃げ出した先で素敵な出会いを経験しました。
幸せ掴みます。
筋肉ムキムキのオネエ様から一言・・。
「可愛いは正義なの!」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済み
R15は念の為・・
「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった
佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。
その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。
フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。
フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。
ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。
セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。
彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる