弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり

文字の大きさ
41 / 118

温かな視線


 いつものように平民専門の洋品店『マルシェリ』へ、古着から作り直しリメイクした衣装を持っていくコロネ。

 孤児院で暮らす女の子達が考えたデザインで衣装を作ると、好評ですぐに売れていく。
 彼女達の「こんな服が着たいの!」と言う憧れが詰まったデザイン帳は、コロネから見ても素敵な夢が詰まっていた。絵本の魔法少女が着るようなフリルがいっぱいの、お姫様のドレスのようなものまであった。


 尤もコロネの服も実はリメイクで、侍女達の作った傑作である。本来貴族はお金をかけてドレス等を作り、貴族家の利益を周囲に還元して経済をまわす役割を持つ。

 ただ現在はクリム一家がコロネの代わりにそれを行っている為、その部分の貴族の義務は控えている状態である。……と言うか、逆にコロネは赤字解消の為に、還元される売り手側である。トホホッ。




 それは、さておき。

 最近ではコロネの裁縫の腕は上がり、孤児院の子供達が着たい服を作れるようになった。なのでそれを提案したのだが、彼女達からそれを拒否されていた。


「コロネの作った服は高く売れるから、たくさん売って孤児院にお金が入る方が良いもの。私達の分は自分で縫うから気にしないで」と、そんな風に言われて。

 孤児院でも裁縫が上手な子達は、洋品店でアルバイトをしているので、残された子や幼い子らでは上手には作れないのに。

 それでも……自分達だけ施されるのは、違うと考えているみたいだ。

「本当に欲しいものは、将来お金を貯めて買うから良いの。素敵なものを洋品店に勤めているお姉ちゃんに作って貰うの」
 幼子が、本当に嬉しそうに教えてくれた。


「私も今は(裁縫の)練習中で、シスターに教えて貰いながらみんなの着る服を作っているの。みんなすぐに大きくなるし、動きやすいものの方が良いのよ」
「そうよ、だから気にしないでね」

 なんて屈託のない笑顔で話され、納得してしまう。手先が器用ではなくても、簡易な物なら作れる子もそこにはいたからだ。
 みんな得手不得手があるようで、裁縫の腕がなくても計算が出来たり、鍛冶屋のような細工が向いていたり、畑仕事が好きだったり、養蜂に興味があったり、将来的にやってみたいことがあるそうだ。

 今着る服の順位は、それに比べたら高くはなく、未来に向けて勉強を頑張っているみたいなのだ。



「分かったわ。みんな頑張っているのね。私も負けられないわ」

 
 素敵な服だって着たいと思う。子供の時から優先順位を考えるのは少し寂しいけれど、昔より瞳が輝いているのを見るのはワクワクする。

 子供達には子供達の矜持があるのだ。
 今必要なのは、資金面だと言われ納得する。

 
 孤児院には、孤児院の運営に関心のある有志者達から、いろんな物が寄付されている。
 孤児院に集められた布で服を作ると、その一割が孤児院に入るようになっているので、子供達はそれを期待しているのだ。


(任せておいて。絶対教育費分は稼いで来るから!)
 プレゼントの代わりに寄付を頑張ろうと思うコロネは、新たな商売を思い付いていた。


 そんな彼女コロネを見つめる瞳があった。それはとても優しくて、切なそうで、温かなものだった。



感想 0

あなたにおすすめの小説

いらない子のようなので、出ていきます。さようなら♪

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 魔力がないと決めつけられ、乳母アズメロウと共に彼女の嫁ぎ先に捨てられたラミュレン。だが乳母の夫は、想像以上の嫌な奴だった。  乳母の息子であるリュミアンもまた、実母のことを知らず、父とその愛人のいる冷たい家庭で生きていた。  そんなに邪魔なら、お望み通りに消えましょう。   (小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています)  

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

⚪︎
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

繰り返しのその先は

みなせ
ファンタジー
婚約者がある女性をそばに置くようになってから、 私は悪女と呼ばれるようになった。 私が声を上げると、彼女は涙を流す。 そのたびに私の居場所はなくなっていく。 そして、とうとう命を落とした。 そう、死んでしまったはずだった。 なのに死んだと思ったのに、目を覚ます。 婚約が決まったあの日の朝に。