弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり

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ミカヌレとの再会

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 コロネのミカヌレは出奔時、自らを恋多き女に仕立てあげ、男と駆け落ちしたことにしていた。
 それはミズーレン伯爵の隠密であるミカヌレが、ミズーレン伯爵やクロダイン公爵に利用されてワッサンモフ公爵家を不利な立場に落とさない為である。

 全てを諦めて生きてきたミカヌレは、愛するコロネの為に、自分を大切にしてくれたスライストの為に、ワッサンモフ公爵家の使用人達の為に、自ら出ていったのである。

 けれど……そんな彼女の決意に納得できないスライストは、彼女を追いかけたのだ。

 公爵邸を後にするミカヌレに、こっそり護衛を付けていたレイアー。彼女の思いを汲んで送り出した使用人達は、セサミに事がバレないように様子をみていたのに、捜索中のスライストが崖から落下し行方不明になった。


 増水した川に落ちたスライストはすぐに護衛の隠密達に救助されたが、腕や肋骨の骨折で治療をする必要があった。
 ミカヌレのことを内緒にして暴走されるよりマシと、レイアーとメロアンから二人一緒に暮らすことを提案され、了承するミカヌレ。

 もともとミカヌレは駆け落ちなどの事実はなく、スライストを信頼していた。スライストもミカヌレのことを信じていたが、もし駆け落ちだとしても「ダメな部分は全部直すから、一緒に生きて欲しい」と、頭を下げて戻ってきて貰うつもりだった。プライドなんて、投げ捨てる気だった。


 そんなスライストはレイアーから全てを暴露され、「ミカヌレと離れたら生きていけない。どんな過去があっても良いから一緒にいてくれ」と、彼女ミカヌレを強く抱きしめた。

 それを嬉しく思い、共に生きていこうと誓うミカヌレ。そもそも雨の日に碌に寝ないで自分を捜索していたことを聞いて、『このままだと本当に死にかねない』と心配が勝ったのである。


 右腕と肋骨が折れており治療が必要だった為、レイアーの手配で早急に市井で部屋を借り、暮らし出す二人。
 元々隠密の彼女は、応急手当てや看病の知識があり、医師の診察の後は一人で世話をすることになった。

 ある程度治療が済んでも、スライストがミカヌレから離れないと言い、離れるくらいなら貴族を辞めると言い出すので、行方不明としてセサミに報告したレイアー。


 その嘘は見抜かれておらず、「あいつスライストは転落しても死ぬような奴じゃない。何らかの問題で戻れないだけで生きているだろう」と心配もしていなかった。

 むしろ帰って来るまで、クリム一家がどこまでやるか見学する気なのだろう。まるで演劇でも眺める目線で。


 そんなセサミに嫌気がさしたレイアー達、ワッサンモフ公爵家の隠密達は、セサミを欺くことにした。
 本人セサミだけの力だけではなく、優秀な隠密達の忠義ありきで、ワッサンモフ公爵家が筆頭であることは否めない。

 本来ならその権限は現当主であるスライストが持っている筈なのに、譲らずに持ち続けていることも良く思われていなかった。
 それもセサミ本人の暇潰しの為なのだから、余計にそう思うだろう。

 
 昔は隠密の上位を争う権力の対立があったが、今は戦争がないせいか結束が強くなり、時代のせいか柔軟的な若い思考も取り入れられている。


 簡単に言えば、ワッサンモフ公爵家の隠密組織の結束が強まったと言うことだ。


 この国に銀行が出来た順番は世界で7番目であり、経済発展や文明の進化が著しい国が外国にあることは、次第に周知されて来ている。
 情報は命と言うように、外務大臣をしているセサミは様々なことを調査し、自分の名を伏せて他国とこの国を繋ぐ商会も経営していた。
 商会には多くの隠密も関わっており、その知識がコロネのサポートにも役立ち、モロコシとの協力関係を築いていたのだ。


 情報の収集や実働は隠密達で、セサミは指示を出して報告を待つことが多い。その手足のように動く隠密達は、コロネ達に付くことにしたのだから、ミカヌレ達が隠れている必要がなくなったのである。



◇◇◇
 いつも気配を消して働いていた、茶髪でおかっぱ頭の女性がコロネに近付く。


「コロネ……一人で苦労させてごめんね。元気にしていた?」

「え? お母様、なの? 嘘っ!」


 突然のことに驚くコロネと、瞳を潤ませて彼女を抱きしめるミカヌレ。
 彼女は変装して、気付かれないようにしていたのだ。

 今日はこの場に、ワッサンモフ公爵家の隠密達しかいなかった。舞台は整えられていたのである。


「会いたかった、もう会えないと思ったんだよぉ、良かった、良かったよぉ、うぁ~ん」

「ごめんね、ごめんね、コロネ。もう、離さないからね、うっ……ぁあ」

 いつもは気を張って微笑んでいるコロネも、今は普通の子供に戻って母と共に号泣している。


 二人を見守る隠密達も泣きそうだったが、邪魔をしないように何とか堪えていた。

 でもずっと二人の侍女だったアンナは、もう駄目だった。
 隅の方で嗚咽していた。

「ぐふっ、よ、良かった、ミカヌレ様、お嬢様、よか、った、会えて、よかった、ぐふっ、あうぅ、ぐずっ」


 アンナの気持ちも分かるので、ますます瞼を熱くする隠密達。彼女達も堪えきれなくなり、頬に涙が溢れていた。







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